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予期せぬ出来事
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息を切らし逃げてきた場所へと戻ってきたが、皇宮内に人はいなかった。
急いで誰かいないかキョロキョロと探す。
誰かっ?!…誰か、いないの!?
ここでさらに最悪な事に、少し前に会った侍女達と鉢合わせてしまった。
「あっ、性懲りもなく、まだここにいましたわっ!!」
「あら嫌だわっ!随分と薄汚れた格好ね!」
「やはり勝手に皇宮に侵入した不届き者ですわっ。衛兵に連れて行ってもらいましょう!」
騒いでいる皇宮の侍女達を見つめた。もう、なりふり構っていられない。ローの一大事に自分の事がどうのなど、どうでも良かった。
「私は、大公家の侍女です。大公様に確認して頂ければ、証明できますっ。それよりお願いしますっ!誰か、お医者様を…お医者様を急いで連れて来て下さい!!」
必死でお願いしているが、端から信じていない侍女達は周りを巻き込むように、騒ぎ出している。
「きゃっ!汚らしいわね!近寄らないでっ!」
「大公家の侍女が、このような小汚い姿をしている訳がないでしょ!」
「侵入者よっ!誰かぁ!!」
どうしようっ、何故こんな事にっ…!
そしてまた物事は最悪な方向にしか進まない。
廊下の奥の方からどこか見覚えのある立派な男性が歩いて来た。
「何事だ…?」
その男性はおそらくジェイデンとそう年は変わらないように見えた。
だが、持ち合わせる雰囲気が普通の男性とは違う。
「「「皇帝陛下にご挨拶申し上げますっ」」」
─っ!こ、皇帝陛下っ…!!
アリシアの顔色がサァーと青くなる。
こんな場所で不祥事など起こしたら、もう極刑になるかもしれない。
ここにはアリシアの知り合いも、庇ってくれる人もいない。
「一体どうしたと言うのだ?俺の宮で騒ぎを起こすとは…」
立っていたアリシアも近くにいた侍女の手で頭を押さえられ、無理やり膝を付かされた。
「痛っ…!」
「陛下のお足元を騒がせてしまい、大変申し訳ございません。ですが、陛下の御身を脅かす不届きな輩が侵入したようです」
一人の侍女が頭を下げているアリシアを見ながら皇帝陛下に進言している。
「ほぅ…、不届き者とな…」
頭を下げているアリシアにはわからないが、皇帝陛下も膝をついているアリシアをじっと見ていた。
しばらく考えた後、ロウエンはアリシアに声を掛ける。
「おい、お前…顔を上げよ」
「…っ」
あまりの恐怖に顔を上げられなかった。
「ちょっとあなたっ、陛下のお言葉が聞けないの!?」
「あっ!」
なかなか頭を上げないアリシアに痺れを切らした侍女が、無理やり髪を掴んで顔を上げさせる。被っていた頭飾りが取れてしまった。
騒ぎを聞きつけたのか、ジェイデンとブルーノが遠く後ろの方からから歩いてきていた。
アリシアはこの二人の事を信用していない。
しかも言い付けを守らなかったのはアリシアだ。そして、ここまで騒ぎを大きくしてしまった。訴えたとしても、おそらくこのまま白を切られ、切り捨てられるだろう。
「皇帝陛下、この者が侵入者です!恐れ多くも大公家の侍女を名乗り、陛下に近づこうとした不届き者にございますっ」
「度々こちらに侵入し、陛下の様子を伺っていたようです!」
近くにいた皇宮の侍女達はここぞとばかりに、ある事ない事をロウエンへと進言していた。
「大公家…」
ロウエンは泥にまみれたお仕着せを着ているアリシアを眺めた。
