【R-18】冬来たりなば春遠からじ外伝 〜朝まで愛して……、愛したい!

ウリ坊

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強気なアルファルドもめちゃくちゃカッコいい!

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 謁見の間についた時にはアルファルドが正装に着替えてて、今回は玉座に座らないで立ったまま返事をするみたいだね。
 私は黒軍服戦闘服に身を包んで隣に立ってる。
 入ってきたジュピター神聖国の使節団の人たちは、緊張した面持ちで畏まってた。

「…顔を上げてくれ」
 
 アルファルドの言葉が静まり返ってた部屋に響いて、頭を下げてた使節団の人たちが一斉に顔を上げてた。

「公王陛下、ご挨拶を申し上げます。急な訪問とは思えないほどの好待遇に感謝いたします。加えて、神聖国の使用人全員を受け入れていただき、感謝の念に耐えません。ジュピター神聖国を代表して、改めて心からのお礼を申し上げます」

 聖王様直々にお礼を言われたら、アルファルドだって無下にはできない。
 たしかにできる限りの持て成しを、って指示は出したけど、あとはリタさんとベッテルさんにお任せしてたから。
 聞いてる限りでは本心ぽいし、さすがはドラコニス公爵家の臣下だよね。
 二人に任せて正解だったよ。あとで二人にお礼を言わないとね!

「…いや。不便などなかったのなら安心した。…礼などは無用だ」

 アルファルドは淡々と話してるけど、声の感じは悪くない。大国の王様に褒められたんだから、悪い気はしないよね。
 私もアルファルドの隣に並んで、真偽を確かめるように聖王様たちをジッと見据えてる。

 やっぱり側近の人とかは私の目を気にしてるのか、緊張してる感じはしてるけど……それでも目を逸らさないってことは、嘘ではないのかなって感じ。

「早速で申し訳ございませんが、昨日の返事をお聞かせ願えないでしょうか?」

 聖王様も焦ってるのか、緊張感か伝わってくるくらい切実な眼差しをアルファルドに向けてる。
 そりゃそうだよね。自国の民が原因不明の病で次々と倒れてるなら、正常な人間だったら一刻も早く解決したいはずだよ。
 その原因を解決できる人物が目の前にいるなら、すぐにでも一緒に連れて帰りたいってのが本音だよね。
 私も国の頂点に立たなかったら、わからなかったかもしれない。

「…聖王聖下、返事を待たせてしまって、すまなかった。…それで、公妃と話し合った結果だが――」

 言い渋ってるアルファルドに、神聖国の人たちは固唾を呑んで見守ってる。
 謁見の間にはたくさんの人がいるのに、一瞬、シーン……と静まり返ってた。

「…シリウス公妃は、ジュピター神聖国に行くことを決断した」

 静かに発せられたアルファルドの言葉が響いたあとに、神聖国の人たちがワッと湧いてた。
 その喜びようがすごくて、手を取り合ったり抱き合ったり……まだ問題も解決してないのに、かなり大袈裟に喜んでた。

「本当にっ……、よろしいのですか!? まさか、シリウス様が直々に、ジュピター神聖国まで赴いてくださるとはっ!」

 聖王様も予想外だったのか、後ろで歓喜に湧いてる使節団の人たちとは別に驚きの表情を浮かべてた。

「…あぁ。詳しくは公妃から説明しよう。…公妃よ」
「はい」

 アルファルドが隣にいた私に声をかけて、私は返事を返してから口を開いた。

「改めまして。聖王聖下にご挨拶いたします。今回、ジュピター神聖国の内情を知り、非力ではありますが、わたくし、シリウスがジュピター神聖国での現状を解決すべく、持てる力で尽力したいと決断した次第にございます」
「シリウス様っ! ご決断、大変感謝いたします! ジュピター神聖国の代表として、心からのお礼を申し上げます!!」

 両手を握って、まるで神様にでも祈るように、聖王様は咄嗟に膝までついて感謝してる。
 
「…聖下よ、立ち上がってくれ。…これは大公国にとって苦渋の決断だった。…なぜなら、公妃は我が大公国においてもなくてはならない人物だからだ。早期解決はもちろんだが、もし公妃の身に何か起こった際には……わかっておいでだろうか?」

 話してる声がどんどん低くなって、急に態度を変えたアルファルドに、私もびっくりして思わず隣を見ちゃったよ。

「へ、陛下……?」

 正式な場では珍しく、隣にいた私の腰をぐいっと引き寄せてる。
 しかも聖王様とか使節団の人たち牽制してるみたいに、殺気まで混ぜて強い視線を向けてた。

「…こちらも、断腸の思いなんだ。…問題解決に協力はするが……我が寵姫が無事に戻ることが、絶対条件だっ!」

 隣でアルファルド見ながら、私はめちゃくちゃ感動してた。
 だってあのアルファルドが、私の為にこんなに強気な態度を大国の王様相手に取ってくれたんだよ!?
 アルファルドって結構冷静で、国王になってから、とくに国優先みたいな考えが強かったから。
 なりふり構わず私の安全を主張してくれるなんてっ!
 もう、めちゃくちゃ嬉しいっ!!

「公王陛下……苦渋のご決断、大変痛み入ります。お二人の睦まじさは噂でも聞いております。公王陛下のお気持ち、重々承知いたしました。こちらもシリウス様を最大限丁重にお迎えし、何に代えてもお守りすることを誓わせてもらいます」

 膝を着いて胸に手を当てた聖王様が、アルファルドに向かって誠意を見せてくれてる。
 アルファルドも納得したのか、私を引き寄せた腕の力を緩めて緊張を解いてる。

「…その言葉、決して忘れないでくれ」
「ご安心ください。公王陛下に言われるまでもなく、初めからそのつもりです」

 優雅に笑った聖王様に、アルファルドもようやく穏やかな顔つきに戻ってきた。

「…公妃よ。体には十分気を付けろ。…そして、一刻も早い帰還を心待ちにしている」

 やっぱりアルファルドって、すごいなって改めて思った。
 自分には王様になる自信がないって言ってたけど、やっぱり十分すぎるくらい備わってるじゃん!
 アルファルドを見上げて、安心させるようにいつも通りニコッと笑った。
 
「はい。お任せください、陛下! このシリウス、早期に問題を解決し、迅速に陛下の元へと戻ってまいります!」
「…あぁ。真に、願っているぞ」

 そのまま腰にあった手が私の後頭部を押さえて、アルファルドは見上げてた私に顔を近づけて深く唇を合わせてきた。

「っ」

 もう、いい加減慣れたって言いたいけど、やっぱり恥ずかしい……
 嬉しいし、私も行く前にアルファルドと触れ合いたかったから全然構わないんだけど、さすがに公衆面前は未だに羞恥心がわいてくるんだ。
 大公家の臣下は見慣れてるけど、神聖国の使節団の人たちはわっとざわめいてるのが聞こえてる。
 
 唇が離れて、アルファルドの綺麗な顔が切なそうに私を見てて……でも途中でぎゅっと目を瞑ってから、キリッとした顔つきに変わった。
 その表情を見ただけで、アルファルドの気持ちがわかった気がした。

「…では、聖王聖下よ。…公妃をよろしく頼む」
「必ずやシリウス公妃様を、陛下の元へと無事に送り届けます」

 聖王様はにこやかに微笑んで、私とアルファルドに向かって宣言してくれた。

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