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子供編 13

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 12歳の冬。

 この日は父と仲の良い友人の一人であるエウロパ伯爵家まで来てた。

 雪こそ降らないけど、やっぱり冬だから気温はそこそこ低い。
 隣の領地なんだけど田舎な上に結構な悪路だし、途中魔物も出てくるからタウリを筆頭に数名の騎士達を引き連れて移動すると、大体馬車で2日くらいはかかる。

 お互いの領地ちょくちょく行ったり来たりしてるから、エウロパ伯爵の子供達ともとても仲が良いんだ。
 伯爵は父よりも年上だから子供達も大きいんだけど、私は3人いる内の末っ子で同い年の女の子、マイア・テス・エウロパとは幼馴染でとっても仲が良い。ま、親友だよね。

 マイアは腰まである夜空のような群青色のストレートヘアーで、小さな顔の中にバランス良く配置された大きい吊り目がちな瞳は海のように鮮やかなエメラルドグリーンで、スラリと伸びた手足にモデルの様な肢体。
 とにかくパッと見ただけで誰でも美少女だと思う女の子。

 私も結構イケてるかな~なんて思ってたけど、当たり前なことに上には上がいる。
 小さい頃に彼女と知り合って以来、あぁ…自分は普通なんだと密かに軌道修正した。
 広大な敷地に建てられたお屋敷の門に馬車を止めて、入り口でエウロパ伯爵が出迎えてくれる。

「やぁエリック、寒い中良く来てくれた!」
「ご無沙汰しております。エウロパ伯爵閣下」
「おいおい、他人行儀はよしてくれ。疲れただろう?」

 丁寧にお辞儀をする父に、ワッハッハと笑いながら話すエウロパ伯爵。
 一応爵位も違うし、だいたいこの挨拶をしてから屋敷に入っていくのが恒例になってる。
 二人は親友のような間柄だけど、うちの父はきちんと弁えてるから礼は欠かさない。その辺も伯爵は気に入ってるみたい。

 伯爵の後ろに控えてお迎えしてくれたマイア。しばらく見ない間に背も伸びて、さらに美しさに磨きがかかってるね。

「カレアも変わらず時が止まったように可憐で美しいな。それに子供達も随分大きくなったなぁ。……おぉミラか、久しいな!お前さんの噂はここまで届いているぞ」

 黙って後ろに控えていた私に、エウロパ伯爵が気づいて声をかけてくれた。
 この気さくな伯爵は偉ぶってなくて私も好きなのだ。
 
「久方ぶりにお目にかかります、エウロパ伯爵閣下」
「随分美しく成長したな~見違えたぞ、ミラ。気にせずいつも通り話してくれ」
「ありがとう~伯父様!お会いしたかった!」

 ガバッと抱きつくと伯爵もポンポンと背を叩いてる。

 実はこの人、母のお兄さんだ。
 要するに私の伯父さんにあたる。ちなみにカレアは私の母で、旧姓はカレア・テスタ・エウロパっていう名だった。

「あらまぁ、ミラったら。兄様もお元気そうで良かったですわ」

 朗らかに微笑み、いつもの調子で話す母。

「寒いのに長く話してすまないな。さぁ中へ入ってくれ」
「お父様、私はミラとお話しててもよろしいですか?」

 待ちきれなくなったのかマイアがエウロパ伯爵に直接お願いしてる。
 エウロパ伯爵も了承してくれて、ようやく私達はマイアの部屋へと向かった。


「ミラ、久しぶりね!会いたかったわっ!」

 女の子らしいピンクを基調とした部屋に案内されて、用意してもらったお菓子とお茶を前にテーブルについた。

「本当だね~!去年は忙しくて行けなかったから、え~っと…丸2年ぶりくらいかな?」

 指を折りながら数える。
 商品開発や工場と商会の管理、書類業務や自分の修行に明け暮れたりと…忙し過ぎてこっちに来る暇が全くなかったから。
 
「そうっ!2年…2年よ!?2年も来てくれないなんてヒドいわ!聞きたい事も話したい事も沢山あるんだから!」
「ごめんごめん、私もマイアに会いたかったけど、自分の時間も無いくらい忙しくてさ~。今は優秀な責任者がいるからお任せしてるよ」

 目の前のテーブルに広げられた美味しいお菓子を頬張りながら、近状を報告してく。
 同い年の同性との会話って楽しいんだけど、自分に若さが足りないせいか若干ついていけない事もある。

 前世と合わせて40年近く生きている私には、なかなかキャピキャピすることが出来ない。
 体は12歳と若いのに、心はすっかりおばちゃんと化してた。


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