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救い
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「アリシアさんッ!!」
開かれた扉の前には、ジェイデンが息を切らして立っていた。
「大、公……様……」
まさか本当に来てくれると思わなかったアリシアの瞳から、どんどん涙が溢れてくる。
「た、大公……閣下っ!?何故、このような、所に……」
押し倒したアリシアの上に乗り上げていたジムは困惑気味にジェイデンを見ている。
その光景を見たジェイデンは激しい怒りをあらわにする。
「貴様ぁッッ!!」
ジェイデンの瞳孔が見る間にヘビのように細くなり、激情を抑えられないままジムの元へと飛び掛かる。
「うわぁッ!!」
アリシアに乗っていたジムの胸ぐらを掴み、そのまま持ち上げ床へ投げ捨てるように投げた。
「グァッ!!」
物凄い音が響き、ジムは痛みに床でのたうち回っている。
ジェイデンは床に転がったジムの元へツカツカと歩き、また胸ぐらを掴んだ。
「ひぃッ!!お、お許しをッ……こ、こいつは俺の、つ、妻でして……」
その言葉に、ジェイデンの機嫌はさらに悪くなる。
ジェイデンの恐ろしい形相とオーラに、ジムは蒼白になりながら失禁する。
ガタガタと震えるジムの体を引き寄せ、怒りに満ちた顔を近づける。
「あ……あ……ぁ……助けッ……」
「お前が、例の男か……」
「れ、例……の?」
「……アリシアが助けを求めた時、お前はどうしていた?」
「へ?こ、こいつは、助けなど……何か、勘違いを……」
「アリシアを叩いた時、殴った時、詰りながら虐げていた時ッ……お前はどうしていたッ!!」
ジェイデンはアリシアの苦しみを代弁するかのように、ジムの顔に次々と拳をぶつける。
「グッ!がアッ!!」
「彼女を蔑ろにし、平気で暴力を振るい、お前はずっと甘い汁ばかり吸い、長い間ずっとアリシアに苦痛ばかり与えていたッ!!」
「ガっ!………痛ッ……!!助け……て……」
ジェイデンはジムの顔が変形するほど散々殴った後、掴んでいた胸ぐらを高く持ち上げた。
「ぐっ……ぁ……苦しッ……」
首元が完全に締まっているのか、藻掻くようにジムは、持ち上げているジェイデンの手を外そうとしていた。
「痛いか?……苦しいだろう?彼女の苦しみはこんなものじゃないっ……」
どこからそんな力が出ているのか、普段の穏やかなジェイデンとは違い、端正な顔を怒りで歪めてブレることなくジムも持ち上げている。
泡を吹いて真っ青な顔をしているジムを見て、このままではジェイデンがジムを殺してしまうと思い、慌ててジェイデンを止めた。
「大公、様っ……お止め、下さい……」
ベッドから起き上がり、何とか言葉を出していく。
「何故止めるんだ!君に、こんな酷い事をした奴だぞッ!」
口調がいつもと違い荒くなっている。
おそらく竜族の血が表に出ているのだろう。何度も抱かれてきたアリシアはある時からそう思っていた。
竜族は獰猛で力も強かったとジェイデンは言っていた。本能が解放された時だけ、ジェイデンはこうして普段と違う口調になるのだろうと。
「ですが……このままでは、死んでしまいます。私は……平気、です、から……」
引き裂かれた胸元を押さえ、どうにかベッドから立ち上がる。
ジェイデンはアリシアの言葉に従うように、ジムを掴んでいた手を離した。
「ガッ……!」
ドサッと床に落ちたジムは、そのまま気を失ったように倒れている。
「アリシアッ!無事か!?」
ジェイデンは急いでアリシアの元へ近づき、上着を脱いでアリシアの体に掛けた。
「はい。……大丈夫、です」
まだ体の震えが治まらない。
立っている事さえやっとで、あまりの恐怖とショックにそのまま倒れてしまいそうだった。
「大丈夫なわけが……ないでしょう?貴女は、それだけ酷い事をされたんです」
端正な顔を悲痛に歪め、ジェイデンが叩かれた頬にそっと手を添えアリシアの身体を抱きしめた。
「――!」
何度も抱かれたが、こんなふうに抱きしめられるのは初めてだった。
「こんなに震えて……怖かったでしょう!助けるのが遅くなってしまい、申し訳ございませんッ」
その言葉に、アリシアの涙が止まらなくなった。
次々と流れて、ジェイデンの服に染み込んでいく。
「ふっ……う……」
アリシアもジェイデンの体にしがみついた。
怖さと、安堵と、助けられた喜びと……。
まさかジェイデンが助けに来てくれるとは思わなかったので、よけいに嬉しさと安心感が胸を占めていた。
「もう大丈夫です。貴女に害をなす者は、何であろうと許せません!私が全て排除いたします」
しばらく泣いていたアリシアを慰めるように、ジェイデンはアリシアに言葉を掛ける。
「ご安心下さい。私が貴女の側にいますから……」
