61 / 392
入学準備編 2
しおりを挟む
'
気持ちも新たに外へと繰り出した。
よしっ、まずは武器屋に行こう!
剣は常備しとかないと安心出来ないからね。
宿屋から出て街を歩いてると見覚えのある仮面みたいなものが、店とか家のあちこちに飾ってあった。
ビックリして近くにいた果物屋のおっちゃんに慌てて聞いた。
「なぁおじさん!あの不気味な飾りはなんだ!?」
リンゴみたいな果物を並べてたおっちゃんは振り向いて、あぁ、と答える。
「なんだ、知らんのかい?あれはスタンピードの英雄、シリウスの仮面飾りさ。たしか…、アレを飾って置くと魔除けになるんだったかな?」
それを聞いて私は愕然とした。
いや、シリウスは呪われてるから、魔除けにはならないと思うよ。逆でしょ、逆。
「嘘だろ…」
それから行く場所行く場所、シリウスの仮面ばっか目について、いたたまれない気持ちになる。
せっかく街まで出てきたのに複雑な気分で歩く羽目に。
通りにあった武器屋にもやっぱり仮面飾りがあって、思わず目を逸らした。
適当なロングソード選んで、すぐに宿屋まで戻ってきた。
「ふあぁ…なんだか疲れた…」
これは、慣れるまで時間がかかりそう。
ここでシリウスになるのは絶対やめよう。
私は固く心に誓った。
数日後…。
この日はエルナト先生が会いに来てくれた!
手紙出して帝都に着いたと知らせといたから。
エルナト先生も忙しいから時間がなかなか取れなくて、この日は珍しく非番だったみたいで、わざわざ足を運んでくれた。
宿屋と部屋番号も書いておいたから、コンコンッとノックをして入ってきた。
「先生!お久しぶりです!」
私を見てエルナト先生はやっぱりビックリしてた。
それでも扉を閉めて、窓際にいた私をじっくり観察してた。
「…えぇ、お久しぶりです。…本当に、男性になったのですね…」
片手で口を押さえて信じられないように、何度も何度も私を見てた。
「えぇ、今はアトリクスです!先生もお元気そうで良かった!会えてすごく嬉しいですよ!!」
ニコニコしてる男の私を見て、ぱちくりしてた。先生がこんなに驚いてた顔してるのも珍しいな~。
「とりあえずそこに掛けて下さい」
「…あぁ…はい、お邪魔致します。……声も低く、背も伸びましたね。顔の印象はそこまで変わらず面影はありますが、骨格も女性の時とは全く違います…」
一人がけの椅子に座ったエルナト先生はまだ観察し足りないのか、分析比較しながらもじーっと私を見てる。
「ハハッ、そうですね!初めは私…あっ、俺も戸惑いました。でも、今では男性ライフを満喫してます!」
「ふぅ……あなたといると、自分の常識というものを疑いたくなりますよ。何と言いますか…驚かさせることばかりですね」
「へへっ…」
苦笑してるエルナト先生。
蜂蜜色の髪も見ない間に少し伸びたくらいで、鼈甲色の瞳も、線の細い身体も変わらない。
相変わらずの美男子で、今24歳。男になった私と身長差はそんなにないかな?先生がちょっと高いくらい。
用意してたお茶を出すと、私も反対側へと座る。
「それで、アカデミアの準備は出来ていますか?もう近々試験が始まりますよ?」
「そこは抜かりなく…まあ、平民出身なので目立たないように、そこそこの点数で抑えようかなーっと。実技は補助魔法しか使えないし、結果は目に見えてますから」
お茶を優雅に啜りながら私の話を聞いていたエルナト先生。
「実技はまぁ仕方ないですね。あなたの実力を見せるわけにはいきませんから」
「はい」
「ですが、筆記に関しては全力でやって下さい」
「え…?な、何でですか??」
「今回の筆記問題は私が作ります」
真面目な顔して真っ直ぐ私を見てる先生。
え?言ってもいいの?
