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尊き生命
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「アリシアさん、落ち着いて下さい。わかりましたから…その、ローさんという方の所へ案内してもらえますか?」
アリシアはこの時、酷く取り乱していた。
ローが死んでしまうかもしれない危機感と不安に涙も止まらず、誰にも信じてもらえないという心理的要素も加わり、正常な状態ではなかった。
「もう大丈夫です。私が側にいますから」
泣いているアリシアに向かい、安心させるようなジェイデンの笑みに不覚にもドキッとする。
「は…い。あ…、お医者様もご一緒にご同行願えますか?!」
「えぇ、わかりました。すぐに手配致します」
そこでようやくアリシアは安堵の息を吐いた。
何とか立ち上がろうとしたが、ガクッと崩れ落ちそうになる体を、ジェイデンが両手を伸ばし支えてくれる。
「あっ…、申し訳…ございません…」
「謝る必要などありません」
途中まで立ち上がったアリシアの体をジェイデンに支えられ、力の入らない足をどうにか奮い立たせた。
「あの…、もう、平気です。ご案内致しますので、お願い致します…」
「はい」
ジェイデンはアリシアの腰を支え、まだにこやかに微笑んでいる。
意図はわからない。だが今は、この人を頼る他ない。
「陛下、申し訳ございませんが…少し席を外します」
「…俺も、共に向かうとしよう。皇宮に勤める人間が、大変な過ちを犯したようだからなッ…」
ロウエンはアリシアを捕らえようと躍起になっていた侍女達をギロッと睨んでいる。
「ヒィッ!」
「…ッ、あ…ぁ…」
アリシアの頭を押さえつけていた侍女達は、自分達の犯した罪の重さを思い知り、体をガクガクと震わせていた。
「侍女長はいるかッ!皇宮の侍女ともあろうものが、大公家の人間を知らんとはっ!一体どういった教育をしているんだッ!!」
慌てて前へと出てきた侍女長は、青褪めた顔をしながらその場にひれ伏した。
「皇帝陛下っ!此度の不祥事、大変申し訳ございませんっ!!」
「言い訳は聞かんッ!そこにいる者共は牢に入れておけっ!」
「お、仰せのままにっ」
アリシアが急ぎ足で訪れた場所は、ロウエンやジェイデンを驚かせる場所だった。
「ここはっ…!」
「この場所は、まさか…」
庭園の入口で立ち止まった。
ここはまさに皇宮でも決まった人間しか訪れる事の出来ない、立ち入り禁止区域だったからだ。
皇帝であるロウエンでさえ、滅多に足を踏み入れる事はできない。
「おい…、本当に、ここなのか…」
「アリシアさん…、間違いないのですか?」
「えぇ、こちらです!急いで下さいっ!」
焦るアリシアに促されるまま、一行は足早に庭園を進んだ。
「ローさんっ!大丈夫ですかっ!!」
小さな家屋の扉を勢いよく開け、アリシアは我先にとローのいるベッドへ駆け寄った。
「お医者様が来て下さいました!」
先ほどよりは安定しているが、ローはまだ顔色も悪く、意識も戻っていなかった。
「お願い致しますっ!陛下、ローさんを…、ローさんを助けて下さいッ」
跪き、両手を握り締めてロウエンへと懇願した。
「っ…、それはもちろんだ。この方は、何としてでも助けねばならんッ」
ロウエン達と共に同行した医者がローを診察している。
その姿を見て、ようやくアリシアは安堵した。
緊張が解けたからか、ガクッと膝から力が抜け、その場にへたり込んだ。
良かった…、とにかく良かった…。これで、ローさんが助かる…。
宮廷医はこの帝国では一番腕が良い。張り詰めていた緊張が解けたからか、蹲りながらどんどん涙が溢れてきた。
「アリシアさん、あなたも診て頂きましょう」
跪いていたアリシアの直ぐ側で膝を付きながら、ジェイデンが問いかける。
「ローさんが…、最優先です。私は、平気ですから…」
アリシアはゆっくり首を横に振り、膝を抱えて乱れた呼吸を整えていた。
安心感からくる脱力に、目を瞑って気持ちを落ち着かせていた。
「陛下、ご安心下さいっ!上皇陛下の容態は安定いたしました」
「そうかっ、でかしたぞっ!」
「いえ、わたくしの処置よりも先に、どなたかが適切に対応して下さったおかげです。でなければ今頃、上皇陛下は…」
その場にいた人間達が皆、膝を抱えているアリシアに注目した。
まさにアリシアの初期対応が適切だったからこそ、尊い命が救われた。
狭い小屋のような家の中。
立ったままのジェイデンとロウエンは、困惑気味に互いの顔を見合わせた。
「おい、ジェイ。お前の運命の伴侶は…、とんでもない人物かもしれんぞ」
「……えぇ。仰る通りですね…」