そう言って体を離し、アリシアの顔に自らの顔を近づける。
開かれた扉の前には、ジェイデンが息を切らして立っていた。
「大、公……様……」
まさか本当に来てくれると思わなかったアリシアの瞳から、どんどん涙が溢れてくる。
「た、大公……閣下っ!?何故、このような、所に……」
押し倒したアリシアの上に乗り上げていたジムは困惑気味にジェイデンを見ている。
その光景を見たジェイデンは激しい怒りをあらわにする。
「貴様ぁッッ!!」
ジェイデンの瞳孔が見る間にヘビのように細くなり、激情を抑えられないままジムの元へと飛び掛かる。
「うわぁッ!!」
アリシアに乗っていたジムの胸ぐらを掴み、そのまま持ち上げ床へ投げ捨てるように投げた。
「グァッ!!」
物凄い音が響き、ジムは痛みに床でのたうち回っている。
ジェイデンは床に転がったジムの元へツカツカと歩き、また胸ぐらを掴んだ。
「ひぃッ!!お、お許しをッ……こ、こいつは俺の、つ、妻でして……」
その言葉に、ジェイデンの機嫌はさらに悪くなる。
ジェイデンの恐ろしい形相とオーラに、ジムは蒼白になりながら失禁する。
ガタガタと震えるジムの体を引き寄せ、怒りに満ちた顔を近づける。
「あ……あ……ぁ……助けッ……」
「お前が、例の男か……」
「れ、例……の?」
「……アリシアが助けを求めた時、お前はどうしていた?」
「へ?こ、こいつは、助けなど……何か、勘違いを……」
「アリシアを叩いた時、殴った時、詰りながら虐げていた時ッ……お前はどうしていたッ!!」
ジェイデンはアリシアの苦しみを代弁するかのように、ジムの顔に次々と拳をぶつける。
「グッ!がアッ!!」
「彼女を蔑ろにし、平気で暴力を振るい、お前はずっと甘い汁ばかり吸い、長い間ずっとアリシアに苦痛ばかり与えていたッ!!」
「ガっ!………痛ッ……!!助け……て……」
ジェイデンはジムの顔が変形するほど散々殴った後、掴んでいた胸ぐらを高く持ち上げた。
「ぐっ……ぁ……苦しッ……」
首元が完全に締まっているのか、藻掻くようにジムは、持ち上げているジェイデンの手を外そうとしていた。
「痛いか?……苦しいだろう?彼女の苦しみはこんなものじゃないっ……」
どこからそんな力が出ているのか、普段の穏やかなジェイデンとは違い、端正な顔を怒りで歪めてブレることなくジムも持ち上げている。
泡を吹いて真っ青な顔をしているジムを見て、このままではジェイデンがジムを殺してしまうと思い、慌ててジェイデンを止めた。
「大公、様っ……お止め、下さい……」
ベッドから起き上がり、何とか言葉を出していく。
「何故止めるんだ!君に、こんな酷い事をした奴だぞッ!」
口調がいつもと違い荒くなっている。
おそらく竜族の血が表に出ているのだろう。何度も抱かれてきたアリシアはある時からそう思っていた。
竜族は獰猛で力も強かったとジェイデンは言っていた。本能が解放された時だけ、ジェイデンはこうして普段と違う口調になるのだろうと。
「ですが……このままでは、死んでしまいます。私は……平気、です、から……」
引き裂かれた胸元を押さえ、どうにかベッドから立ち上がる。
ジェイデンはアリシアの言葉に従うように、ジムを掴んでいた手を離した。
「ガッ……!」
ドサッと床に落ちたジムは、そのまま気を失ったように倒れている。
「アリシアッ!無事か!?」
ジェイデンは急いでアリシアの元へ近づき、上着を脱いでアリシアの体に掛けた。
「はい。……大丈夫、です」
まだ体の震えが治まらない。
立っている事さえやっとで、あまりの恐怖とショックにそのまま倒れてしまいそうだった。
「大丈夫なわけが……ないでしょう?貴女は、それだけ酷い事をされたんです」
端正な顔を悲痛に歪め、ジェイデンが叩かれた頬にそっと手を添えアリシアの身体を抱きしめた。
「――!」
何度も抱かれたが、こんなふうに抱きしめられるのは初めてだった。
「こんなに震えて……怖かったでしょう!助けるのが遅くなってしまい、申し訳ございませんッ」
その言葉に、アリシアの涙が止まらなくなった。
次々と流れて、ジェイデンの服に染み込んでいく。
「ふっ……う……」
アリシアもジェイデンの体にしがみついた。
怖さと、安堵と、助けられた喜びと……。
まさかジェイデンが助けに来てくれるとは思わなかったので、よけいに嬉しさと安心感が胸を占めていた。
「もう大丈夫です。貴女に害をなす者は、何であろうと許せません!私が全て排除いたします」
しばらく泣いていたアリシアを慰めるように、ジェイデンはアリシアに言葉を掛ける。
「ご安心下さい。私が貴女の側にいますから……」
そう言って体を離し、アリシアの顔に自らの顔を近づける。
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