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スタンピード編 5
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風を切りながら最高速で帝国西側の奥地まで走ってきた。
周りの景色が高速で過ぎて行って、途中の障害物も瞬時に避けていく。
木の幹を次々蹴って、風魔法と跳躍を繰り返してスタンピードが発生している奥地までやってきた。
その遥か前方に木々をなぎ倒しながら進むモンスターの大群を発見した。
これが本陣かな…。
ザッと見ただけでも数百体以上はいるね。途中にももう、たくさんのモンスターが通り過ぎてたし。
周りの動物達も追い立てられるように逃げたり、踏み潰されたりって…もう残酷な殺戮は始まってる。
こうして上から見てると、この大群が二手に分かれてるのがよくわかるよ。
さっき思い出したけど、何故かこの世界でスタンピードが起こる時、決まって狙われるのが皇族の人達。
だからスタンピードで発生したモンスターが行き着く先は帝都の皇宮と、このポルックス公爵領の中心部にある公爵邸になるんだよね…。
このメカニズムはどうしてだか今だに解明されてない。
周期的に大量発生する原因も、皇族の血筋が標的にされるのかも、すべてが謎に包まれてる。
案の定大群の一方は帝都方面に…もう一方はポルックス公爵邸方面に向かってる。
しかもなぜか公爵邸方面には、大半のモンスターが群れを成して移動してる。
何で帝都じゃなくてなんで公爵邸なんだろう?帝都の方が皇族が多いのに…。
そんな疑問はひとまず置いといて…、とりあえずこれからこの大群が向かう村や部落に先回りして行かないと!
数分で到着した村では古びた数件の民家と畑に鳥や豚などの家畜を飼っているのがよくわかる。
入口のすぐ手前に畑仕事をしていたであろう村人が鍬や鎌を振り回して、もうモンスターと戦ってた。
「来るな来るなぁーー!!」
「うわぁぁ~!助けてくれ~!!」
「なんだぁ!?嘘だろっ?!ゴブリンがこ、こんなにぃ??死にたくないよっ!!」
現れたのは20匹くらいの小さなゴブリン達。人間の子供のほどの大きさなんだけど凶暴で攻撃的。
普段ならこんな場所にゴブリンなんて現れないのに。
冒険者にとっては大した相手じゃないけど、普通の村人にとっては命が脅かされるくらい怖い存在だから。
「逃げろぉ!!ほれ、こっちだぁ早く~!!」
「助けてくれっ、助けてくれ~!!」
人間てのはパニックになると人の言うことなんて聞こえなくなるもんなんだよね。
ここからは3番の役割よりも、モンスター退治が優先になってくる。
私的にはこっちの方が性分に合ってるから楽だけどね。
村の入り口にサッと降り立つと、逃げ惑う村人達がこっちに気づいたのか驚愕の表情でこっちを見る。
「きゃあぁぁ~!モンスターと化け物がっ!!」
「この世の終わりだ~!!」
小さな集落に突然現れたゴブリンと謎の黒装束の人物に、村人達は恐怖に陥ってる。
「ひぇっ!!なんだぁ!?殺される!!」
「いやぁ!誰かぁー!!」
パニック状態の人間の説得するよりも、モンスターを倒した方がよっぽど早く解決するからね。
村人を襲ってるゴブリンの前に立つと、ゴブリンは古びた剣を振り回しながら向かってきてる。
「ギョギョギェ~!!」
ゴブリン語はわからないけど、一斉に剣を突き立てて私に飛びかかる。
風魔法を使ってその場から空高くジャンプした。
いなくなった私の代わりにゴブリン達が互いに刺し合う形になる。
「ギョエェ~!」
「ガァ!」
自滅していくゴブリン達に着地と同時に回し蹴りを決めた。
「ゴワゥ!」
「ギャウッ!!」
瞬く間に勝敗が決まって、周りで傍観者していた住民達があ然としてる。
