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魔法アカデミア合格発表 1
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次の日。
この日は待ちに待ったはずの合格発表の日。
「ハァ……」
昨日の今日でほぼ寝てない。
途中で着替えてから宿屋に戻ってきたけど、もう何をする気も起きなくて…椅子に座って空中をただぼーっと見てた。
正直…合格発表なんてどうでもいいや…。
合格しても良い点取っても、人の命が救えるわけじゃないし…生き返るわけでもないから。
こんな投げやりな気持ちになるのも…久しぶりだな…。
午前中に発表があって魔法アカデミア中央部にある大魔導ホールに結果が貼り出される。
そこで合格者は入学案内状とか説明書とか制服の採寸とかをしてもらうんだけど。
チラッと横を向いて窓を見る。
窓の外は青空が広がって陽も昇ってすっかり朝になってた。
もう何度目かもわからないため息が出る。
とりあえず、行かないとな…。
ミラの姿に戻って、少しでも気分を変えようとお風呂に入った。
温かい湯に浸かると少しは気持ちも和らぐけど、そこでもボーッとお湯が揺らめくのをただただ見てた。
体を拭いて愚者の輪を腕に嵌めると、その辺に置いてあった服に適当に着替えた。
「あら、おはよう…アート?大丈夫なの?そんな顔してどうしたのよ」
準備だけして宿屋の下へ移動すると、女将さんのシアさんが私の様子を見て心配そうに声をかけてきた。
階段下から顔を覗かせて、浮かない顔をしてる私にエプロンで手を拭きながら寄ってくる。
「……うん、大丈夫…」
「全然大丈夫に見えないわよ!?顔色も悪いし…何かあったの?」
オデコに手を当てて心配してくれる。シアさんには私と同じくらいの子供がいて、自分の子供同様に良くしてくれてる。
「いや…寝れなかったから…」
「嘘おっしゃい!いつも元気いっぱいで陽気なアートがそんなしょげた顔してっ!…それに確か今日はアカデミアの合格発表じゃないの?あんなに楽しみにしてたのに…」
いつもと全く様子が違うから仕方ないよね。でもカラ元気すら今は出てこないや。
「今から…行って来るよ…。朝食は、今日はいらない…」
「何かあったなら話してごらんなさい?少しはすっきりするわよ」
「シアさん…ありがとう…」
シアさんの気持ちはすごく嬉しいけど、話すことはできない。お礼だけ言うと無理やり笑って宿の入口に向かった。
「アート…気をつけてねっ!ちゃんと帰ってくるのよ!?」
「うん、…いってきます」
扉を開けて宿の外へと出た。
帝都はいつも通り賑やかで、人通りも多くて色々な音が飛び交ってる。
レンガの敷き詰められた平らな道をアカデミアに向かってトボトボ歩いた。
足が勝手に目的地に向かって動いてる感じ。
いつもならウキウキしながら歩いてる道も、たくさんの物が並んでる商店街も今日はすごく色あせて見える。
そのままアカデミアまでゆっくり歩みを進めた。
次の日。
この日は待ちに待ったはずの合格発表の日。
「ハァ……」
昨日の今日でほぼ寝てない。
途中で着替えてから宿屋に戻ってきたけど、もう何をする気も起きなくて…椅子に座って空中をただぼーっと見てた。
正直…合格発表なんてどうでもいいや…。
合格しても良い点取っても、人の命が救えるわけじゃないし…生き返るわけでもないから。
こんな投げやりな気持ちになるのも…久しぶりだな…。
午前中に発表があって魔法アカデミア中央部にある大魔導ホールに結果が貼り出される。
そこで合格者は入学案内状とか説明書とか制服の採寸とかをしてもらうんだけど。
チラッと横を向いて窓を見る。
窓の外は青空が広がって陽も昇ってすっかり朝になってた。
もう何度目かもわからないため息が出る。
とりあえず、行かないとな…。
ミラの姿に戻って、少しでも気分を変えようとお風呂に入った。
温かい湯に浸かると少しは気持ちも和らぐけど、そこでもボーッとお湯が揺らめくのをただただ見てた。
体を拭いて愚者の輪を腕に嵌めると、その辺に置いてあった服に適当に着替えた。
「あら、おはよう…アート?大丈夫なの?そんな顔してどうしたのよ」
準備だけして宿屋の下へ移動すると、女将さんのシアさんが私の様子を見て心配そうに声をかけてきた。
階段下から顔を覗かせて、浮かない顔をしてる私にエプロンで手を拭きながら寄ってくる。
「……うん、大丈夫…」
「全然大丈夫に見えないわよ!?顔色も悪いし…何かあったの?」
オデコに手を当てて心配してくれる。シアさんには私と同じくらいの子供がいて、自分の子供同様に良くしてくれてる。
「いや…寝れなかったから…」
「嘘おっしゃい!いつも元気いっぱいで陽気なアートがそんなしょげた顔してっ!…それに確か今日はアカデミアの合格発表じゃないの?あんなに楽しみにしてたのに…」
いつもと全く様子が違うから仕方ないよね。でもカラ元気すら今は出てこないや。
「今から…行って来るよ…。朝食は、今日はいらない…」
「何かあったなら話してごらんなさい?少しはすっきりするわよ」
「シアさん…ありがとう…」
シアさんの気持ちはすごく嬉しいけど、話すことはできない。お礼だけ言うと無理やり笑って宿の入口に向かった。
「アート…気をつけてねっ!ちゃんと帰ってくるのよ!?」
「うん、…いってきます」
扉を開けて宿の外へと出た。
帝都はいつも通り賑やかで、人通りも多くて色々な音が飛び交ってる。
レンガの敷き詰められた平らな道をアカデミアに向かってトボトボ歩いた。
足が勝手に目的地に向かって動いてる感じ。
いつもならウキウキしながら歩いてる道も、たくさんの物が並んでる商店街も今日はすごく色あせて見える。
そのままアカデミアまでゆっくり歩みを進めた。
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