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スタンピード編 4
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タラゼドの号令で周りの冒険者達が一気に行動に移ってる。
「秘蔵のアイテムを取ってくるぞ!腕の見せ所だ!」
「なるべく遠くへ逃げないと……」
「やべぇ、依頼は後回しだなっ」
「早く家族に伝えないといけないわ!」
口々に話し一斉にギルドから散って行く。
緊急時は原則依頼は中止。全ての戦力を帝都や首都へと向ける為だからね。
「カミル!!領主殿と皇宮へ向け一番を至急飛ばせ!!」
一番とは国の一大事を報せる電報のこと。
伝達魔法が存在しないこの世界では、ラーミヤと呼ばれる怪鳥を使い伝令を運ぶのに使うんだ。
時速でおよそ100キロを出すことのできるこの世界では最速の鳥になる。見た目は青白くサギに似ているよ。
「ギルマスー!山間部や各地の村周辺からモンスターが増えだしているとの報告がどんどん入ってきてます!!」
「クソっ、やはり起こるか!ギルドも一度閉鎖する!周辺地域には3番を飛ばせ!急げっ!!」
「3番を飛ばすのも限界があります!数が足りません!!」
3番の電報は避難勧告。
これにもラキータっていう怪鳥を使うんだけど、ギルド一つにつきせいぜい5、6匹の所有が限度なんだよ。
小さな町や村全てに飛ばすってなると数が全く足りない。
だけど平民の避難間に合うか否かはこれにかかってる!
人の居なくなったギルド内にギルマスと職員達の怒号が飛び交っている。
「シリウス…我らは例の作戦に移るのですかな?」
ひっそりと小声でタウリが話しかけてくる。私達がこれからすることはモンスター退治じゃない。
タウリに向かってコクリと頷くと、タウリもわかったように頷いた。
カツカツと叫び合っているギルマスの元に近づいて、書いた紙を見せた。
『3バンかわる。いこう』
「……お前が周辺回って報せるってことか?あぁ!?駄目に決まってるだろ!!お前みたいな貴重な戦力を電報代わりに使えるかよ!!」
タラゼドがカウンターをバンッと叩いて、唾を飛ばす勢いで捲し立ててる。
威圧つきで睨み付けられるけど、ここで引くわけにいかないんだよ。
サラサラと紙に書いてタラゼドの顔の目の前に突きつけた。
「ぐっ!なんだよ!?」
私が書いた紙をタラゼドがバッと取り上げる。
『おくれるとたくさんシぬ』
「だぁ~!わぁってるよ!!」
タラゼドは苛ついたようにガリガリと頭をかき乱してる。
『けんとうをイノる』
書いた紙をカウンターに乗せて、クルリと背を向け出口へと向かった。
「おいっ!一人で完結してんじゃねえぞ!ったく!」
その間にも様々なモンスターによる被害報告が入って来てる。
「……頼んだぞ…」
ギルマスの呟きなんて耳には入らない。
そのままギルドを後にした。
タウリとは事前に打ち合わせしてあって、緊急時だから二手に分かれる事に。
「良いですかな。絶対に無謀な行動をしてはなりませんぞ、シリウス!」
私が電報代わりになるのには、正直タウリは邪魔なんだよね。
一人のほうが身軽だし、一刻を争うときだからね。
「わしはここで防衛しつつ帰りを待っておりますぞ。くれぐれも余計な事はせんように頼みますぞ!!」
念押しして言われるけど、タウリの言うことはもっともだと思うよ。
私は戦闘に極力参加しないで、電報代わりになることを条件にタウリに納得してもらったから。
ごめんねタウリ。でも私には私にしかできない事があるから。
カーンッ!カーンッ!カーンッ!!
