【R-18】冬来たりなば春遠からじ外伝 〜朝まで愛して……、愛したい!

ウリ坊

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この時代にしては珍しい症状なんだよねー

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 城の中もピカピカで凄かった。床もツルツルだし、全てが光り輝いてるって感じ。
 ひとまず聖王様について行って、応接室っぽいゴージャスな部屋に案内された。

「どうぞおかけください」

 そう言われて、とりあえず私はふかふかのソファーに腰掛けた。
 カテリーナとハダルは後ろに回って立って護衛してくれてる。

「早速ですが、確認のためにお聞きいたします。以前にこういった症状が流行った際には、どうやって治療したかという記述は残っていないのですよね?」

 聖王様も腰掛けて、早速私から話を聞いていく。
 話を聞きながら聖王様はちょっと困ったような顔して答えてくれた。

「以前と申しましても数年前とかではなく、すでに何百年も前のお話で……旧世界時代まで遡ります。その頃の文明は現在より遥かに進んでいましたから」

 言葉を濁しながら言ってるし、はっきりとは答えてくれない。

「要するに、どんな症状だったかということしかわからない、ということですね」

 やっぱり私の読みは当たってる。
 てなると、多分私の出番になるんだけど、アルファルドの所に早く戻りたい身としては出来るだけ早期に事を進ませたい。

「おっしゃる通りです。ですので一縷の望みを込めて、その解決方法だと思われる禁書を持ち、シリウス様の元へ出向いたのでございます」 
「そうですか……」

 そりゃあそうだよね。
 治し方がわかってるなら、わざわざ禁書なんて持ち出さないだろうし。
 ただその禁書はまったくの検討違いのもので、解決方法は書かれていない。

「聖下、結論から申し上げますと、これは病ではありません」
「病ではない……?」

 聖王様もまさかそんな風に言われるとは思ってなかったのか、驚いたみたいに私を見てる。

「えぇ。ですのでどんな薬でも効くものはありません。まぁ、あるとしたら万能薬くらいですかね?」

 はぐらかすことはしないで、今度はきちんと答えた。
 ここまで来といてもったいぶっても仕方ないしね。

「お待ちください。シリウス様は禁書になんらかの薬が書かれていたとおっしゃられていましたが……」
「私はきちんと、聖下のお探しの薬かはわからない、と答えました」

 しれっと答えたけど、間違ってないから。
 初めから私はただ薬か解毒薬みたいなものが書かれてるとしか言ってない。

「しかし、万能薬くらいしか効かないとなると……この病の正体は一体……?」

 聖王様も困惑してるのか、私に助けを求めるように視線を向けてる。

「おそらくこの症状の原因は、魔力過多です」
「魔力、かた? と、申しますと?」

 やっぱり初めて聞いた言葉なのか、聖王様もキョトンとしてるよ。

 今のこの時代でこの症状はものすごく稀なんだよね。
 魔法文明が衰退してる今は、ほぼ例はなくて、この神聖国でも発症する人はいなかったんじゃないかな?

「簡単に言ってしまえば、魔力枯渇の逆です。魔法使いや魔法剣士がこの病に罹らないのは、すでに魔法を発現しているからです。近年神聖国ではたくさんの魔法使いが発現してますよね? なんらかの原因で魔力が暴走し、表に出ることなく体の内側に留まってしまっているのです。それが大きな不調の原因ですね」
「なっ……! そのような現象が?!」
「おそらく魔法文明が栄えていたはるか昔にも、同じようなことがあったのでしょう。とくに近年、ジュピター神聖国の魔法使いの発現率が多いと聞いています。元々発現する者たちがで一斉に開花するはずが、魔力を放出できずに体内で暴走してしまい、魔力過多に陥ってしまったと推測されます」

 ビシッと聖王様に向けて持論をかたってみたけど、おおかた間違えないと思う。

「そんなっ! では……シリウス様のおっしゃる通り、万能薬でもない限りは内に留まる魔力を消すことなどできませんよね?」

 聖王様はショックを受けたように肩を落としてる。

「そういうことになりますね。要するにある種の状態異常ですから」
「状態異常……そう、ですね。確かに、私の力でも治すことはできませんでした」
 
 おっ、そうだ。
 聖王様は折れた花を元通りにしたってリタさんが言ってたけど、それもまだ謎に包まれてる。
 でも、その聖王様の魔法をもってしても、やっぱり治せなかったってことは、私の持つ魔法とも違うものってことなのかな?