自分の事でいっぱいいっぱいなアリシアは、周りの声や視線にはまるで気づいていなかった。
ただ、ローが助かったという事実に、心の底から喜びを噛み締めていた。
アリシアはこの時、酷く取り乱していた。
ローが死んでしまうかもしれない危機感と不安に涙も止まらず、誰にも信じてもらえないという心理的要素も加わり、正常な状態ではなかった。
「もう大丈夫です。私が側にいますから」
泣いているアリシアに向かい、安心させるようなジェイデンの笑みに不覚にもドキッとする。
「は…い。あ…、お医者様もご一緒にご同行願えますか?!」
「えぇ、わかりました。すぐに手配致します」
そこでようやくアリシアは安堵の息を吐いた。
何とか立ち上がろうとしたが、ガクッと崩れ落ちそうになる体を、ジェイデンが両手を伸ばし支えてくれる。
「あっ…、申し訳…ございません…」
「謝る必要などありません」
途中まで立ち上がったアリシアの体をジェイデンに支えられ、力の入らない足をどうにか奮い立たせた。
「あの…、もう、平気です。ご案内致しますので、お願い致します…」
「はい」
ジェイデンはアリシアの腰を支え、まだにこやかに微笑んでいる。
意図はわからない。だが今は、この人を頼る他ない。
「陛下、申し訳ございませんが…少し席を外します」
「…俺も、共に向かうとしよう。皇宮に勤める人間が、大変な過ちを犯したようだからなッ…」
ロウエンはアリシアを捕らえようと躍起になっていた侍女達をギロッと睨んでいる。
「ヒィッ!」
「…ッ、あ…ぁ…」
アリシアの頭を押さえつけていた侍女達は、自分達の犯した罪の重さを思い知り、体をガクガクと震わせていた。
「侍女長はいるかッ!皇宮の侍女ともあろうものが、大公家の人間を知らんとはっ!一体どういった教育をしているんだッ!!」
慌てて前へと出てきた侍女長は、青褪めた顔をしながらその場にひれ伏した。
「皇帝陛下っ!此度の不祥事、大変申し訳ございませんっ!!」
「言い訳は聞かんッ!そこにいる者共は牢に入れておけっ!」
「お、仰せのままにっ」
アリシアが急ぎ足で訪れた場所は、ロウエンやジェイデンを驚かせる場所だった。
「ここはっ…!」
「この場所は、まさか…」
庭園の入口で立ち止まった。
ここはまさに皇宮でも決まった人間しか訪れる事の出来ない、立ち入り禁止区域だったからだ。
皇帝であるロウエンでさえ、滅多に足を踏み入れる事はできない。
「おい…、本当に、ここなのか…」
「アリシアさん…、間違いないのですか?」
「えぇ、こちらです!急いで下さいっ!」
焦るアリシアに促されるまま、一行は足早に庭園を進んだ。
「ローさんっ!大丈夫ですかっ!!」
小さな家屋の扉を勢いよく開け、アリシアは我先にとローのいるベッドへ駆け寄った。
「お医者様が来て下さいました!」
先ほどよりは安定しているが、ローはまだ顔色も悪く、意識も戻っていなかった。
「お願い致しますっ!陛下、ローさんを…、ローさんを助けて下さいッ」
跪き、両手を握り締めてロウエンへと懇願した。
「っ…、それはもちろんだ。この方は、何としてでも助けねばならんッ」
ロウエン達と共に同行した医者がローを診察している。
その姿を見て、ようやくアリシアは安堵した。
緊張が解けたからか、ガクッと膝から力が抜け、その場にへたり込んだ。
良かった…、とにかく良かった…。これで、ローさんが助かる…。
宮廷医はこの帝国では一番腕が良い。張り詰めていた緊張が解けたからか、蹲りながらどんどん涙が溢れてきた。
「アリシアさん、あなたも診て頂きましょう」
跪いていたアリシアの直ぐ側で膝を付きながら、ジェイデンが問いかける。
「ローさんが…、最優先です。私は、平気ですから…」
アリシアはゆっくり首を横に振り、膝を抱えて乱れた呼吸を整えていた。
安心感からくる脱力に、目を瞑って気持ちを落ち着かせていた。
「陛下、ご安心下さいっ!上皇陛下の容態は安定いたしました」
「そうかっ、でかしたぞっ!」
「いえ、わたくしの処置よりも先に、どなたかが適切に対応して下さったおかげです。でなければ今頃、上皇陛下は…」
その場にいた人間達が皆、膝を抱えているアリシアに注目した。
まさにアリシアの初期対応が適切だったからこそ、尊い命が救われた。
狭い小屋のような家の中。
立ったままのジェイデンとロウエンは、困惑気味に互いの顔を見合わせた。
「おい、ジェイ。お前の運命の伴侶は…、とんでもない人物かもしれんぞ」
「……えぇ。仰る通りですね…」
自分の事でいっぱいいっぱいなアリシアは、周りの声や視線にはまるで気づいていなかった。
ただ、ローが助かったという事実に、心の底から喜びを噛み締めていた。
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