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スタンピード編 3
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「おいおいどうした?」
カウンターの奥にギルド職員の部屋があるんだけど、更に階段があってその上にはギルドマスターがいる。
騒ぎを聞きつけたのか他の職員が報告したのか、普段ほとんど見ることがないギルマスが出てきた。
「タラゼド!お主のんびりしてる暇はないぞ!スタンピードが起きるのだぞ!急ぐのだ!!」
「誰かと思えばタウリか。スタンピードとは、随分物騒だな…」
年頃はタウリより少し若そうで、白髪交じりの癖のある肩くらいまでの髪を後ろで一つに纏めてる。
タレ目がちのイケオジ風な男で、背も高くてムキムキの良い筋肉をしてる。
面倒くさそうに頭をポリポリかきながら階段を降りてきた。
意外なことにこの二人は知り合いみたい。
「ギルマス~!スタンピードですって!どうしましょう!?」
カウンターまでやって来たギルマスにサーラが混乱しながら泣きついてる。
「根拠はあるのか?タウリ。緊急要請出しました、でも起きませんでした、じゃ済まされないぜ?」
両腕を組んで試すみたいにタウリに問いかけてる。
威圧してるギルマスはやっぱり相当な実力者だよね。その場にいるだけで重苦しい気迫を感じるよ。
「ふん、スタンピードに根拠などあるものか。現にモンスターが溢れてきておる。それにじゃ、ワシの長年の勘が言っておるのだ!さっさとせんかぁ!!」
「相変わらずだな…そんなんで、要請なんぞ出せるわけないだろぉ!!」
お互いカウンター越しに顔を近づけて、もの凄い覇気で牽制し合ってる。
「わぁ~ん、ギルマスぅ~!やめて下さい~!」
カウンターにいたサーラは、いつの間にかギルマスの後ろで服を引っ張って、喧嘩腰になってる二人を止めようとしてる。
周りの冒険者も野次を飛ばしながら面白そうに見物してるし。
「いいぞ~やれやれー!」
「ギルマス!そのおっさんノシちまえよぉ!」
完全に茶番になってる…。
時間が無いのにこのままじゃ埒が明かない。
やっぱりタウリじゃ駄目だ。
みんなが避難するのに、1分1秒でも無駄にしたくない!
後ろの壁側に控えてた私は風魔法を発生させて、力いっぱい近くあったテーブルを思いっ切り殴って破壊した。
ドガァッッン!!!
もの凄い音を立てて木っ端微塵に粉砕されたテーブル。周りに破片も飛び散ってる。
周りがシーンと静まって、一斉に私に視線が集中してる。
結構イラついていたのもあったから、体中に殺気を纏わせて強めに太字で書いた紙を目の前に出した。
『いそげ、みんなシぬ』
文字を読める人はそれを見て戸惑ってる。
わからない人は他の冒険者に聞いてる。
この時点で冒険者として結構名の通っている私は、間違っても冗談をいうようなキャラじゃないしね。
「シリウス…発端はお前さんか?」
タラゼドの問いかけにコクリと頷いて、出した紙をさらに前へ出した。
黒装束と不気味な仮面て、こういう時に役に立つ。
無言てのはさ、時に話すよりも異様な説得力を発揮するからね。
タウリとタラゼドも牽制するのを止めてこちらを見てる。
「冗談ではないのだタラゼド。お前もわかっているだろう…時間が経てば経つほど救える命が減っていくのだぞ」
タウリがカウンター越しにタラゼドを睨んでる。
このギルマスも前回のスタンピード経験者なんだろうね。二人が知り合いなのも昔色々あったのかもしれない。
タラゼドはふぅ…と息を吐いて、髪をかきあげて天を仰いでる。
「またか!…またっ……」
「急ぐのだ!!」
「うるせぇ!くそタウリっ!!」
焦りかイラつきか、タラゼドはカウンターをバンッと叩いてタウリを睨んでる。
「ギルマス…レプス近郊の山間から、上位種が現れていると報告が…」
カウンターの後ろからギルド職員がコソッとタラゼドに報告をあげてる。
「っ!…あ~、くそっ!!」
カウンターをヒョイッと乗り越えたタラゼドは、大きく息を吸って声を張り上げて話した。
「ここにいる冒険者全員に告ぐ!恐らくだが、これからスタンピードが起こる!!」
シーンとしたギルド内にギルマスの声が響いてる。冒険者達は静かに傍観してる。
「急いで装備やアイテムを整えろ!!スタンピードの範囲やモンスターの種類はわからないが、数百…数千単位での氾濫になるだろう!!」
基本的にスタンピードが起こるとB級以下は首都外を、A級以上は城下を守ることが義務付けられてる。
ただしB級以下は任意だけど、A級以上は必ず召集に応じなきゃいけない。
このサラベリスはポルックス公爵領の一部。
領主は現公爵でもあるカストル・カネア・ポルックス。皇族の血筋で現皇帝の弟、皇嗣殿下だ。
山々に囲まれてる地形のせいか、スタンピードが起こればひとたまりもないから。