「万能薬などとても貴重で、大量には生産できません。となると、他の解決方法はないのでは……」

 縋るように視線を向けられて、聖王様に向かってにこりと笑顔を向けた。

「ハハッ、それでは私がわざわざジュピター神聖国まで来た意味がないではありませんか」
「しかし……」
「今こそ私の出番です」
「シリウス様の、ですか?」

 絶望感の漂ってた聖王様にそう声をかけると、聖王様はまたキョトンとしてた。

「えぇ。この城内で同じ症状の人はいませんか?」

 私の問いかけに、すぐに後ろを向いて側近の人に声をかけてる。

「アレクセイ」
「はい。何名か使用人で同じ症状を患っている者はいたかと……」

 神聖国のお城だから魔法使いしかいないと思ってたけど、やっぱりそうじゃない人も働いているんだね。

「では案内してください」
「しかし、シリウス様を病人の元へ案内するわけにはまいりません」

 聖王様模アルファルドとの約束があるし、元々流行り病だと思ってたから仕方ないよね。

「先ほども説明した通り、移る病気ではないのでご心配はいりません」
「そう、でしたね。わかりました」

 わかってもらったところで、とりあえずみんなで移動してる。

 案内された部屋には、掃除係みたいな質素な服のお姉さんがベッドでものすごく苦しそうに横たわってた。
 息もゼェゼェして荒くて、熱もすごく高い。顔は真っ赤で、触った体も全体的にかなり熱かった。

「これは……かなり深刻な状態ですね。体内の魔力が放出されずにとどこおり、何ヶ所かに溜まっています。やはり魔力過多が原因ですね」
「シリウス様は体の内側に溜まっている魔力を視ることができるのですか?!」

 驚いてる聖王様を見て私もハッとする。

 あ、そっか。
 コレって一般的じゃなかったんだ。

 魔力感知とか魔力探索とか極めるとこういうこともできちゃうんだ。
 外に出てる魔力は剣聖級ソードマスタークラスならいけるけど、あくまで魔力を察知するだけの能力だからね。
 今のこの世界の人たちだとできる人っていないんだった。

「私はこう見えて、ギルドが定めた最高位である”剣帝ソードエンペラー“の称号を持ってますから。このくらいは容易です」
 
 とりあえず、なんでもないように答えてみた。
 こういうときは当たり前ですって顔して答えないと、色々と聞かれて面倒だからね。

「これは驚きました……! ここまで魔力の扱いに長けた方を初めて拝見します。さすがは生ける伝説と名高いシリウス様です!」

 なんか適当に誤魔化してみたけど、納得してくれたみたいだね。

 ギルドが勝手に称号与えてくるけど、こういう時にはちょうどいいね。
 なんとなく信憑性もあるし、勝手に納得してくれるから言い訳とか考えなくて案外楽だ。

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感想 2

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みんなの感想(2件)

寝不足な煉瓦

ウリ坊様!お久しぶりでございます!身辺整理をしていたら外伝を見つけた次第であります!そしてありがとうございます☺
前のアカウントはお気に入りなどが多すぎて一度退会して新しくアカウントを作り直しました^^;
アルくんとのイチャイチャを見れて嬉しいですねぇ(ゲス口調)
なんの問題か明かされないまま薬のお話が進んでいますがちゃんと問題なく解決できるといいですね!解決するっていう時点で問題なんですけどね(笑)
また追わせていただきます(`・ω・´)ゞ

2024.05.05 ウリ坊

夢見る山吹(煉瓦)様!
お久しぶりでございます!こちらこそまたまた追っていただきありがとうございます(*^^*)
めちゃくちゃ嬉しいです〜!!

今回は内容よりエロ重視なので、どちらかというと2人のイチャらぶをお楽しみいただければなぁ〜と(笑)
もちろん2人の活躍もちゃんと書く予定ですので、引き続きご覧いただけますと幸いです(^^♪

夢見る山吹(煉瓦)様、感想ありがとうございました!

解除
カナリア
2024.04.20 カナリア

外伝ありがとうございます。
もう本作を何度も読みましたが、また新しい話に出会えて幸せですm(*_ _)m
本当に好きな作品なので書籍にならないかと日々祈ってます(ㅅ´ ˘ `)オネガイ♡
初めて繋がった夜、思いが通じあった夜も読みたいです(* 'ᵕ' )☆
これからも応援してます。

2024.04.21 ウリ坊

カナリア様
感想ありがとうございます!

引き続き読んでもらえて、本編や外伝まで感想いただけて、と〜っても嬉しいです♡(⁠人⁠*⁠´⁠∀⁠`⁠)⁠。⁠*゚⁠+
前々から少しずつ書いていたのですが、抵抗ある方もいると思って投稿は控えていたのですが、少しでも喜んでいただけたなら良かったです。

2人の初めて思いが通じた時の話ですね~
この外伝で番外編などは計画していなかったのですが、もし書けそうなら書いてみようかな、と。
ただ外伝自体もまだ中途半端なので、あまり期待しないで待っていてください(^o^;)

いつも応援していただき、ありがとうございます!
まだ続きますのでよろしくお願いいたします

解除

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