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今も過去も、もちろんこの先も
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自分の部屋に戻った私は、机に向かって書類整理とかこれからの各部門での指示書とか……まぁ、何日不在になるのかわからないから、その間のやらなきゃいけないことを書き出してる。
終わる頃にもう外は真っ暗になってて、サラとメリダが声を掛けてきた。
「奥さま、そろそろお食事のお時間ですが……」
「えぇ、あとは私たちで仕上げておきますから、少し休憩いたしましょう」
「ん? あぁ……もう、こんな時間か……」
集中してたから時間が経つのも忘れてた。
これから魔塔にも行かないと。
ハァ……、やることが多いなぁ……
壁に掛けてある時計を見てから、目の回るような多忙さに頭をガリガリと掻いた。
「とりあえず最優先事項と重要事項に印は押してある。細かい取り決めは各部門の官僚に振り分けといてくれるかな?」
「奥さま、お任せください!」
「私たちで書類整理はしておきますので!」
サラとメリダが嬉しそうに目をキラキラさせて私を見てた。
この子たちって、私に頼られるのがすごく嬉しいみたいなんだよね。
もう秘書みたいな立ち位置だから、専属メイドじゃなくて新しい役職与えようかと迷ってる。
「ありがとう。二人がいてくれて、すごく助かるよ!」
立ち上がってニコッと笑って感謝を伝えたら、二人は手と手を取り合って悲鳴を上げてた。
「キャ~!! 奥さまにっ! 奥さまにありがとうって言ってもらえましたわ!」
「なんて素晴らしい日なのかしらっ!! 奥さまに感謝してもらえるなんてっ!!」
キャアキャア騒いでる二人をはたから見て、思わず苦笑しちゃう。
「は、ハハッ……、良かったね……。いつも、感謝してるよ……?」
もう興奮気味な二人に、私が話してることは聞こえてないな……
この子たちって自分で言うのもなんだけど、ホント心から私の信者だから。
幼い頃に酷い状態で貧民街から救い出してからずっと、私が作った《町》で暮らしてきた。
そこで貴族と同等の環境で英才教育受けてきたから、今こうして私の補佐として頑張ってくれてる。
そのせいもあってか、私に揺るぎない忠誠を誓ってる。
一応、一人立ちできるようになったら、みんなの好きにしていいよって言ってあるんだけど。
どうしてか大公国に来て、私の役に立ちたいって志願してくれて……その気持ちがすごく嬉しかった。そういうつもりで助けてた訳じゃないからさ。
でも、この大公城にいる使用人の子たちはみんなそんな感じなんだ。
だからこそ、私が心底心酔してるアルファルドには無条件で頭が上がらないんだよね。
もう神様みたいな存在だよ。
「さてと……。軽く食事を取ったら、魔塔に向かおうかな……」
ふぅー……、って大きくため息をついた。
ただでさえ目まぐるしい位、毎日忙しい日々を送っているのに、さらに難題を押し付けられちゃったからねぇー。
オクタンも待ってるし、早めにいかないと。
机の上の書類をトントンまとめて、机の隅に置いた。あとはサラとメリダが分けてくれるから、ひとまず私の作業は終わり。
机から立ち上がって部屋を後にした。
◇◆◇
食事を取った後、アルファルドと合流して魔塔に向かった。もう夜も遅いから馬車じゃなくて身体強化でひとっ飛びした。
アルファルドと一緒に辿り着いたのは、リブラの端にある魔塔の最上階のベランダ。
大公城と同じく、ここにも魔法結界が張り巡らされてる。私は無属性魔法があるから、難なく通り抜けてるけど、普通はこんな風に侵入したら魔法結界が発動して大変なことになる。
「ふぅ……、オクタン起きてるかなぁ?」
「…あいつがいなくても、問題ない」
「えぇー! でもさ、またアカデミアの時みたいに三人でポーション作りたいでしょ?」
「…俺は別に、気にしないっ!」
アルファルドは腕組んでぷいっとそっぽ向いちゃって、なんだか不満なご様子。
魔塔の最上階は私の仕事部屋なんだ。一応、私が全師団の総大将だから。
ちなみにこの下の階がオクタン、さらに下の階はアンカが住んでる。この辺りは魔法アカデミアと同じにした。階が上がるごとに階級も上がっていく感じ。
て言っても、私の部屋は机とか棚とか応接セット位しか置いてない。寝具も置こうとしたけど、これにはアルファルドが大反対しちゃって……
「…こんなに大公城と近いのに、ベッドなんて必要ない! ここに泊まることは絶対に許さないっ!!」