「そ、それって…?」
「恐らく…これまでの試験問題の中でも、かなり難易度が高くなることでしょう」
うわぁ…、さすがエルナト先生…。えげつないね。
アカデミアで苦労しているのか、なんか背後から負のオーラがあがってる気がする。
「初の脱落者も多数出るでしょうね。しかし、最近では教養も低く横柄な貴族が多過ぎて困っているのですよ…魔法を重要視していない愚かな貴族が。ですから、この試験の段階で学力の低い者は魔法学校で苦渋を飲み、もう一度鍛え直してほしいですからね」
にっこり笑う先生は、やっぱり先生だった。
こ、怖ぁ……。こんなに笑顔の怖い人いないよ?
優雅にお茶すすってる姿からは想像できないくらい。
今回試験受ける生徒が可哀想すぎる。
「それで、俺が全力でやるのとなにか関係あるんですか?」
「それは勿論。あなたは私の唯一の教え子だからです」
「へっ?」
「どれだけ貴方が私の教えを理解し、どこまで挑戦できるのか試してみたいのです」
テーブル越しに少年みたいな顔してる先生。
はぁ~、やっぱエルナト先生ってイケメンだなぁ。
でも、正直目立ちたくないから上位にはなりたくないんだけど。
あっ、そうだ!
「じゃあ、俺…筆記試験頑張るから、もし首位になれたら、一つお願いを聞いてほしいです!」
せっかく頑張るし、何かを犠牲にしなきゃいけないなら、ご褒美くらいもらわないとね。
私もお茶を一口飲み、ニコリとしながら先生の反応を伺う。
「お願いですか?珍しいですね……どういったものですか?」
「それは結果が出てから言います」
「うむ…まぁ、いいでしょう。私に出来ることなら叶えましょう」
「やったー!!先生絶対だからね!」
先生の約束も取り付けて、これで準備オッケー!
こうなると筆記が楽しみだな~!
気持ちも新たに外へと繰り出した。
よしっ、まずは武器屋に行こう!
剣は常備しとかないと安心出来ないからね。
宿屋から出て街を歩いてると見覚えのある仮面みたいなものが、店とか家のあちこちに飾ってあった。
ビックリして近くにいた果物屋のおっちゃんに慌てて聞いた。
「なぁおじさん!あの不気味な飾りはなんだ!?」
リンゴみたいな果物を並べてたおっちゃんは振り向いて、あぁ、と答える。
「なんだ、知らんのかい?あれはスタンピードの英雄、シリウスの仮面飾りさ。たしか…、アレを飾って置くと魔除けになるんだったかな?」
それを聞いて私は愕然とした。
いや、シリウスは呪われてるから、魔除けにはならないと思うよ。逆でしょ、逆。
「嘘だろ…」
それから行く場所行く場所、シリウスの仮面ばっか目について、いたたまれない気持ちになる。
せっかく街まで出てきたのに複雑な気分で歩く羽目に。
通りにあった武器屋にもやっぱり仮面飾りがあって、思わず目を逸らした。
適当なロングソード選んで、すぐに宿屋まで戻ってきた。
「ふあぁ…なんだか疲れた…」
これは、慣れるまで時間がかかりそう。
ここでシリウスになるのは絶対やめよう。
私は固く心に誓った。
数日後…。
この日はエルナト先生が会いに来てくれた!
