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冒険者編 4
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目的地の特徴を少し話しただけなのに、観察力の高いエルナト先生はすぐに見つけ出してくれた。
いやー、正直特徴なんてほとんど無いようなものだってのに…ホント凄いや。
その場所は今いる絶壁の反対側にある川の側。
エルナト先生に向かって頷くと、タウリの首元の服を掴んて先生の手を取った。
「おじ、いや、シリウス~!ちょっと待つの…ぎょえぇぇーーー!!」
有無を言わせず絶壁から飛び降りた。
とりあえずタウリの叫び声がうるさいけど、着地点を予測して急降下している横の絶壁を補助魔法を使いながら思い切り蹴り反対側へ移動した。
体にかかる風圧と重力でこのまま落ちたら確実に即死できるだろうなぁ。
ビュービューと風を切る音が耳にうるさく聞こえる。
今度はエルナト先生が風魔法を使って降下速度を落としてくれてる。
『ワールウインド』
川の水を巻き上げるような竜巻に近い風が下から吹き上がった。
その風のおかげで降下スピードが減速し、ふわりと着地することができた。
「ゔ…うぅ…おぇっ……」
川辺の岩場でしゃがみ込んだタウリは具合が悪そうだけど、時間がないから無視して先へと向かった。
様々な大きさの石が川沿いに幾重にも積み重なってて、壁のように上に伸びてる切り立った岩しかない風景。
草木はほとんど無いけど川があるおかげか、水が流れてるとこだけはかろうじて緑が見えてた。
「うむ…この辺りが怪しそうですがね……岩の一部が丸く変色していて、微かに風を感じます」
川辺を歩いていて移動したエルナト先生は絶壁の一部の壁に手を添えて確かめてる。
確か、この壁のどこかにボタンみたいな何があるんだよねー。
私も壁に近づいて、岩肌を撫でるように触ってると盛り上がったものが手に当たった。
これかな、と思いながら壁の一部にある突起を押した。
ゴゴゴゴオォーーと音を立てて壁の一部が扉のように開き中へと続く入り口が開く。
「なっ…」
「うぅ…シリウスはなぜ開け方を知っているのですかな?」
驚いてる二人をおいて一人で中へと進んでく。
予め用意していたランプを着けて、真っ暗闇だった洞窟のようなダンジョンに明かりが灯る。
こういう時火属性の魔法使いは便利なんだろうなぁ。
岩肌剥き出しのトンネルがどこまでも続いてる感じ。二人の話してる声が反響して聞こえてる。
「相変わらずダンジョンは寒くて薄気味悪いですな」
「うむ…どうやら徐々に下っているようですね」
鍾乳洞のように水気もなくて、風も吹いていない。抜け穴のない完全な洞穴だった。
歩いて間もなくモンスターが現れる。
「こやつはダークスライムですぞ!」
行く手を塞ぐように周りの岩陰から飛びかかってくる。
本来ダークスライムは闇魔法を使うモンスターだったみたいだけど、今では名前だけが残っててただの黒いスライムになってるんだ。
私は持っていたレイピアを瞬時に取り出して、相手の勢いを利用して串刺しにする。
そのままダークスライムは弾けて地面に消えてく。
「素晴らしい。シリウスは見る度に強くなっていきますね」
「お見事ですな!」
このダンジョンではさほど強い敵はいない。
覚えてる限りでは、ウルフ系スライム系スパイダー系、そしてボスには守護ゴーレムが出てきたはず。
ゲームのモンスターも基本的に種類は少なかったし、製作者も恋愛要素を重視してたせいか、戦闘にはそれほど力を入れてなかった。
今思うとRPG要素はいらなかったんじゃないかなぁ……本当にどっちつかずの中途半端なゲームだよね。
灯りを頼りに分かれ道に来ても迷うことはなかった。