って、最後まで認めてもらえなかった。
アルファルドの相変わらずな様子がめちゃくちゃ可愛くって……オクタンに嫉妬してるのが丸わかりで、そんなとこにキュンとしちゃう私も相当だよね……
嬉しくて腰に腕を回して抱きつきながら、下からアルファルドを覗き込んでる。
「もう、アルファルドってば! 私はさ……、もう一度あの頃に戻りたいなぁ……。何も考えずにアルファルドを追いかけて、ドキドキしながらアカデミアで隠れてキスしたり、みんなで隊列組んでワイワイしながら戦ったり……いいことばっかじゃなかったけど、今思えば楽しかったなぁー、って」
まだ一年くらいしか経ってないのに、すごく昔のことみたいに感じる。
あの時を思い出して物思いにふけりながら笑って話してたら、無言でそっぽ向いてたアルファルドが急に私の頬に片手を添えてる。
「ん……? どーした?」
紫と黄金色の神秘的なオッドアイがいつの間にか真っ直ぐ私を見てた。
「…俺は、今のほうが幸せだ」
真剣に射抜かれるような瞳と言われた言葉に、思わずドクンって心臓が大きく跳ねた。
「――っ!」
まさかそんな風に言われると思ってなかったから。「…そうだな」くらいに言われるのかと、軽く話しただけだったのに。
うぅ……、こんなの不意打ちだ……
ほんッとアルファルドって読めないなぁ……まだ心臓がドキドキしてるよ。
「…お前は……?」
やっぱりアルファルドはジッと私を見てて、その瞳がどこか不安そうに揺れてる。
あぁ……、そっか。
たぶん、アルファルドにとっては、あの時が今よりも幸せじゃなかったんだ。
今の状況がさらに幸せだからこそ、同じように私に肯定してほしいんだよね。
「私はアルファルドがいれば、それだけで幸せだよ」
「…前よりか?」
まだアルファルドの瞳は不安に揺れてて、何かを訴えるように私を見てる。
私としてはアルファルドが今の状況に満足してくれてることがすごく嬉しかった。
苦労して建国した甲斐があったなって、今、しみじみ思ってるよ!
「うん。当たり前でしょ! 自分の好きなように物事進められるし、ここには私たちを侵害するものは何もないでしょ? ……でも一番の理由は、お前とずっと一緒にいれるから! だから、今がすっごく幸せなんだ!」
ニコッと笑ってアルファルドに笑顔を向けたら、アルファルドも安心したように目を細めて笑ってくれた。
そしてそのままゆっくりと目を閉じて……今でも見惚れるくらい綺麗な顔が近づいてくる。
「んっ」
しっとり重なった唇が心地良くて、アルファルドの腰に抱きついたまま夢中になって唇を合わせた。
あの頃もたしかに楽しかったけど。
思う存分アルファルドとイチャイチャできる今のほうが、やっぱり私にとっても最高に幸せだな……
終わる頃にもう外は真っ暗になってて、サラとメリダが声を掛けてきた。
「奥さま、そろそろお食事のお時間ですが……」
「えぇ、あとは私たちで仕上げておきますから、少し休憩いたしましょう」
「ん? あぁ……もう、こんな時間か……」
集中してたから時間が経つのも忘れてた。
これから魔塔にも行かないと。
ハァ……、やることが多いなぁ……
壁に掛けてある時計を見てから、目の回るような多忙さに頭をガリガリと掻いた。
「とりあえず最優先事項と重要事項に印は押してある。細かい取り決めは各部門の官僚に振り分けといてくれるかな?」
「奥さま、お任せください!」
「私たちで書類整理はしておきますので!」
サラとメリダが嬉しそうに目をキラキラさせて私を見てた。
この子たちって、私に頼られるのがすごく嬉しいみたいなんだよね。
もう秘書みたいな立ち位置だから、専属メイドじゃなくて新しい役職与えようかと迷ってる。
「ありがとう。二人がいてくれて、すごく助かるよ!」
立ち上がってニコッと笑って感謝を伝えたら、二人は手と手を取り合って悲鳴を上げてた。
「キャ~!! 奥さまにっ! 奥さまにありがとうって言ってもらえましたわ!」
「なんて素晴らしい日なのかしらっ!! 奥さまに感謝してもらえるなんてっ!!」
キャアキャア騒いでる二人をはたから見て、思わず苦笑しちゃう。
「は、ハハッ……、良かったね……。いつも、感謝してるよ……?」
もう興奮気味な二人に、私が話してることは聞こえてないな……
この子たちって自分で言うのもなんだけど、ホント心から私の信者だから。
幼い頃に酷い状態で貧民街から救い出してからずっと、私が作った《町》で暮らしてきた。
そこで貴族と同等の環境で英才教育受けてきたから、今こうして私の補佐として頑張ってくれてる。