「あ、あ、あっ……」
「た、助かった、のか…?」
「あんた…助けて、くれたんか…?」
恐る恐る話しかける住民にコクリと頷いた。
ここの住民が文字を読めるかわからないけど、地面に〈にげろ、スタンピード〉って書いてみた。
「あ??なんて、書いてあるんだ??」
「村長…村長!!読んでくれぇぇ!」
年老いた老人が支えられながら、人だかりの後ろから出て来た。
「村長!なんて書いてある?」
「あ?あー、に、げろ、す、た、ん、ぴーど…」
たどたどしく読み上げる村長だったけど、読み終えた後目がカッと開いてた。
「!?す、すたっ、スタンピードじゃとぉ~!!」
「すたん??なんだぁ、それ??」
年若い村人はスタンピードの言葉自体を知らないからね。
「バッカもーん!!スタンピードとはモンスターの大発生のことじゃ!!こんなもんじゃない数のモンスターがやってくるんじゃぞぉ!!」
いきなり滑舌の良くなった村長に驚く間もなく、ようやく事の重大さを悟った村人達は大慌ててだった。
「今すぐ逃げるんじゃ~!!ゲホゲホっ」
「大変だー!避難するぞー!!最小限に荷づくりして避難壕に急げぇ!!」
大急ぎで荷づくりを始める村人達を後にして、その間にも私は湧いて出てきてるゴブリンをどんどん倒してく。
「あんたっ!誰か知らんが助かった!ありがとな!!」
モンスターの相手をしていると、避難してる村人達から次々と感謝の声がかけられた。
「黒い人ありがとうー!!あなたも気をつけてね!」
「お前さんも逃げとくれっ!こっちはもう大丈夫だー!」
私も手を振って見送ると、最後の一人が見えなくなるまで村にやって来るモンスターを倒した。
よしっ、ここはオッケー!次っ!
この要領で先回りしながら次々スタンピードを呼びかけては現れるモンスターを倒して村人や町人達を避難させて行った。
ふぅ~。
やっぱり実際モンスターが現れてるから、話は早いよね。
十数カ所くらい回ったかな。今いるこの村はポルックス公爵領の一番端の方くらい。
これで大体の集落や村は回ったかな?
大都市や街が優先になる3番はこういった小さな場所は後回しにされちゃうから。
だからこそ私は3番の役目を買って出たんだ。
大体のモンスターを倒し終えて、今度は一番高い木の上の天辺に登った。
風を切りながら最高速で帝国西側の奥地まで走ってきた。
周りの景色が高速で過ぎて行って、途中の障害物も瞬時に避けていく。
木の幹を次々蹴って、風魔法と跳躍を繰り返してスタンピードが発生している奥地までやってきた。
その遥か前方に木々をなぎ倒しながら進むモンスターの大群を発見した。
これが本陣かな…。
ザッと見ただけでも数百体以上はいるね。途中にももう、たくさんのモンスターが通り過ぎてたし。
周りの動物達も追い立てられるように逃げたり、踏み潰されたりって…もう残酷な殺戮は始まってる。
こうして上から見てると、この大群が二手に分かれてるのがよくわかるよ。
さっき思い出したけど、何故かこの世界でスタンピードが起こる時、決まって狙われるのが皇族の人達。
だからスタンピードで発生したモンスターが行き着く先は帝都の皇宮と、このポルックス公爵領の中心部にある公爵邸になるんだよね…。
このメカニズムはどうしてだか今だに解明されてない。
周期的に大量発生する原因も、皇族の血筋が標的にされるのかも、すべてが謎に包まれてる。
案の定大群の一方は帝都方面に…もう一方はポルックス公爵邸方面に向かってる。
しかもなぜか公爵邸方面には、大半のモンスターが群れを成して移動してる。
何で帝都じゃなくてなんで公爵邸なんだろう?帝都の方が皇族が多いのに…。
そんな疑問はひとまず置いといて…、とりあえずこれからこの大群が向かう村や部落に先回りして行かないと!