町は鐘が警報のように鳴り響いて、スタンピードの避難で人々が逃げ惑ってる。
「避難だーー!!避難しろおぉ!!スタンピードが起こるぞー!!!」
「急げ!地下に避難するぞー!」
「ママー!怖いよぉー」
「早く逃げましょう!」
下手に町の外に出ると危険だから、外への出口は封鎖されてる。
そうこうしている間に一番がポルックス公爵の元へ届いたのか、町に常駐している騎士の他に公爵家のシンボルである白百合のマークの旗を掲げている騎士達がズラリと到着してた。
思ってたより行動の早いポルックス公爵に心の中で称賛した。
ここは大丈夫。とりあえず小さな村から順に回って行こう。
高い塀に囲まれてるけど、跳躍力生かし軽々乗り越える。
外に出るとここはまだモンスターは出現していない。
まぁ時間の問題だと思うよ。
ひとまず人々の避難が終わるまではもってほしいな。
近くにある木の天辺まで登り、町の外の様子を一望する。
西側…あれは山の方角にモンスターの気配を感じる。そこから狙いを定め風魔法を使い一気に飛び出した。
タラゼドの号令で周りの冒険者達が一気に行動に移ってる。
「秘蔵のアイテムを取ってくるぞ!腕の見せ所だ!」
「なるべく遠くへ逃げないと……」
「やべぇ、依頼は後回しだなっ」
「早く家族に伝えないといけないわ!」
口々に話し一斉にギルドから散って行く。
緊急時は原則依頼は中止。全ての戦力を帝都や首都へと向ける為だからね。
「カミル!!領主殿と皇宮へ向け一番を至急飛ばせ!!」
一番とは国の一大事を報せる電報のこと。
伝達魔法が存在しないこの世界では、ラーミヤと呼ばれる怪鳥を使い伝令を運ぶのに使うんだ。
時速でおよそ100キロを出すことのできるこの世界では最速の鳥になる。見た目は青白くサギに似ているよ。
「ギルマスー!山間部や各地の村周辺からモンスターが増えだしているとの報告がどんどん入ってきてます!!」
「クソっ、やはり起こるか!ギルドも一度閉鎖する!周辺地域には3番を飛ばせ!急げっ!!」
「3番を飛ばすのも限界があります!数が足りません!!」
3番の電報は避難勧告。
これにもラキータっていう怪鳥を使うんだけど、ギルド一つにつきせいぜい5、6匹の所有が限度なんだよ。
小さな町や村全てに飛ばすってなると数が全く足りない。
だけど平民の避難間に合うか否かはこれにかかってる!
人の居なくなったギルド内にギルマスと職員達の怒号が飛び交っている。
「シリウス…我らは例の作戦に移るのですかな?」
ひっそりと小声でタウリが話しかけてくる。私達がこれからすることはモンスター退治じゃない。
タウリに向かってコクリと頷くと、タウリもわかったように頷いた。
カツカツと叫び合っているギルマスの元に近づいて、書いた紙を見せた。
『3バンかわる。いこう』
「……お前が周辺回って報せるってことか?あぁ!?駄目に決まってるだろ!!お前みたいな貴重な戦力を電報代わりに使えるかよ!!」
タラゼドがカウンターをバンッと叩いて、唾を飛ばす勢いで捲し立ててる。
威圧つきで睨み付けられるけど、ここで引くわけにいかないんだよ。
サラサラと紙に書いてタラゼドの顔の目の前に突きつけた。
「ぐっ!なんだよ!?」
私が書いた紙をタラゼドがバッと取り上げる。
『おくれるとたくさんシぬ』
「だぁ~!わぁってるよ!!」
タラゼドは苛ついたようにガリガリと頭をかき乱してる。
『けんとうをイノる』
書いた紙をカウンターに乗せて、クルリと背を向け出口へと向かった。
「おいっ!一人で完結してんじゃねえぞ!ったく!」
その間にも様々なモンスターによる被害報告が入って来てる。
「……頼んだぞ…」
ギルマスの呟きなんて耳には入らない。
そのままギルドを後にした。
タウリとは事前に打ち合わせしてあって、緊急時だから二手に分かれる事に。
「良いですかな。絶対に無謀な行動をしてはなりませんぞ、シリウス!」
私が電報代わりになるのには、正直タウリは邪魔なんだよね。
一人のほうが身軽だし、一刻を争うときだからね。
「わしはここで防衛しつつ帰りを待っておりますぞ。くれぐれも余計な事はせんように頼みますぞ!!」
念押しして言われるけど、タウリの言うことはもっともだと思うよ。
私は戦闘に極力参加しないで、電報代わりになることを条件にタウリに納得してもらったから。
ごめんねタウリ。でも私には私にしかできない事があるから。
カーンッ!カーンッ!カーンッ!!
町は鐘が警報のように鳴り響いて、スタンピードの避難で人々が逃げ惑ってる。
「避難だーー!!避難しろおぉ!!スタンピードが起こるぞー!!!」
「急げ!地下に避難するぞー!」
「ママー!怖いよぉー」
「早く逃げましょう!」
下手に町の外に出ると危険だから、外への出口は封鎖されてる。
そうこうしている間に一番がポルックス公爵の元へ届いたのか、町に常駐している騎士の他に公爵家のシンボルである白百合のマークの旗を掲げている騎士達がズラリと到着してた。
思ってたより行動の早いポルックス公爵に心の中で称賛した。
ここは大丈夫。とりあえず小さな村から順に回って行こう。
高い塀に囲まれてるけど、跳躍力生かし軽々乗り越える。
外に出るとここはまだモンスターは出現していない。
まぁ時間の問題だと思うよ。
ひとまず人々の避難が終わるまではもってほしいな。
近くにある木の天辺まで登り、町の外の様子を一望する。
西側…あれは山の方角にモンスターの気配を感じる。そこから狙いを定め風魔法を使い一気に飛び出した。
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