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冒険者編 1
しおりを挟む実家から離れて、帝都にある魔法アカデミアに近い都市ムーリフで一人暮らしを始めた。
都市外れの山あいにある小さな家を買って、念願の一人暮し!
そして私は、めでたく13歳で冒険者デビューした!
冒険者名はシリウス。
とりあえず剣士で登録してるけど、戦士でも魔法使いでもある。
正確な性別、年齢、素性一切不詳。
呪われた身体で話す事が出来ない。体中に呪詛が巡り異形の姿になっていて、素顔を見るとその呪いが移るって噂も意図的に流した。
こんな正体不明のふざけた人物でも登録出来るのが冒険者なんだ。
シリウスは言葉を話せないから、いっさいを筆談でやり取りしてる。
呪われた身体っていうのを利用して、自分に関しての一切の情報を伏せている。
シリウスの設定はこんな感じ。
顔は全体的に呪われそうな禍々しい仮面で隠していて、さらに黒い布で頭全体を覆っている。
見た感じ前世の某アニメ映画で出てきた、神様がいっぱい出てくる黒い仮面だけのヤツに似てるかも。
視界は悪いけど、気配を感じられる私にとってはそれほど問題はないんだ。
あとは体型がわからないように、全身をダボついた真っ黒なフードと黒衣で揃えて、周りからは一種異様な近寄りがたい雰囲気を醸し出すようにした。
この仮面や衣装も実はダンジョンで発掘したアイテムで、魔法耐性や衝撃吸収効果があるものを黒く染めたんだ。
一応成人男性の設定なので身長を補うためシークレットブーツを密かに開発し、シリウスになる時には必ず履くようにしている。(このシークレットブーツも限定商品として販売したら飛ぶように売れた。)
ちなみに喋らないのも素顔を見せないのも自分の身を守るため。
これから起こるであろう様々な事柄を踏まえ、少しでも私にたどり着く可能性を消したかったから。
冒険者ギルドは依頼をこなしていくと評価も上がっていく仕組み。
強さのレベルを測る基準、この辺は普通のRPGと同じでE、D、C、B、A、S、SS、SSS級まであって、上がる毎にギルド職員との試合がある。これはレベル判定の為。
ちなみにここでのSとはスター(星)のことらしいよ。ここでのスター獲得は冒険者の憧れになってるみたい。
SSS級(トリプルスター)って呼ばれる冒険者は現在だと存在していない。
嘘か本当かわからないけど、大昔スタンピードが起きた時に彗星のごとく現れた冒険者が一人でモンスターを倒したっていう物凄い伝説がある。
その時にSSS級の称号を与えられた彼は、後に帝国史上唯一の剣帝(ソードエンペラー)として語り継がれる事になる。
◇
この日も冒険者ギルドに来てた。
ここはムーリフとその隣にあるポルックス公爵領の中間地点にある。
田舎のこじんまりした冒険者ギルドと違って、かなりの広さと大きさのあるギルド。
だから依頼量も多く、壁にも沢山の依頼書が貼ってある。
中は対面式になっていて受付にはちゃんと受付嬢もいるよ。
「今日の依頼も早いですね~。まだお時間がありますが、どうされますか?」
冒険者ギルドの受付嬢サーラ。
この日の依頼料500Gを渡しながら話してくる。
ちなみに1Gは日本円だと大体100円くらいかな?
まだEランクの私だけど依頼をこなす手際が良いのと、素材の丁寧な下処理を見て良い印象を持ってるみたい。
初めて見た時には怯えた様子で強張っていた表情も、しばらくして慣れた頃にはだいぶ警戒心は薄くなったみたい。
私は紙を取り出し利き手とは逆の手でワザと汚く文字を書いていく。ギリギリ読めるくらいの汚さで。
『またやる』
一言書くと、サーラは私に見合ったランクの依頼書を出してくれる。
「これなんていかがでしょう?」
紙を受け取って一通り目を通した。
近くの農場でのメガマウス退治だった。
報酬は大体300G。3万円くらいだよね。
メガマウスはそこまで強くない大きなネズミだけど、数が多いのとすばしっこいのがかなり厄介で、ほっとくとどんどん増え続ける害獣。
Eランクでも報酬の高い依頼を回してくれるサーラには密かに感謝してる。
『これにする』
って書いた。依頼書に印を押してくれてカウンター越しに渡された。
「了解しました!ではいってらっしゃいませー!」
コクリと頷いて、『ありがとう』って紙に書くとサーラも悪い気はしないのか、どういたしましてと手を振って送り出してくれた。
周りの冒険者からは異形のせいか煙たがれているし、始めは陰で絡まれたりもしたけど、その度に実力の差を見せつけやり返してやった。
それから冗談交じりに【黒い死神】とか、【呪われた冒険者】なんていらない二つ名も付けられたりしてる。
でも冒険者は実力が全ての世界。立ちはだかる者には容赦なんてしないよ。
こうやって私は着々と自分の計画通りに物事を進めて行った。
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