サラベリスから数km離れた場所にはポルックス公爵領の都市部マカルダがある。かなり大きな街だ。
「おいおいどうした?」
カウンターの奥にギルド職員の部屋があるんだけど、更に階段があってその上にはギルドマスターがいる。
騒ぎを聞きつけたのか他の職員が報告したのか、普段ほとんど見ることがないギルマスが出てきた。
「タラゼド!お主のんびりしてる暇はないぞ!スタンピードが起きるのだぞ!急ぐのだ!!」
「誰かと思えばタウリか。スタンピードとは、随分物騒だな…」
年頃はタウリより少し若そうで、白髪交じりの癖のある肩くらいまでの髪を後ろで一つに纏めてる。
タレ目がちのイケオジ風な男で、背も高くてムキムキの良い筋肉をしてる。
面倒くさそうに頭をポリポリかきながら階段を降りてきた。
意外なことにこの二人は知り合いみたい。
「ギルマス~!スタンピードですって!どうしましょう!?」
カウンターまでやって来たギルマスにサーラが混乱しながら泣きついてる。
「根拠はあるのか?タウリ。緊急要請出しました、でも起きませんでした、じゃ済まされないぜ?」
両腕を組んで試すみたいにタウリに問いかけてる。
威圧してるギルマスはやっぱり相当な実力者だよね。その場にいるだけで重苦しい気迫を感じるよ。
「ふん、スタンピードに根拠などあるものか。現にモンスターが溢れてきておる。それにじゃ、ワシの長年の勘が言っておるのだ!さっさとせんかぁ!!」
「相変わらずだな…そんなんで、要請なんぞ出せるわけないだろぉ!!」
お互いカウンター越しに顔を近づけて、もの凄い覇気で牽制し合ってる。
「わぁ~ん、ギルマスぅ~!やめて下さい~!」
カウンターにいたサーラは、いつの間にかギルマスの後ろで服を引っ張って、喧嘩腰になってる二人を止めようとしてる。
周りの冒険者も野次を飛ばしながら面白そうに見物してるし。
「いいぞ~やれやれー!」
「ギルマス!そのおっさんノシちまえよぉ!」
完全に茶番になってる…。
時間が無いのにこのままじゃ埒が明かない。
やっぱりタウリじゃ駄目だ。
みんなが避難するのに、1分1秒でも無駄にしたくない!
後ろの壁側に控えてた私は風魔法を発生させて、力いっぱい近くあったテーブルを思いっ切り殴って破壊した。
ドガァッッン!!!
もの凄い音を立てて木っ端微塵に粉砕されたテーブル。周りに破片も飛び散ってる。
周りがシーンと静まって、一斉に私に視線が集中してる。
結構イラついていたのもあったから、体中に殺気を纏わせて強めに太字で書いた紙を目の前に出した。
『いそげ、みんなシぬ』
文字を読める人はそれを見て戸惑ってる。
わからない人は他の冒険者に聞いてる。
この時点で冒険者として結構名の通っている私は、間違っても冗談をいうようなキャラじゃないしね。
「シリウス…発端はお前さんか?」
タラゼドの問いかけにコクリと頷いて、出した紙をさらに前へ出した。
黒装束と不気味な仮面て、こういう時に役に立つ。
無言てのはさ、時に話すよりも異様な説得力を発揮するからね。
タウリとタラゼドも牽制するのを止めてこちらを見てる。
「冗談ではないのだタラゼド。お前もわかっているだろう…時間が経てば経つほど救える命が減っていくのだぞ」
タウリがカウンター越しにタラゼドを睨んでる。
このギルマスも前回のスタンピード経験者なんだろうね。二人が知り合いなのも昔色々あったのかもしれない。
タラゼドはふぅ…と息を吐いて、髪をかきあげて天を仰いでる。
「またか!…またっ……」
「急ぐのだ!!」
「うるせぇ!くそタウリっ!!」
焦りかイラつきか、タラゼドはカウンターをバンッと叩いてタウリを睨んでる。
「ギルマス…レプス近郊の山間から、上位種が現れていると報告が…」
カウンターの後ろからギルド職員がコソッとタラゼドに報告をあげてる。
「っ!…あ~、くそっ!!」
カウンターをヒョイッと乗り越えたタラゼドは、大きく息を吸って声を張り上げて話した。
「ここにいる冒険者全員に告ぐ!恐らくだが、これからスタンピードが起こる!!」
シーンとしたギルド内にギルマスの声が響いてる。冒険者達は静かに傍観してる。
「急いで装備やアイテムを整えろ!!スタンピードの範囲やモンスターの種類はわからないが、数百…数千単位での氾濫になるだろう!!」
基本的にスタンピードが起こるとB級以下は首都外を、A級以上は城下を守ることが義務付けられてる。
ただしB級以下は任意だけど、A級以上は必ず召集に応じなきゃいけない。
このサラベリスはポルックス公爵領の一部。
領主は現公爵でもあるカストル・カネア・ポルックス。皇族の血筋で現皇帝の弟、皇嗣殿下だ。
山々に囲まれてる地形のせいか、スタンピードが起こればひとたまりもないから。
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