【R-18】冬来たりなば春遠からじ外伝 〜朝まで愛して……、愛したい!

ウリ坊

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やっぱオクタンて癒しだなー

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 そんな感じで二人でイチャイチャしてたら、ちょっと離れた扉から急にノックが聞こえた。

「ん……、はぁ……アルファルド、ちょっと待って」

 コンコンて、外から控えめな音がここまで響いてる。
 唇離してアルファルドの胸を押してるけど、アルファルドはまだ目元とか頬にチュッチュッてしてきてる。

「…嫌だ」
「や……っ、でも、ん……ほら、オクタン来てるし」
「…だからなんだ」

 そう言って顔から耳元まで移動して、私の耳朶を軽く噛んでる。

「んっ! ……ぁッ」
 
 私、耳弱いから、こんな風にされるとゾクゾクして力が抜けてきちゃう。
 それをわかってるからか、アルファルドは舌とか唇とか使って執拗に耳を弄ってきてる。

 もうっ、アルファルドってばぁ! なんでいまだにオクタンに対抗意識燃やすかなぁ?
 私もアルファルドとイチャイチャしてたいけど、さすがに今はダメだよ。
 少ししてからまた、コンコン、て小さなノックが聞こえてくる。さすがにオクタンが可哀想になってきて、アルファルドの胸をそっと押した。
 
「ねぇ……、アルファルド。早めにポーション作って部屋行こうよ? ポーションも一回作ればたくさんできるから、そしたらすぐ終わるでしょ?」
「……」
「ジュピター神聖国に行くとしたら、長い期間会えなくなっちゃうだろ? 少しでも長くアルファルドと一緒にいたいんだ」
「………」
「だめ?」

 話し始めより、下から覗き込んだアルファルドの表情は悪くない。
 今度はアルファルドの腰に腕を回して、眉根を下げながらウルウルした表情でアルファルドの返答を待ってる。
 短く息を吐いたアルファルドが、諦めたみたいに顔をすぐ近くまで寄せてる。

「…わかった。…さっさと終わらせるぞ」
「っ! うん!」

 嬉しくなって屈んでたアルファルドのサラサラな頬に両手を添えて、チュッて軽くキスした。

 アルファルドから離れて、ようやく部屋の扉を開けた。

「わっ! あっ…、んと、アート、くん?」
「持たせて悪かったな、オクタン! 研究室まで移動しようぜ?」

 オクタンは公の場では私のこと敬称で呼んでる。でも、私的な場所では今でも昔の呼び名で呼んでくれてるんだ!
 私がそうしてくれってお願いした。人前だとしょうがないけど、普段までそうだとなんだか距離置かれてるみたいで嫌だったから。

「んと、んと……、うん。その……、もう、大丈夫、なの?」
「ん? あぁ、遅い時間まで悪かったな」
「ん、んと…僕は、大丈夫、だよ」
「そっか。じゃあ、さくさく進めていくぞ」
「うん。んと…、がんばろうね!」

 結構夜も更けてるのに、オクタンは寝ないで待っててくれて、昔と変わらないほわっとした笑顔になんだかホッとする。
 私たちのこと一番わかってくれてるオクタンは、こんな状況でも嫌な顔なんて全然しない。
 主従関係とかじゃなくて、やっぱりオクタンは今でも私の友達で、いつまでも変わらずにいてくれて……
 アルファルドとは違う意味で、オクタンのことは大好きなんだ!
 いつもならここでオクタンのふわふわの頭をワシャワシャしてるんだけど、後ろから抱きついてるアルファルドの視線が痛いからとりあえず今はやめとこう。



 魔塔の研究室って呼んでる場所は中心部にある。
 アルファルドは滅多に来ないけど、私は頻繁に来てるから行き慣れてる。

 螺旋状の階段を三人で降りながら、研究室の扉まで辿り着いた。
 
「あっ、お待ちしておりましたわ! 公王さま、シリウス公妃さま!!」
「っ! カテリーナ、お前も来てたのか?」

 扉を開けた先には薬草の匂いが漂ってて、私たちに声を掛けてきたのはカテリーナだった。
 実はカテリーナって、元々アカデミアでの同級生。卒業するまでほとんど接点なんてなかったのに、レグルス様が私たちを糾弾した時にアルファルドの無実を主張してくれた唯一の子だった。
 ポチャッとしたふくよかな体型で、おっとりしてそうな感じなのに、そうじゃない一面もある。
 特に私とアルファルドがイチャイチャしてると、目の色を変えてガン見してくるんだ……
 帝国を離れて、魔塔に志願した理由も私たちをすぐ側で見守りたいから? っていうよくわからない理由だったんだけど。
 まぁ、悪意は感じられないし、実力もあるし……ただ、なんていうか私たちに対する視線が熱くって痛いくらい凄いんだけど、それさえなければ優秀な魔法使いだからね。
 属性はオクタンと同じく水属性。
 あの一件がなければアカデミアの生徒なんて絶対採用しなかったけど、あの場で証言してくれたリスクとか考えたら信用できるのかなって。

「えぇ! シリウス公妃さまに一言お礼を申し上げたくて、こうしてお待ちしておりましたわ! 公妃さまに選んでいただき、ジュピター神聖国までご同行できると聞いた瞬間から舞い上がってしまい、もう天にも昇るような気分でしたものっ! 我が一族最大の名誉と申しますか……たとえ今、命が尽きたとしても、思い残すことは何もございませんわっ!!」

 夜中だっていうのに、カテリーナの熱い思いが伝わってくる力説に、ちょっと重さを感じて苦笑しつつ答えた。
 
「へー……、うん。まぁ……よろしく頼むよ」
「是非ともお任せくださいませっ!! あぁ! なんという行幸なのでしょう!! この世の幸福を全て集めたらこのような気持ちになれますのね!!」
「は、ハハッ……、そっか……」
「……」

 一いえば十返ってくる。そんな感じ……
 一瞬、人選間違えたかなぁ、って考えたけど……この子のこの暑苦しい性格が意外と役に立つんだよね。
 ただ、アルファルドってこういう子がかなり苦手だから、もう早い段階で閉口しちゃってる。

「えっと。じゃ、とりあえず始めようぜ」
「あ……、んと、うん。準備はできてる、よ?」
「ありがとな、オクタン! 助かるよ!」
 
 研究室は広くて、周りには色んな道具が置かれてる。 
 机の上には研究材料とかもたくさんあるし、普段魔塔の魔法使いたちもここでポーション作ってる。
 オクタンが魔法付与する時もここ使ってるし、様々な高純度の宝石がゴロゴロ置かれてる。
 アルファ商団が各国から仕入れてる魔道具とかもあるから、最新鋭の研究室になってる。
 あの狭いサークル部屋とは様変わりして、今は広々した机に器具や設備。出来上がったポーションの置き場に困らないくらい広々とした空間で、理想的な環境が整ってる。
 三人で机の前まで来て、目の前に用意されてる薬草や毒草を手に取った。
 私の隣でオクタンがなんだか嬉しそうに笑ってる。

「へへっ……、んと…、なんだか、久しぶり、だね」
「ハハッ、ホントだな!」
「…おい、始めるぞ」
「うん!」
「んと、はい!」

 周りの状況とか立場とか色んなことが変わっちゃったけど、やっぱり私たちの関係はあの頃から変わらない。

 この先もずっと、このままでいたいな――
 
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