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現実
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言葉もなく、ただ力強く抱きしめられた。
「――っ」
この先、どうなるのかなんてわからない。
だが、今は……これで良かったのだと安心している。
アリシアもジェイデンの背中に腕を回し、温もりを確かめるようにぎゅっと抱きついた。
◆◇◆
次の日からアリシアの生活は一変した。
まず、ジェイデンがアリシアとの婚約を発表した。
すでに用意されていた真っ白で清楚なドレスを身に着け、いつの間にか招集されていた帝国貴族たちの前で発表された。
「私、ジェイデン=ハミルトンは、アリシア=ランカスターと婚約することをここに誓います」
これに関して皇帝であるロウエンも傍らに立ち、有無を言わせぬよう圧をかけていた。
皇宮の大広間の上段で発表された突然の婚約発表に、集まった貴族たちは驚きを隠せなかった。
「そちらのご令嬢は一体何者ですの?」
「ランカスター……ということは、子爵家の……。確か、ランカスター家の子女は婚姻をしていたのでは?」
「いや、結構前に離縁届を出していたらしいぞ」
「ジェイデン様っ……、ついに結婚されてしまうのっ……!?」
「そう言えば、バァルクハイム子爵家が最近没落したらしいな」
「何かは分からないが、一族郎党処罰されたらしい……」
「その後での、婚約発表……ということは……」
ヒソヒソとざわつく貴族たちを一括するように現れたのはローだった。
「――静粛に」
いつもの軽装ではなく、先々代の皇帝らしい威厳のある正装に、広間に集まった貴族たちは思わず息を呑む。
一言でざわついていた会場がシーン……と静まり返ってしまった。
「皆の者、実に久しいな。わたしが皇位を退いてここに立つのも何年振りか……」
静かに語り出したローがゆっくりと歩き、階段の登ってアリシアの隣に立った。
「わたしが再び顔を出したのは他でもない、ここにいるアリシアの後ろ盾となるためだ」
「「「「「――――ッ!!!!」」」」」
誤魔化すこともなく包み隠さず話すローに、隣りにいたアリシアも驚いている。
「そして彼女は『古の聖者』と呼ばれる非常に尊い存在だ。すでに神殿での検証も済み、聖なる者として属することとなる」
シーンとしていた場内が再びざわめきだす。
「し、しかし……神殿に属するのであれば、大公殿下と婚約はできないのでは……?」
「そうよ。神殿に帰属するなら、神に捧げる身として婚姻は認められないはずよ!」
「しかもなぜ先に婚約発表をしたんだ?」
またもやざわつく会場に今度はジェイデンが口を開いた。
「彼女は私の運命の伴侶なのです。ハミルトン大公家の当主である私が、初めに彼女を見つけ見染ました。聖なる者と判断が成されたのは、その後となります。よって彼女に関しての全ての権限は私にある、ということです。仕方なく神殿に属しますが、あくまで彼女はハミルトン大公家の人間です」
有無を言わせぬ冷たい笑みを浮かべて言い放ったジェイデンの言葉に、会場にいた貴族たちは戦慄を覚えるように口を噤む。
「さぁ、これにて発表は終いだ。聖なる者の誕生と大公家のさらなる繁栄と慶事を祝い、今宵は盛大に催した祝祭を楽しんでくれっ!」
ここで婚約発表はお開きとばかりに、皇帝であるロウエンも三人の前へ立ち、話を締め括った。
とうのアリシアは一言も言葉を発していないが、会場の雰囲気と貴族たちの視線に萎縮していたため、ジェイデンやローが前へ出てくれたことに対し、とても感謝していた。
「――っ」
この先、どうなるのかなんてわからない。
だが、今は……これで良かったのだと安心している。
アリシアもジェイデンの背中に腕を回し、温もりを確かめるようにぎゅっと抱きついた。
◆◇◆
次の日からアリシアの生活は一変した。
まず、ジェイデンがアリシアとの婚約を発表した。
すでに用意されていた真っ白で清楚なドレスを身に着け、いつの間にか招集されていた帝国貴族たちの前で発表された。
「私、ジェイデン=ハミルトンは、アリシア=ランカスターと婚約することをここに誓います」
これに関して皇帝であるロウエンも傍らに立ち、有無を言わせぬよう圧をかけていた。
皇宮の大広間の上段で発表された突然の婚約発表に、集まった貴族たちは驚きを隠せなかった。
「そちらのご令嬢は一体何者ですの?」
「ランカスター……ということは、子爵家の……。確か、ランカスター家の子女は婚姻をしていたのでは?」
「いや、結構前に離縁届を出していたらしいぞ」
「ジェイデン様っ……、ついに結婚されてしまうのっ……!?」
「そう言えば、バァルクハイム子爵家が最近没落したらしいな」
「何かは分からないが、一族郎党処罰されたらしい……」
「その後での、婚約発表……ということは……」
ヒソヒソとざわつく貴族たちを一括するように現れたのはローだった。
「――静粛に」
いつもの軽装ではなく、先々代の皇帝らしい威厳のある正装に、広間に集まった貴族たちは思わず息を呑む。
一言でざわついていた会場がシーン……と静まり返ってしまった。
「皆の者、実に久しいな。わたしが皇位を退いてここに立つのも何年振りか……」
静かに語り出したローがゆっくりと歩き、階段の登ってアリシアの隣に立った。
「わたしが再び顔を出したのは他でもない、ここにいるアリシアの後ろ盾となるためだ」
「「「「「――――ッ!!!!」」」」」
誤魔化すこともなく包み隠さず話すローに、隣りにいたアリシアも驚いている。
「そして彼女は『古の聖者』と呼ばれる非常に尊い存在だ。すでに神殿での検証も済み、聖なる者として属することとなる」
シーンとしていた場内が再びざわめきだす。
「し、しかし……神殿に属するのであれば、大公殿下と婚約はできないのでは……?」
「そうよ。神殿に帰属するなら、神に捧げる身として婚姻は認められないはずよ!」
「しかもなぜ先に婚約発表をしたんだ?」
またもやざわつく会場に今度はジェイデンが口を開いた。
「彼女は私の運命の伴侶なのです。ハミルトン大公家の当主である私が、初めに彼女を見つけ見染ました。聖なる者と判断が成されたのは、その後となります。よって彼女に関しての全ての権限は私にある、ということです。仕方なく神殿に属しますが、あくまで彼女はハミルトン大公家の人間です」
有無を言わせぬ冷たい笑みを浮かべて言い放ったジェイデンの言葉に、会場にいた貴族たちは戦慄を覚えるように口を噤む。
「さぁ、これにて発表は終いだ。聖なる者の誕生と大公家のさらなる繁栄と慶事を祝い、今宵は盛大に催した祝祭を楽しんでくれっ!」
ここで婚約発表はお開きとばかりに、皇帝であるロウエンも三人の前へ立ち、話を締め括った。
とうのアリシアは一言も言葉を発していないが、会場の雰囲気と貴族たちの視線に萎縮していたため、ジェイデンやローが前へ出てくれたことに対し、とても感謝していた。
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