何度もゲームでやったから、分岐が来ても進むべき道が手に取るようにわかる。
途中スパイダーシャークやアイアンウルフが出てくるけど、戦闘に立っている私がどんどん倒してく。
「……やはりシリウスは不思議な方ですね。初めて来た筈のダンジョンを知り尽くしているのも、レベルの高いモンスターをいとも簡単に倒していくのも…」
「いやはや、末恐ろしいですな…わしにはシリウスが神の使いにでも見えて来ましたぞ」
「神の御使い…言い得て妙ですね…」
エルナト先生は背後からジッと私を見てて意味ありげに呟いてる。
私がこの姿の時にシリウスとして扱ってくれるのはありがたいけど、私はそんな大層なもんじゃないですよー。
お喋りしながらだった探検も、モンスターの数が増えるにつれ口数も減っていってる。
途中貴重なアイテムBOXも回収しつつ、先へと急いだ。
いくつかの分岐を進んで、ようやく大きな扉の前に辿り着いた。
扉の前に埋め込まれた宝石のような赤い石を手でなぞる。
《小さき者よ、中へと進むがよい…》
どこからか聞こえた声と共に、石でできた巨大な扉がゆっくり開いてく。
すごい…この場面もこのセリフもゲームと一緒だ…。
怖いって思う気持ちよりも、ワクワクドキドキした高揚感の方が断然上回ってる!
今まで異世界を感じることはあっても、ゲームの世界を感じる事があんまりなかったから、ゲーム通りの展開が新鮮で嬉しくなってきた。
「今の言語は恐らく古代語ですね。かなり癖のある話し方です」
「わしにはサッパリわかりませんぞ…」
後ろにいた二人をパッと振り返る。
え?これって古代語なんだ…。
普通に話してるように聞こえたのに、私がおかしいの?
不思議に思いながら私が中へ進んでると、あとに続いて二人も足を踏み入れる。
開いた扉の向こうには、ダンジョンとは思えないだだっ広い空間と見上げる程の高い天井。
一度深呼吸をすると、足を踏み出し中へと進む。
暗かった通路とは違って、ボス部屋は青白い光が灯り明るくてランプもいらないくらいだった。
目的地の特徴を少し話しただけなのに、観察力の高いエルナト先生はすぐに見つけ出してくれた。
いやー、正直特徴なんてほとんど無いようなものだってのに…ホント凄いや。
その場所は今いる絶壁の反対側にある川の側。
エルナト先生に向かって頷くと、タウリの首元の服を掴んて先生の手を取った。
「おじ、いや、シリウス~!ちょっと待つの…ぎょえぇぇーーー!!」
有無を言わせず絶壁から飛び降りた。
とりあえずタウリの叫び声がうるさいけど、着地点を予測して急降下している横の絶壁を補助魔法を使いながら思い切り蹴り反対側へ移動した。
体にかかる風圧と重力でこのまま落ちたら確実に即死できるだろうなぁ。
ビュービューと風を切る音が耳にうるさく聞こえる。
今度はエルナト先生が風魔法を使って降下速度を落としてくれてる。
『ワールウインド』
川の水を巻き上げるような竜巻に近い風が下から吹き上がった。
その風のおかげで降下スピードが減速し、ふわりと着地することができた。
「ゔ…うぅ…おぇっ……」
川辺の岩場でしゃがみ込んだタウリは具合が悪そうだけど、時間がないから無視して先へと向かった。
様々な大きさの石が川沿いに幾重にも積み重なってて、壁のように上に伸びてる切り立った岩しかない風景。
草木はほとんど無いけど川があるおかげか、水が流れてるとこだけはかろうじて緑が見えてた。
「うむ…この辺りが怪しそうですがね……岩の一部が丸く変色していて、微かに風を感じます」
川辺を歩いていて移動したエルナト先生は絶壁の一部の壁に手を添えて確かめてる。
確か、この壁のどこかにボタンみたいな何があるんだよねー。
私も壁に近づいて、岩肌を撫でるように触ってると盛り上がったものが手に当たった。
これかな、と思いながら壁の一部にある突起を押した。