「皇帝陛下、無礼を承知で申し上げますっ!私はどうなっても構いません…。どんな罰でも受けますから、お医者様を呼んで頂けませんか!お願い致しますっ」
「おい、お前っ!陛下の許しもなく勝手に発言するなっ!」
頭を下げて涙を流すアリシアに、近くいた側近が諫めている。
こうしている間にもローの容態がどうなっているかわからない。アリシアは焦る気持ちを抑えきれない。
「いや、良い。それより…医者とは?」
「ローさんがっ…、庭師のローさんが倒れてしまって!早く診てもらわなければっ、危険な状態なのですっ!!」
「庭師のロー?」
庭師の名前まで把握していないロウエンは、隣にいた側近をちらりと見る。
「陛下、庭師にその様な名の者はおりませんっ」
隣にいた堅物そうな側近はすかさず言葉を返し、アリシアが虚言を言っていると言いたげだった。
「そんな訳はありませんっ!お願い致します!急いで下さい…!!」
涙を流し訴えるアリシアを侵入者だと疑い、誰も信じてくれない。
このままアリシアが投獄されれば、ローが死んでしまう。
「──なんて事をっ!!」
ここでようやく事態に気づいたジェイデンが焦った様子で走ってきた。
「大公様っ、こちらに大公家を名乗る不届き者がっ…」
アリシアの隣で逃げないよう押さえていた侍女が、手柄を自慢するように喜々としてジェイデンに話し掛けている。
「無礼者がっ…!下がりなさいッ!!」
激しく激昂しているジェイデンの剣幕に、侍女は慌ててアリシアから離れた。
「ひっ…!」
ジェイデンはしゃがみ、アリシアの体を支えるように立ち上がらせた。
「アリシアさんっ!アリシアさんッ、大丈夫ですか!?」
てっきり切り捨てられると思っていたアリシアは、意外なジェイデンの行動に驚いていた。
「……私は…、平気です」
「これは一体、どうしたのですか?!」
そこで、アリシアはハッとする。
もうこの際、誰でもいい。ジェイデンに頼むのが嫌などという、自分のちっぽけなプライドなどきっぱりと捨てた。
「大公様…、お願い致します!お医者様をすぐに呼んで下さいませんか!?ローさんが危険なんですっ!お願い、しますっ…」
縋り付くように、アリシアの体を支えていたジェイデンに懇願する。
沢山の人が集まっていたが、その場にアリシアの声だけが響いていた。
急いで誰かいないかキョロキョロと探す。
誰かっ?!…誰か、いないの!?
ここでさらに最悪な事に、少し前に会った侍女達と鉢合わせてしまった。
「あっ、性懲りもなく、まだここにいましたわっ!!」
「あら嫌だわっ!随分と薄汚れた格好ね!」
「やはり勝手に皇宮に侵入した不届き者ですわっ。衛兵に連れて行ってもらいましょう!」
騒いでいる皇宮の侍女達を見つめた。もう、なりふり構っていられない。ローの一大事に自分の事がどうのなど、どうでも良かった。
「私は、大公家の侍女です。大公様に確認して頂ければ、証明できますっ。それよりお願いしますっ!誰か、お医者様を…お医者様を急いで連れて来て下さい!!」
必死でお願いしているが、端から信じていない侍女達は周りを巻き込むように、騒ぎ出している。
「きゃっ!汚らしいわね!近寄らないでっ!」
「大公家の侍女が、このような小汚い姿をしている訳がないでしょ!」
「侵入者よっ!誰かぁ!!」
どうしようっ、何故こんな事にっ…!
そしてまた物事は最悪な方向にしか進まない。
廊下の奥の方からどこか見覚えのある立派な男性が歩いて来た。
「何事だ…?」
その男性はおそらくジェイデンとそう年は変わらないように見えた。
だが、持ち合わせる雰囲気が普通の男性とは違う。
「「「皇帝陛下にご挨拶申し上げますっ」」」
─っ!こ、皇帝陛下っ…!!
