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後の祭り編 4

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 この姿じゃ中身が変わったのはわからないけど、動きやすくなった私はさらに強く速くなった。
 制限されてたリミッター外したみたいにすごく身軽で戦いやすい。
 あとは仮面を取りたいところだけど、これだけは何があっても外せないからさ



 ──コンコン。


 しばらく経って扉からノックが聞こえる。 
 そろそろ時間かな。
 スー、ハー、…と深呼吸。

 さて、面倒な事はさっさと終わらせますか。


 呼ばれて出てから侍従について、エルナト先生達と合流した。
 エルナト先生がキラキラの貴族衣装。凱旋授与式に相応しい正装衣で目が釘付けになる。
 蜂蜜色の髪に良く合う純白の衣装で、心の中でキャーキャー叫んだ。

 ハァ…これを見れただけでわたし的にはご褒美だよね~。

 ジーッと先生を見てたせいか、先生も不思議そうな顔でこっちを見てた。やばっ、見すぎてたな。

 タラゼドもいつもより良い服は着てて、何だか全く違う人物になってた。
 こっちは黒っぽい軍人服みたいな感じで、ちゃらんぽらんなギルマスとは打って変わってまともになってしまった。

 長ぁーーい豪華な回廊を抜けると、巨人が通るみたいな大きくて重厚な扉があって、その前で名前が呼ばれると開いた扉を進んでく。

 中は天井が見上げるくらい高くって、真っ赤なレッドカーペットが引かれて、皇帝陛下が鎮座する玉座まで続いてる。
 周りは同じく正装している貴族達と階級の高い軍人達が囲んで、皇帝陛下の近くには位の高い大臣達と爵位の高い貴族が並んでた。
 皇帝陛下は見事な銀髪の上に立派な王冠をつけ、玉座に座ってる。
 こっちもレグルス様やポルックス公爵殿下と同じ、高貴なロイヤルパープルの瞳。

 ポルックス公爵同様、見た目が若く見えるね。
 それにやっぱりレグルス様と似てるなぁ。親子だから当たり前だけど。
 凝視出来ないけどこっちもイケオジ枠だよね。確か40過ぎくらいだったような?

 ゲームでも見たけどやっぱり実物はさらに威厳に溢れてるね。この人は世間で賢帝と言われている人物。
 
 歩みを進めて中心辺りまでやってくると、そこで膝を折った。

「これより、この度のスタンピードでの功績を讃え──」

 読み上げられるカストル皇嗣殿下の功績とか、私とかベガ、エルナト先生、タラゼド…諸々の功績を順に読み上げられてて、長くて欠伸が出そう。
 ずっと膝折ってるから痺れてくるし、早く終わってほしいな。

 ようやく読み上げが終わって、一度立ち上がる。

 結局私はこの前エルナト先生が言ってた通り、爵位だ勲章だといらない栄誉を次々と賜る。

 喋れない事はあちら側も了承してるのか、特に何事もなく双龍宝華勲章のバッジみたいなのを受け取ることに。
 爵位…しかも“准伯爵”っていう嘘みたいに高い爵位まで無言のまま終わった。

 いや、周りの貴族はこんな不気味な私を好奇の目で見てたよ。
 そりゃそうだよね…自分達と同じ貴族に、冒険者でしかも呪われた人間が仲間入りするんだからさ。
 ていうか私って凄い大出世だよね。  
 ついに爵位持ちになっちゃったし、うちの父より上の立場になっちゃった。
 
 エルナト先生は帝都の魔物を倒して土属性を発現させて、大勢の帝都民を救った事で准子爵に。
 ベガはポルックス公爵殿下を守った功績で准男爵になって、タラゼドは素早い電報での避難指示に加え、スタンピード後の魔物焼却処理を迅速に行ない疫病防止努めた事で、ギルドマスターを総括するグランド・マスターに昇格。
 これは非常時に帝国全土の冒険者を、階級に関係なく動かす権利もあるっていう凄いものだ。
 この3人の授与には拍手を送りたい。

 特にエルナト先生はアカデミアの教授にも抜擢されて、私以外は大変満足いく結果じゃないのかな?
 