数分で到着した村では古びた数件の民家と畑に鳥や豚などの家畜を飼っているのがよくわかる。
入口のすぐ手前に畑仕事をしていたであろう村人が鍬や鎌を振り回して、もうモンスターと戦ってた。
「来るな来るなぁーー!!」
「うわぁぁ~!助けてくれ~!!」
「なんだぁ!?嘘だろっ?!ゴブリンがこ、こんなにぃ??死にたくないよっ!!」
現れたのは20匹くらいの小さなゴブリン達。人間の子供のほどの大きさなんだけど凶暴で攻撃的。
普段ならこんな場所にゴブリンなんて現れないのに。
冒険者にとっては大した相手じゃないけど、普通の村人にとっては命が脅かされるくらい怖い存在だから。
「逃げろぉ!!ほれ、こっちだぁ早く~!!」
「助けてくれっ、助けてくれ~!!」
人間てのはパニックになると人の言うことなんて聞こえなくなるもんなんだよね。
ここからは3番の役割よりも、モンスター退治が優先になってくる。
私的にはこっちの方が性分に合ってるから楽だけどね。
村の入り口にサッと降り立つと、逃げ惑う村人達がこっちに気づいたのか驚愕の表情でこっちを見る。
「きゃあぁぁ~!モンスターと化け物がっ!!」
「この世の終わりだ~!!」
小さな集落に突然現れたゴブリンと謎の黒装束の人物に、村人達は恐怖に陥ってる。
「ひぇっ!!なんだぁ!?殺される!!」
「いやぁ!誰かぁー!!」
パニック状態の人間の説得するよりも、モンスターを倒した方がよっぽど早く解決するからね。
村人を襲ってるゴブリンの前に立つと、ゴブリンは古びた剣を振り回しながら向かってきてる。
「ギョギョギェ~!!」
ゴブリン語はわからないけど、一斉に剣を突き立てて私に飛びかかる。
風魔法を使ってその場から空高くジャンプした。
いなくなった私の代わりにゴブリン達が互いに刺し合う形になる。
「ギョエェ~!」
「ガァ!」
自滅していくゴブリン達に着地と同時に回し蹴りを決めた。
「ゴワゥ!」
「ギャウッ!!」
瞬く間に勝敗が決まって、周りで傍観者していた住民達があ然としてる。
「あ、あ、あっ……」
「た、助かった、のか…?」
「あんた…助けて、くれたんか…?」
恐る恐る話しかける住民にコクリと頷いた。
ここの住民が文字を読めるかわからないけど、地面に〈にげろ、スタンピード〉って書いてみた。
「あ??なんて、書いてあるんだ??」
「村長…村長!!読んでくれぇぇ!」
年老いた老人が支えられながら、人だかりの後ろから出て来た。
「村長!なんて書いてある?」
「あ?あー、に、げろ、す、た、ん、ぴーど…」
たどたどしく読み上げる村長だったけど、読み終えた後目がカッと開いてた。
「!?す、すたっ、スタンピードじゃとぉ~!!」
「すたん??なんだぁ、それ??」
年若い村人はスタンピードの言葉自体を知らないからね。
「バッカもーん!!スタンピードとはモンスターの大発生のことじゃ!!こんなもんじゃない数のモンスターがやってくるんじゃぞぉ!!」
いきなり滑舌の良くなった村長に驚く間もなく、ようやく事の重大さを悟った村人達は大慌ててだった。
「今すぐ逃げるんじゃ~!!ゲホゲホっ」
「大変だー!避難するぞー!!最小限に荷づくりして避難壕に急げぇ!!」
大急ぎで荷づくりを始める村人達を後にして、その間にも私は湧いて出てきてるゴブリンをどんどん倒してく。
「あんたっ!誰か知らんが助かった!ありがとな!!」
モンスターの相手をしていると、避難してる村人達から次々と感謝の声がかけられた。
「黒い人ありがとうー!!あなたも気をつけてね!」
「お前さんも逃げとくれっ!こっちはもう大丈夫だー!」
私も手を振って見送ると、最後の一人が見えなくなるまで村にやって来るモンスターを倒した。
よしっ、ここはオッケー!次っ!
この要領で先回りしながら次々スタンピードを呼びかけては現れるモンスターを倒して村人や町人達を避難させて行った。
ふぅ~。
やっぱり実際モンスターが現れてるから、話は早いよね。
十数カ所くらい回ったかな。今いるこの村はポルックス公爵領の一番端の方くらい。
これで大体の集落や村は回ったかな?
大都市や街が優先になる3番はこういった小さな場所は後回しにされちゃうから。
だからこそ私は3番の役目を買って出たんだ。
大体のモンスターを倒し終えて、今度は一番高い木の上の天辺に登った。
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