アリシアの顔色がサァーと青くなる。
こんな場所で不祥事など起こしたら、もう極刑になるかもしれない。
ここにはアリシアの知り合いも、庇ってくれる人もいない。
「一体どうしたと言うのだ?俺の宮で騒ぎを起こすとは…」
立っていたアリシアも近くにいた侍女の手で頭を押さえられ、無理やり膝を付かされた。
「痛っ…!」
「陛下のお足元を騒がせてしまい、大変申し訳ございません。ですが、陛下の御身を脅かす不届きな輩が侵入したようです」
一人の侍女が頭を下げているアリシアを見ながら皇帝陛下に進言している。
「ほぅ…、不届き者とな…」
頭を下げているアリシアにはわからないが、皇帝陛下も膝をついているアリシアをじっと見ていた。
しばらく考えた後、ロウエンはアリシアに声を掛ける。
「おい、お前…顔を上げよ」
「…っ」
あまりの恐怖に顔を上げられなかった。
「ちょっとあなたっ、陛下のお言葉が聞けないの!?」
「あっ!」
なかなか頭を上げないアリシアに痺れを切らした侍女が、無理やり髪を掴んで顔を上げさせる。被っていた頭飾りが取れてしまった。
騒ぎを聞きつけたのか、ジェイデンとブルーノが遠く後ろの方からから歩いてきていた。
アリシアはこの二人の事を信用していない。
しかも言い付けを守らなかったのはアリシアだ。そして、ここまで騒ぎを大きくしてしまった。訴えたとしても、おそらくこのまま白を切られ、切り捨てられるだろう。
「皇帝陛下、この者が侵入者です!恐れ多くも大公家の侍女を名乗り、陛下に近づこうとした不届き者にございますっ」
「度々こちらに侵入し、陛下の様子を伺っていたようです!」
近くにいた皇宮の侍女達はここぞとばかりに、ある事ない事をロウエンへと進言していた。
「大公家…」
ロウエンは泥にまみれたお仕着せを着ているアリシアを眺めた。
「皇帝陛下、無礼を承知で申し上げますっ!私はどうなっても構いません…。どんな罰でも受けますから、お医者様を呼んで頂けませんか!お願い致しますっ」
「おい、お前っ!陛下の許しもなく勝手に発言するなっ!」
頭を下げて涙を流すアリシアに、近くいた側近が諫めている。
こうしている間にもローの容態がどうなっているかわからない。アリシアは焦る気持ちを抑えきれない。
「いや、良い。それより…医者とは?」
「ローさんがっ…、庭師のローさんが倒れてしまって!早く診てもらわなければっ、危険な状態なのですっ!!」
「庭師のロー?」
庭師の名前まで把握していないロウエンは、隣にいた側近をちらりと見る。
「陛下、庭師にその様な名の者はおりませんっ」
隣にいた堅物そうな側近はすかさず言葉を返し、アリシアが虚言を言っていると言いたげだった。
「そんな訳はありませんっ!お願い致します!急いで下さい…!!」
涙を流し訴えるアリシアを侵入者だと疑い、誰も信じてくれない。
このままアリシアが投獄されれば、ローが死んでしまう。
「──なんて事をっ!!」
ここでようやく事態に気づいたジェイデンが焦った様子で走ってきた。
「大公様っ、こちらに大公家を名乗る不届き者がっ…」
アリシアの隣で逃げないよう押さえていた侍女が、手柄を自慢するように喜々としてジェイデンに話し掛けている。
「無礼者がっ…!下がりなさいッ!!」
激しく激昂しているジェイデンの剣幕に、侍女は慌ててアリシアから離れた。
「ひっ…!」
ジェイデンはしゃがみ、アリシアの体を支えるように立ち上がらせた。
「アリシアさんっ!アリシアさんッ、大丈夫ですか!?」
てっきり切り捨てられると思っていたアリシアは、意外なジェイデンの行動に驚いていた。
「……私は…、平気です」
「これは一体、どうしたのですか?!」
そこで、アリシアはハッとする。
もうこの際、誰でもいい。ジェイデンに頼むのが嫌などという、自分のちっぽけなプライドなどきっぱりと捨てた。
「大公様…、お願い致します!お医者様をすぐに呼んで下さいませんか!?ローさんが危険なんですっ!お願い、しますっ…」
縋り付くように、アリシアの体を支えていたジェイデンに懇願する。
沢山の人が集まっていたが、その場にアリシアの声だけが響いていた。
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