【R18】アリシアの秘密のお仕事

理解

　だからなのかとアリシアは納得した。
　ジェイデンとロウエンは互いに想い合っているが、同性同士の為、婚姻関係にはなれない。
　さらにジェイデンは血の暴走による苦痛に悩まされている。これを解消する為には、どうしてもアリシアを抱かなくてはならない。

　そういう事なのね…。
　大公様が私を抱く時以外、お屋敷に帰られない理由もこれでわかったわ。お二人がそんな仲だったなんて……。

　ジムのせいで同性同士の仲に偏見を持っていた。
　大公と皇帝。
　世間的にも注目される二人は、こういった形でしか一緒にいることができない。しかも症状の為に、嫌でも定期的にアリシアを抱く必要がある。

　そう思うと、ジェイデンが可哀想に思えてきた。
　これだけ人が羨むほどの多くのものを持ち備えながら、運命の伴侶などという呪いのせいでアリシアを選ばなくてはならない。
　
　結局は、大公様も被害者なのね……。
　男性がお好きな方なのに、私を抱かなくてはならないなんて…、だから今まで娼婦で済ませていたのね……。
　
　全ての物事がこれで繋がった。
　
「さぁ、アリシアさん。貴女も怪我をしてますよね？治療してもらいましょう」

　ロウエンと話していたジェイデンが、アリシアに話し掛けてきた。

「……大した事はないので、治療など必要ありません」
　
　眠っているローの手をそっと離し、布団を掛けた。
　立ち上がって改めて並んでいる二人を見る。

　二人共タイプは違うが、恐ろしい程美しい容姿をしている。こうして並んでいると、とてもお似合いに見える。
　思い返せばアリシアが知る限り、ジェイデンとロウエンは常に共に行動していた。

　自分だけが被害者だと思っていた事が恥ずかしい。
　人は見かけで判断してはいけないのだと反省した。
　
「貴女から血の匂いがします。どこか怪我をされているのでしょう」
「少し、転んで擦りむいただけです。大した事ではありません」
「転んで擦りむいたっ？！大変ですっ、すぐに治療をしましょう」
「私は平気です。このくらい何ともありません。放っておけば治ります」

　怪我をしているアリシアよりもジェイデンの方が慌てている。
　普通の貴族の女性ならば、少しのかすり傷ですら慌てふためき、体に傷が付くことを極端に嫌う。
　しかしアリシアはこういった事に慣れ過ぎていて、なぜジェイデンがここまで慌てているのかわからなかった。

「平気ではありません！少しの怪我でも放っておけば大変な事になります。きちんと治療してもらいましょう！」
「……」
「怪我をした箇所をお見せ下さいっ」
「いえ、結構です…」

　怒ったように言われ、アリシアは戸惑った。
　どうして擦りむいただけで、こんな風に怒って言われるのかわからなかった。
　アリシアが怪我をしても、叩かれても、病気になっても、心配してくれると者などここ何年もいなかった。

　まるで他人事のように不思議そうな顔をしているアリシアを見て、ジェイデンは眉間を揉みながら疲れたように呟く。
　
「ふぅ…、貴女は私が思っているよりもくせ者ですね」
「……そうだと思います」

　アリシアは自分でも自分が変わっていると思っていたので、ジェイデンの意見に素直に賛同した。

「ブッ、ワハハハハハッ…！！」

　ここで後ろでやり取りを聞いていたロウエンが、また腹を抱えて笑い出した。

「陛下…」
「ククククッ…！はっ…、ハハッ、悪い…ジェイよ。お前の伴侶は実に愉快な人だっ！俺をここまで笑わせる女人は、中々おらんぞっ。気に入った！！」
　
　今度はジェイデンは呆れたようにため息をついていた。