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冒険者編 2

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 この日エルナト先生とタウリが私の住んでいる家に来てた。
 エルナト先生とは未だに連絡を取ってて、ここに住むことになったときちんと伝えてある。
 ドルアーガ家から出た私をまだ自分の生徒として面倒見てくれてるし、気にかけてくれているの事がすごく嬉しかった。

 タウリとは途中で合流したみたい。
 実はタウリは…冒険者に戻ってる。

 タウリを巻き込みたくないから、わざわざ家を出る時に事情を説明して着いてくるなって忠告したのに、このおっさんは全く聞かなかった。
 結局私が居なくなったのは自分のせいだと自ら護衛騎士を辞めたらしい。父は事情を知ってるから止められたみたいだけどね。

 それからタウリも私が心配なのか、事情を知ってから事あるごとに私の新居までやってきてくれる。

「お嬢!元気ですかな!?風邪など引いておりませぬか!!」
「お邪魔いたします。変わりなさそうですね」
「いらっしゃいませ、エルナト先生!いつも通り元気です」
「お嬢ぉぉ~!無視は良くないですぞ!!泣きますぞ!!」
「は~いはい」

 うるさいタウリは置いといて、二人をリビングに案内して移動した。
 一人暮らしには十分過ぎる広さのソファーに座ってもらい、沸かしてあったお湯で三人分のお茶を淹れる。
 
 初めの時は遠慮していたけど、回数が増えるとそれが当たり前になってきてる。
 最近だと覚える事も減ってきたおかげか、エルナト先生との授業も街に出て実際市場はどうなっているかや、物の価値、平民の生活、ちょっと危ないけどスラム街や裏社会闇市場まで幅広く教えてもらってる。 
 エルナト先生も初めは知りたいっていう私の希望を、危険だからって抑えてたけど、私が一人で出掛けるようになってからは、更に危険だと思い直して授業と称して一緒に行ってくれるようになった。

「今日は確か、ご希望の場所があると言っていましたね?」
「そうなんです!ぜひ行きたい場所があるんです!」

 お茶を出した後、今日行く目的地を確かめるためにテーブルにこの国の地図を取り出す。
 予め行きたかった場所に×印を描いておいた。
 真向かいに座り優雅にお茶を飲んでいたエルナト先生は、お茶をテーブルに置くとその地図を覗き込む。
 
「…!?ミラさん…ここはまさか……」
「はい!ここから北北東に位置するオーリオーニスに行きたいです!」

 オーリオーニスはうちからおよそ馬車で5日程の距離。
 これから行きましょう♪なーんて遠足気分で行く所じゃあない。
 岩肌の粗い断崖絶壁が続く岩層地帯。近くに町や村もない秘境のような場所。
 元気良く答える私に、エルナト先生は体を起こし眉間を揉む。
 だいぶ私に慣れてきたエルナト先生も、予想外の答えに少々戸惑ってるようだった。
 タウリはこういう時口を出さずにだいたいは傍観している。自分が出る幕じゃないことを本能で察してるみたいだね。

「──念のため聞きますが、目的は何でしょう?」

 ここ何年かでの成果かエルナト先生もすぐにダメとは言わなくなった。
 私の目の前で腕組みをし、ちょっと怖い顔でこちらを見てる。
 
「…え~っと、ここにどうしても欲しい物があるんです」
「私が知る限り、ここには岩石とモンスターしか存在しませんが?」

 間髪入れずニッコリと笑顔で言われるのが逆に怖い。
 柔らかい1人掛けソファーに座って冷や汗を流すけど、ここで負けてはいられないんだよ。

「実は…ここに隠しダンジョンがあるんです」

 テーブルに置いた地図の×印を指差し、訴えるように言ってみる。

 そう…ここには隠しダンジョンがある。
 たぶんこの世界では私くらいしか知らないだろうけど。
 なぜエルナト先生に話したかというと、ここは人数がいないと開かない条件付きのダンジョンだから。
 私が周りを気にせず実力を出せるのは、タウリとエルナト先生…この2人のどちらかがいる時だけ。
 タウリは絶対死んでもついて来るし、3人いれば何とかなる。

「隠しダンジョン?」
「はい!」
「どうして貴女がそんな事を知っているのですか?」

 まあ普通に考えてそうなりますよねー。
 相変わらず腕組みをしているエルナト先生は怖いけど、ちょっと興味を示しているようにも感じる。

「前に…依頼を受けた人から聞いたんです。このオーリオーニスのダンジョンには古代文明の遺跡が眠っているって」

 腕組みしてたエルナト先生が腕を外して、明らかな食いつきを見せてる!

 ゲームの知識です!って口が裂けても言えないから、ホントっぽく話を作ることも冒険者になってからは難しくなくなってきた。

「古代文明の遺跡ですって?…そんなものが近くにあったとは意外です」

 古代遺跡と聞いて、エルナト先生のトーンが変わったのが良くわかる。
 さっきとは目の輝きが全然違うもんね~。
 うんうん、大好きだよね。遺跡関係のお話。 

「そうでしょっ!まだ発見されていない遺跡かもしれません!善は急げです!準備が整ったらすぐ向かいましょう!」
 
 食らいついた獲物を逃さないよう更に餌を撒いた。
 エルナト先生は半信半疑っぽいがどこか諦めた表情で机の上の本を纏めだした。

「仕方ありませんね…私が止めても貴女は一人で勝手に行ってしまいそうですから。今回は騙されてあげますよ」
 
 


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