手紙出して帝都に着いたと知らせといたから。
エルナト先生も忙しいから時間がなかなか取れなくて、この日は珍しく非番だったみたいで、わざわざ足を運んでくれた。
宿屋と部屋番号も書いておいたから、コンコンッとノックをして入ってきた。
「先生!お久しぶりです!」
私を見てエルナト先生はやっぱりビックリしてた。
それでも扉を閉めて、窓際にいた私をじっくり観察してた。
「…えぇ、お久しぶりです。…本当に、男性になったのですね…」
片手で口を押さえて信じられないように、何度も何度も私を見てた。
「えぇ、今はアトリクスです!先生もお元気そうで良かった!会えてすごく嬉しいですよ!!」
ニコニコしてる男の私を見て、ぱちくりしてた。先生がこんなに驚いてた顔してるのも珍しいな~。
「とりあえずそこに掛けて下さい」
「…あぁ…はい、お邪魔致します。……声も低く、背も伸びましたね。顔の印象はそこまで変わらず面影はありますが、骨格も女性の時とは全く違います…」
一人がけの椅子に座ったエルナト先生はまだ観察し足りないのか、分析比較しながらもじーっと私を見てる。
「ハハッ、そうですね!初めは私…あっ、俺も戸惑いました。でも、今では男性ライフを満喫してます!」
「ふぅ……あなたといると、自分の常識というものを疑いたくなりますよ。何と言いますか…驚かさせることばかりですね」
「へへっ…」
苦笑してるエルナト先生。
蜂蜜色の髪も見ない間に少し伸びたくらいで、鼈甲色の瞳も、線の細い身体も変わらない。
相変わらずの美男子で、今24歳。男になった私と身長差はそんなにないかな?先生がちょっと高いくらい。
用意してたお茶を出すと、私も反対側へと座る。
「それで、アカデミアの準備は出来ていますか?もう近々試験が始まりますよ?」
「そこは抜かりなく…まあ、平民出身なので目立たないように、そこそこの点数で抑えようかなーっと。実技は補助魔法しか使えないし、結果は目に見えてますから」
お茶を優雅に啜りながら私の話を聞いていたエルナト先生。
「実技はまぁ仕方ないですね。あなたの実力を見せるわけにはいきませんから」
「はい」
「ですが、筆記に関しては全力でやって下さい」
「え…?な、何でですか??」
「今回の筆記問題は私が作ります」
真面目な顔して真っ直ぐ私を見てる先生。
え?言ってもいいの?
「そ、それって…?」
「恐らく…これまでの試験問題の中でも、かなり難易度が高くなることでしょう」
うわぁ…、さすがエルナト先生…。えげつないね。
アカデミアで苦労しているのか、なんか背後から負のオーラがあがってる気がする。
「初の脱落者も多数出るでしょうね。しかし、最近では教養も低く横柄な貴族が多過ぎて困っているのですよ…魔法を重要視していない愚かな貴族が。ですから、この試験の段階で学力の低い者は魔法学校で苦渋を飲み、もう一度鍛え直してほしいですからね」
にっこり笑う先生は、やっぱり先生だった。
こ、怖ぁ……。こんなに笑顔の怖い人いないよ?
優雅にお茶すすってる姿からは想像できないくらい。
今回試験受ける生徒が可哀想すぎる。
「それで、俺が全力でやるのとなにか関係あるんですか?」
「それは勿論。あなたは私の唯一の教え子だからです」
「へっ?」
「どれだけ貴方が私の教えを理解し、どこまで挑戦できるのか試してみたいのです」
テーブル越しに少年みたいな顔してる先生。
はぁ~、やっぱエルナト先生ってイケメンだなぁ。
でも、正直目立ちたくないから上位にはなりたくないんだけど。
あっ、そうだ!
「じゃあ、俺…筆記試験頑張るから、もし首位になれたら、一つお願いを聞いてほしいです!」
せっかく頑張るし、何かを犠牲にしなきゃいけないなら、ご褒美くらいもらわないとね。
私もお茶を一口飲み、ニコリとしながら先生の反応を伺う。
「お願いですか?珍しいですね……どういったものですか?」
「それは結果が出てから言います」
「うむ…まぁ、いいでしょう。私に出来ることなら叶えましょう」
「やったー!!先生絶対だからね!」
先生の約束も取り付けて、これで準備オッケー!
こうなると筆記が楽しみだな~!
12
お気に入りに追加
324
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
侍女から第2夫人、そして……
しゃーりん
恋愛
公爵家の2歳のお嬢様の侍女をしているルイーズは、酔って夢だと思い込んでお嬢様の父親であるガレントと関係を持ってしまう。
翌朝、現実だったと知った2人は親たちの話し合いの結果、ガレントの第2夫人になることに決まった。
ガレントの正妻セルフィが病弱でもう子供を望めないからだった。
一日で侍女から第2夫人になってしまったルイーズ。
正妻セルフィからは、娘を義母として可愛がり、夫を好きになってほしいと頼まれる。
セルフィの残り時間は少なく、ルイーズがやがて正妻になるというお話です。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる