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穏やかな時間
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アリシアがジェイデンに非常に大事に扱われている事、更にはローと親しい仲だと認知されてから、周りの態度が明らかに変わった。
アリシアはローの容態が安定するまで庭園にある小屋で過ごしていた。献身的な介護もあってか、ローは庭園を歩けるまでに回復した。
「アリー、君には心から感謝しているよ」
「違います。私の方がローさんに感謝しているんですよ?ローさんがいなければ、私はここまで穏やかな日々を送ることはできませんでした」
「アリー……」
「他の誰かといるときよりも、ローさんと一緒にいる時間は私にとってとても大切な時間なんです」
ローを支えながら、アリシアは笑顔を見せる。
「ありがとう。……不思議だね。君といると、あれだけ言えなかった感謝の言葉が、自然と出てくるよ」
多くの花々が咲き誇る庭園をゆっくりと二人で歩きながら、アリシアの肩に鳥たちが羽ばたきながら留まる。
「相変わらず、君の体質には驚かされる……。わたしがいても、鳥たちが怖がらなくなった」
ロウエンが驚きながら金色の瞳を見開いている。
「それはローさんがこの子達に認められた証拠ですっ!」
「嬉しいが……、アリーはなぜそんな事がわかるのかい?」
「あっ……、それは、何となくです。そんな気がするというか、言葉で表すにはちょっと難しいですね……」
庭園にあるテーブルセットにローをゆっくり座らせた。
アリシアはティーセットからカップへとお茶を注ぎ、ローの前へお茶を置く。
「ありがとう。良い香りだね。これは、何の茶葉だい?」
「少し温めにしましたから、そのままでも召し上がれます。これはヤツメ草を乾燥させて砕いてから煎じたお茶です。薬効もあって心臓の病気にとても良く効くんです。ぜひローさんに飲んでもらいたくてっ!この子達に取って来てもらいました」
にこりと微笑みながらアリシアはお茶を勧める。
「ヤツメ草っ……!?あの、断崖絶壁にしか生えない幻の薬草なのかいッ?」
カップを手に持ったままローは驚きに満ちた顔でアリシアを見つめた。
「ローさんもご存知でしたか」
「そりゃあ……知っているよ。わたしも医者からその薬草を勧められていてね。だが、なかなか手に入れられるもんじゃない」
驚いたままローはカップの中のお茶を見ている。
「そうみたいですね」
「いや、驚いた。アリーはこんな希少な物をどうやって……」
「この子達に頼みました」
アリシアはそう言って肩に止まっていた鳥たちに笑いかける。鳥たちもアリシアの頬をつんつん突付いている。
「この、鳥たちに……?」
「はい」
「──っ」
アリシアは何でもないように言っているが、もちろん通常では考えられない。
「アリーは体質だと言っていたが、昔からそんな事ができたのかい?」
「……幼い頃はよく木の実とか取って来てもらってましたが、両親が私の体質を他の人に知られる事を恐れて外に出さなくなったんです。大人になって嫁いでからは、全く現れなくなったのですが……不思議ですよね。ここに来て、またこうして集まって来てくれるようになったんです」
「うむ……」
アリシアの言葉にローはまた難しい顔をしている。
「あ、お茶が冷めちゃいますから、ぜひ温かいうちに飲んで下さい。まだ沢山ありますから、毎日淹れにきますね」
「あぁ。ありがとう」
穏やかにお茶の時間が過ぎていった。
ある日のお茶の時間。
ローがアリシアに何気なく話した。
「アリー。明日ここへ来る時でいい。ロウエンと大公を連れてきてくれるかな?」
「え……?皇帝陛下と、大公様……ですか?」
ローがここに誰かを呼ぶ事が事が珍しくて、思わず聞き返した。
皇帝であるロウエンも言っていたが、ローは人との接触を極力断っている。
「少し、話したいことがあってね。大丈夫、わたしが呼んでいたといえばすぐ来るさ」
顔にシワを刻み、にこりと笑うロー。
こうして楽しく過ごしていると忘れてしまいそうになるが、ローは先々代の皇帝だ。現皇帝の祖父でもあるローの呼び出しであれば、ロウエンも飛んでくるだろう。
「わかりました。急用でしたら、今すぐお声を掛けて来ましょうか?」
「いや、急ぎじゃないよ。君とのお茶の時間より優先なことはないからね」
「っ、ローさんたらっ……!」
笑顔でシワを刻み、キザなセリフで笑うローにアリシアはまた顔を赤く染めた。
アリシアはローの容態が安定するまで庭園にある小屋で過ごしていた。献身的な介護もあってか、ローは庭園を歩けるまでに回復した。
「アリー、君には心から感謝しているよ」
「違います。私の方がローさんに感謝しているんですよ?ローさんがいなければ、私はここまで穏やかな日々を送ることはできませんでした」
「アリー……」
「他の誰かといるときよりも、ローさんと一緒にいる時間は私にとってとても大切な時間なんです」
ローを支えながら、アリシアは笑顔を見せる。
「ありがとう。……不思議だね。君といると、あれだけ言えなかった感謝の言葉が、自然と出てくるよ」
多くの花々が咲き誇る庭園をゆっくりと二人で歩きながら、アリシアの肩に鳥たちが羽ばたきながら留まる。
「相変わらず、君の体質には驚かされる……。わたしがいても、鳥たちが怖がらなくなった」
ロウエンが驚きながら金色の瞳を見開いている。
「それはローさんがこの子達に認められた証拠ですっ!」
「嬉しいが……、アリーはなぜそんな事がわかるのかい?」
「あっ……、それは、何となくです。そんな気がするというか、言葉で表すにはちょっと難しいですね……」
庭園にあるテーブルセットにローをゆっくり座らせた。
アリシアはティーセットからカップへとお茶を注ぎ、ローの前へお茶を置く。
「ありがとう。良い香りだね。これは、何の茶葉だい?」
「少し温めにしましたから、そのままでも召し上がれます。これはヤツメ草を乾燥させて砕いてから煎じたお茶です。薬効もあって心臓の病気にとても良く効くんです。ぜひローさんに飲んでもらいたくてっ!この子達に取って来てもらいました」
にこりと微笑みながらアリシアはお茶を勧める。
「ヤツメ草っ……!?あの、断崖絶壁にしか生えない幻の薬草なのかいッ?」
カップを手に持ったままローは驚きに満ちた顔でアリシアを見つめた。
「ローさんもご存知でしたか」
「そりゃあ……知っているよ。わたしも医者からその薬草を勧められていてね。だが、なかなか手に入れられるもんじゃない」
驚いたままローはカップの中のお茶を見ている。
「そうみたいですね」
「いや、驚いた。アリーはこんな希少な物をどうやって……」
「この子達に頼みました」
アリシアはそう言って肩に止まっていた鳥たちに笑いかける。鳥たちもアリシアの頬をつんつん突付いている。
「この、鳥たちに……?」
「はい」
「──っ」
アリシアは何でもないように言っているが、もちろん通常では考えられない。
「アリーは体質だと言っていたが、昔からそんな事ができたのかい?」
「……幼い頃はよく木の実とか取って来てもらってましたが、両親が私の体質を他の人に知られる事を恐れて外に出さなくなったんです。大人になって嫁いでからは、全く現れなくなったのですが……不思議ですよね。ここに来て、またこうして集まって来てくれるようになったんです」
「うむ……」
アリシアの言葉にローはまた難しい顔をしている。
「あ、お茶が冷めちゃいますから、ぜひ温かいうちに飲んで下さい。まだ沢山ありますから、毎日淹れにきますね」
「あぁ。ありがとう」
穏やかにお茶の時間が過ぎていった。
ある日のお茶の時間。
ローがアリシアに何気なく話した。
「アリー。明日ここへ来る時でいい。ロウエンと大公を連れてきてくれるかな?」
「え……?皇帝陛下と、大公様……ですか?」
ローがここに誰かを呼ぶ事が事が珍しくて、思わず聞き返した。
皇帝であるロウエンも言っていたが、ローは人との接触を極力断っている。
「少し、話したいことがあってね。大丈夫、わたしが呼んでいたといえばすぐ来るさ」
顔にシワを刻み、にこりと笑うロー。
こうして楽しく過ごしていると忘れてしまいそうになるが、ローは先々代の皇帝だ。現皇帝の祖父でもあるローの呼び出しであれば、ロウエンも飛んでくるだろう。
「わかりました。急用でしたら、今すぐお声を掛けて来ましょうか?」
「いや、急ぎじゃないよ。君とのお茶の時間より優先なことはないからね」
「っ、ローさんたらっ……!」
笑顔でシワを刻み、キザなセリフで笑うローにアリシアはまた顔を赤く染めた。
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