上 下
16 / 35

16

しおりを挟む
 


 3日後。

 ティアーナは朝から落ち着かなかった。
 今日はアーサーが訪ねてくる。
 きちんと話さなければという思いと、会える期待で心中がかなり複雑になっていた。

「ティアーナ様、大丈夫ですか?」

 仕事用のワンピースの上にエプロンを付け、髪を結わえながら、ティアーナはソワソワするのを抑えられなかった。

「大丈夫よ。ちょっと緊張しちゃって……」
「本当に、アーサー様にお話するんですか?」
「えぇ、こういう事は早めにはっきりさせないとダメなのよ。先送りにするのは良くないわ」

 椅子に腰かけていたティアーナは、沈んだ表情で視線を落とす。

「ティアーナ様が決めた事なら止めませんが……アーサー様が暴走しないといいんですがね」

 ボソッと呟いた言葉の最後が良く聞こえず、ティアーナは聞き返す。

「え?何か言ったかしら?」
「いえ、独り言です」

 アイシャの言葉はわからずじまいだったが、仕事の時間になったので、二人は店へと向かった。



 仕事中は働く事に夢中になっているから考えなくてすんだが、時間が経つにつれ、お客も減り、とうとうアーサーか訪ねてくる時間になってしまった。

 このまま来ないでほしいと少し思いつつも、アーサー達は約束通りやってきた。

 事前に女将に許可をとっていたので、この前の空いている部屋まで案内した。

「師匠、裏で稽古してもらって良いですか?」

 アイシャが案内の途中で、急にギルバートに訪ねた。

「俺は一応護衛で来ているんだが」
「部屋のすぐ裏ですから大丈夫です!お願いします!少しでも時間がある時に師匠に教えてもらいたいんです!」

 アイシャの言葉にティアーナはビックリする。ここまでアイシャが真剣に稽古を望んでいるなんて、一体どうしたんだろうか。

「あ、アシュリー、あまり無理を言っては……」

「ギル、せっかくだから行ってきなよ。可愛い弟子のお願いだろ?」

 そんな二人の様子を面白そうにアーサーは見ている。
 ギルバートはため息をつき、面倒そうに話す。

「俺は遊びで来ているわけじゃない」
「私も遊びでお願いしている訳ではありません!」

 ギルバートが睨み付けるが、アイシャは怯むことなく一歩も引かない。

「俺とティナで話を進めておくから、二人で稽古しててくれ」

 アーサーはそう言ってティアーナの手を引き、この前の部屋へ入って行った。

「さぁ、師匠!こちらです」
「お前は……」

 部屋の外からアイシャの声が聞こえるが、足音が遠ざかったということは、ギルバートも諦めて着いていったのだろう。




 部屋の中は二人きり。

 ティアーナはこの状況にちょっと危機感を抱いてしまう。
 急に襲うような真似はしないだろうが、密室に二人だけの状況は心臓によろしくない。

「アーサー様、こちらにお座り下さい」

 席に案内するティアーナの背後から、アーサーはすかさず抱きしめる。

「アーサー様!」

 急に抱きしめられ、心臓がおかしいくらいバクバクする。
 
 フードを取ったアーサーは、自分の腕の中にティアーナを閉じこめる。

「あ、あの……!」

 ティアーナの胸の上辺りに腕が回り、強く引き寄せられ、耳元で熱っぽく囁く。

「ティナ…会いたかった……」

「……っ!」

 背後から、耳朶に触れるほど近くで聞こえる声に、身体がビクッと震える。
 その反応に気を良くしたのか、アーサーはわざと耳元で話しだす。

「ティナに会う為に、仕事を全部終わらせて来たんだ……頑張ったから、ご褒美をくれないか」

 そう言って耳輪を軽く噛む。

「ひゃっ……!」

 ピリッとした刺激に思わず声が漏れる。
 アーサーは舌で耳の輪郭を舐めていく。

「やっ……あ……、いけま…せん……っぁ……」

 アーサーはティアーナの制止など、全く気にも止めず耳への愛撫を続けている。
 耳裏から生え際に唇が這い、項を強く吸われる。

「んっ!」

 ピリッとした痛みと共に唇が離され、今度は首筋に移動する。
 
「あっ……」

 首筋にあてられた唇が擽ったくて、ティアーナは首を横に捩りながら竦める。
 同じく痕をつけるように強く吸われ、背筋をゾクゾクした快感がかけぬけていく。

「やぁ…!」

「ティナの匂いがする……良い匂い……甘くて…酔いそう……」

 このままじゃ、まずい。
 アーサーを止めないと。
 今日はアーサーに誤解を解こうと思っていたのに、なんでこんな風になったのか、わからない。


 ティアーナは持てる力を総動員して、アーサーの腕の中から何とか抜け出した。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男友達を家に入れたら催眠術とおもちゃで責められ調教されちゃう話

mian
恋愛
気づいたら両手両足を固定されている。 クリトリスにはローター、膣には20センチ弱はある薄ピンクの鉤型が入っている。 友達だと思ってたのに、催眠術をかけられ体が敏感になって容赦なく何度もイかされる。気づけば彼なしではイけない体に作り変えられる。SM調教物語。

お屋敷メイドと7人の兄弟

とよ
恋愛
【露骨な性的表現を含みます】 【貞操観念はありません】 メイドさん達が昼でも夜でも7人兄弟のお世話をするお話です。

[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。

ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい えーー!! 転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!! ここって、もしかしたら??? 18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界 私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの??? カトリーヌって•••、あの、淫乱の••• マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!! 私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い•••• 異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず! だって[ラノベ]ではそれがお約束! 彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる! カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。 果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか? ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか? そして、彼氏の行方は••• 攻略対象別 オムニバスエロです。 完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。 (攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)   

冷徹&ドSの公爵令息様の性処理メイドをヤらせてもらいます!

天災
恋愛
 冷徹&ドSの公爵令息さまぁ!

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

初めてのパーティプレイで魔導師様と修道士様に昼も夜も教え込まれる話

トリイチ
恋愛
新人魔法使いのエルフ娘、ミア。冒険者が集まる酒場で出会った魔導師ライデットと修道士ゼノスのパーティに誘われ加入することに。 ベテランのふたりに付いていくだけで精いっぱいのミアだったが、夜宿屋で高額の報酬を貰い喜びつつも戸惑う。 自分にはふたりに何のメリットなくも恩も返せてないと。 そんな時ゼノスから告げられる。 「…あるよ。ミアちゃんが俺たちに出来ること――」 pixiv、ムーンライトノベルズ、Fantia(続編有)にも投稿しております。 【https://fantia.jp/fanclubs/501495】

迷い込んだ先で獣人公爵の愛玩動物になりました(R18)

るーろ
恋愛
気がついたら知らない場所にた早川なつほ。異世界人として捕えられ愛玩動物として売られるところを公爵家のエレナ・メルストに買われた。 エレナは兄であるノアへのプレゼンとして_ 発情/甘々?/若干無理矢理/

【R18】突然召喚されて、たくさん吸われました。

茉莉
恋愛
【R18】突然召喚されて巫女姫と呼ばれ、たっぷりと体を弄られてしまうお話。

処理中です...