ゴゴゴゴオォーーと音を立てて壁の一部が扉のように開き中へと続く入り口が開く。
「なっ…」
「うぅ…シリウスはなぜ開け方を知っているのですかな?」
驚いてる二人をおいて一人で中へと進んでく。
予め用意していたランプを着けて、真っ暗闇だった洞窟のようなダンジョンに明かりが灯る。
こういう時火属性の魔法使いは便利なんだろうなぁ。
岩肌剥き出しのトンネルがどこまでも続いてる感じ。二人の話してる声が反響して聞こえてる。
「相変わらずダンジョンは寒くて薄気味悪いですな」
「うむ…どうやら徐々に下っているようですね」
鍾乳洞のように水気もなくて、風も吹いていない。抜け穴のない完全な洞穴だった。
歩いて間もなくモンスターが現れる。
「こやつはダークスライムですぞ!」
行く手を塞ぐように周りの岩陰から飛びかかってくる。
本来ダークスライムは闇魔法を使うモンスターだったみたいだけど、今では名前だけが残っててただの黒いスライムになってるんだ。
私は持っていたレイピアを瞬時に取り出して、相手の勢いを利用して串刺しにする。
そのままダークスライムは弾けて地面に消えてく。
「素晴らしい。シリウスは見る度に強くなっていきますね」
「お見事ですな!」
このダンジョンではさほど強い敵はいない。
覚えてる限りでは、ウルフ系スライム系スパイダー系、そしてボスには守護ゴーレムが出てきたはず。
ゲームのモンスターも基本的に種類は少なかったし、製作者も恋愛要素を重視してたせいか、戦闘にはそれほど力を入れてなかった。
今思うとRPG要素はいらなかったんじゃないかなぁ……本当にどっちつかずの中途半端なゲームだよね。
灯りを頼りに分かれ道に来ても迷うことはなかった。
何度もゲームでやったから、分岐が来ても進むべき道が手に取るようにわかる。
途中スパイダーシャークやアイアンウルフが出てくるけど、戦闘に立っている私がどんどん倒してく。
「……やはりシリウスは不思議な方ですね。初めて来た筈のダンジョンを知り尽くしているのも、レベルの高いモンスターをいとも簡単に倒していくのも…」
「いやはや、末恐ろしいですな…わしにはシリウスが神の使いにでも見えて来ましたぞ」
「神の御使い…言い得て妙ですね…」
エルナト先生は背後からジッと私を見てて意味ありげに呟いてる。
私がこの姿の時にシリウスとして扱ってくれるのはありがたいけど、私はそんな大層なもんじゃないですよー。
お喋りしながらだった探検も、モンスターの数が増えるにつれ口数も減っていってる。
途中貴重なアイテムBOXも回収しつつ、先へと急いだ。
いくつかの分岐を進んで、ようやく大きな扉の前に辿り着いた。
扉の前に埋め込まれた宝石のような赤い石を手でなぞる。
《小さき者よ、中へと進むがよい…》
どこからか聞こえた声と共に、石でできた巨大な扉がゆっくり開いてく。
すごい…この場面もこのセリフもゲームと一緒だ…。
怖いって思う気持ちよりも、ワクワクドキドキした高揚感の方が断然上回ってる!
今まで異世界を感じることはあっても、ゲームの世界を感じる事があんまりなかったから、ゲーム通りの展開が新鮮で嬉しくなってきた。
「今の言語は恐らく古代語ですね。かなり癖のある話し方です」
「わしにはサッパリわかりませんぞ…」
後ろにいた二人をパッと振り返る。
え?これって古代語なんだ…。
普通に話してるように聞こえたのに、私がおかしいの?
不思議に思いながら私が中へ進んでると、あとに続いて二人も足を踏み入れる。
開いた扉の向こうには、ダンジョンとは思えないだだっ広い空間と見上げる程の高い天井。
一度深呼吸をすると、足を踏み出し中へと進む。
暗かった通路とは違って、ボス部屋は青白い光が灯り明るくてランプもいらないくらいだった。
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