 無事に授与式も終わって、この後は帝国の貴族達を集めての祝賀パーティーが開かれる。

 もちろん私は出席しません!

 貴族が一番嫌うのは成り上がりの爵位を持つ者。
 金で買うのも、こういう功績でいきなり爵位を得るのもそう。
 生まれた時から高貴な血筋を重んじる貴族としては、取ってつけたように入った卑しい血の新参者は嫌がられるだよね。

 しかも私なんて冒険者の上に呪われてるんだよ!?
 シリウス自身が帝都を救ったわけじゃないから、ここの帝国貴族が歓迎するわけがない。

 周りにいた貴族達もパーティーの為いなくなり、周りには高位貴族と大臣達のみ。
 私も退席しようとしてたのに、急に玉座に座ってた皇帝に呼び止められた。

「シリウスよ。そなたは残れ」

 ようやく開放されると安堵してたのに、何で呼び止めるかな~!!うぅ…最悪。
 しかも皇帝陛下…この皇帝ってそこまで悪い人じゃないけど、私は好きじゃないしあんまり関わりたくない。
 この人はアルファルドの伯父にあたる人で、亡きドラコニス公爵夫人のお兄さんでもある。
 権力者には珍しく兄弟愛が強い現皇帝は、妹のことも例外なく可愛がってて、その妹を亡くしたのはアルファルドを庇ったせいだって曲解して、アルファルドが苦境に立たされても放置している嫌なやつ。
 自分の甥っ子なのに…。
 
 エルナト先生も心配そうに私を見てた。
 私は安心させるようにコクリと頷いた。

 そのまま先生まで残るわけにもいかないから、促されるまま退席していった。

 私は1人、玉座の前で片膝を折った。

「弟が世話になった。そなたがあの場に居なければ、カストルは今頃生きてはおるまい。改めて礼を言う」

 今代の皇帝陛下は、弟君のポルックス公爵をすごく可愛がってるって聞いた。
 喋れないから頭を下げる。

「先ほどは帝国としての褒美だ。ここからは余個人の褒美として与えたいのだが…、そなたには呪いがかけられていると聞いた。本来ならばそれを解呪出来れば良いのだが、生憎大神官が今帝国を離れていてな」

 解呪と聞いてギョッとした。

 ホントに余計な事はやめてくれぇーー!!
 そんなの望んでないし、むしろ迷惑な事ばっかで全然嬉しくなーい!

 陛下の言葉に慌てて首を横にブンブン振る。

「代わりと言ってはなんだが…報奨金100万Gと、そなたが望むならばレグルスの護衛騎士として任命しようと思うのだが」

 それを聞いてザワザワと周りがざわめき立った。
 
 いや、もう十分過ぎるくらい色んなの貰ったのに、これ以上はお腹いっぱいです。
 勘弁してください。

 本来なら皇太子殿下の護衛騎士に任命されるなんて、もの凄い事だよ。
 未来の皇帝陛下の専属騎士になるって事でしょ?
 レグルス様の側にいれるのは光栄なことだけど、そんなのできないんだよ。
 私にはアルファルドがいるから!
 それに私は遠くからそっと見守るのが好きなのっ!わかってないなぁ!
 
 もしもの為に懐に忍ばせていた紙とペンが役に立った。
 カーペットの上だと書きづらいけど、ここはハッキリ自分の意志を示しとかないと!

 カリカリ書き始めて、書いた紙をそのまま両手で陛下の前に差し出した。
 近くにいた陛下の従者がそれを拾って読んでる。

「本当にこれで良いのか?」

 汚い字をザッと読んだ従者は、信じられない顔をして私を見てる。
 私はコクリと頷いて、改めて従者がそれを読み上げた。


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