そのせいもあってか、私に揺るぎない忠誠を誓ってる。
一応、一人立ちできるようになったら、みんなの好きにしていいよって言ってあるんだけど。
どうしてか大公国に来て、私の役に立ちたいって志願してくれて……その気持ちがすごく嬉しかった。そういうつもりで助けてた訳じゃないからさ。
でも、この大公城にいる使用人の子たちはみんなそんな感じなんだ。
だからこそ、私が心底心酔してるアルファルドには無条件で頭が上がらないんだよね。
もう神様みたいな存在だよ。
「さてと……。軽く食事を取ったら、魔塔に向かおうかな……」
ふぅー……、って大きくため息をついた。
ただでさえ目まぐるしい位、毎日忙しい日々を送っているのに、さらに難題を押し付けられちゃったからねぇー。
オクタンも待ってるし、早めにいかないと。
机の上の書類をトントンまとめて、机の隅に置いた。あとはサラとメリダが分けてくれるから、ひとまず私の作業は終わり。
机から立ち上がって部屋を後にした。
◇◆◇
食事を取った後、アルファルドと合流して魔塔に向かった。もう夜も遅いから馬車じゃなくて身体強化でひとっ飛びした。
アルファルドと一緒に辿り着いたのは、リブラの端にある魔塔の最上階のベランダ。
大公城と同じく、ここにも魔法結界が張り巡らされてる。私は無属性魔法があるから、難なく通り抜けてるけど、普通はこんな風に侵入したら魔法結界が発動して大変なことになる。
「ふぅ……、オクタン起きてるかなぁ?」
「…あいつがいなくても、問題ない」
「えぇー! でもさ、またアカデミアの時みたいに三人でポーション作りたいでしょ?」
「…俺は別に、気にしないっ!」
アルファルドは腕組んでぷいっとそっぽ向いちゃって、なんだか不満なご様子。
魔塔の最上階は私の仕事部屋なんだ。一応、私が全師団の総大将だから。
ちなみにこの下の階がオクタン、さらに下の階はアンカが住んでる。この辺りは魔法アカデミアと同じにした。階が上がるごとに階級も上がっていく感じ。
て言っても、私の部屋は机とか棚とか応接セット位しか置いてない。寝具も置こうとしたけど、これにはアルファルドが大反対しちゃって……
「…こんなに大公城と近いのに、ベッドなんて必要ない! ここに泊まることは絶対に許さないっ!!」
って、最後まで認めてもらえなかった。
アルファルドの相変わらずな様子がめちゃくちゃ可愛くって……オクタンに嫉妬してるのが丸わかりで、そんなとこにキュンとしちゃう私も相当だよね……
嬉しくて腰に腕を回して抱きつきながら、下からアルファルドを覗き込んでる。
「もう、アルファルドってば! 私はさ……、もう一度あの頃に戻りたいなぁ……。何も考えずにアルファルドを追いかけて、ドキドキしながらアカデミアで隠れてキスしたり、みんなで隊列組んでワイワイしながら戦ったり……いいことばっかじゃなかったけど、今思えば楽しかったなぁー、って」
まだ一年くらいしか経ってないのに、すごく昔のことみたいに感じる。
あの時を思い出して物思いにふけりながら笑って話してたら、無言でそっぽ向いてたアルファルドが急に私の頬に片手を添えてる。
「ん……? どーした?」
紫と黄金色の神秘的なオッドアイがいつの間にか真っ直ぐ私を見てた。
「…俺は、今のほうが幸せだ」
真剣に射抜かれるような瞳と言われた言葉に、思わずドクンって心臓が大きく跳ねた。
「――っ!」
まさかそんな風に言われると思ってなかったから。「…そうだな」くらいに言われるのかと、軽く話しただけだったのに。
うぅ……、こんなの不意打ちだ……
ほんッとアルファルドって読めないなぁ……まだ心臓がドキドキしてるよ。
「…お前は……?」
やっぱりアルファルドはジッと私を見てて、その瞳がどこか不安そうに揺れてる。
あぁ……、そっか。
たぶん、アルファルドにとっては、あの時が今よりも幸せじゃなかったんだ。
今の状況がさらに幸せだからこそ、同じように私に肯定してほしいんだよね。
「私はアルファルドがいれば、それだけで幸せだよ」
「…前よりか?」
まだアルファルドの瞳は不安に揺れてて、何かを訴えるように私を見てる。
私としてはアルファルドが今の状況に満足してくれてることがすごく嬉しかった。
苦労して建国した甲斐があったなって、今、しみじみ思ってるよ!
「うん。当たり前でしょ! 自分の好きなように物事進められるし、ここには私たちを侵害するものは何もないでしょ? ……でも一番の理由は、お前とずっと一緒にいれるから! だから、今がすっごく幸せなんだ!」
ニコッと笑ってアルファルドに笑顔を向けたら、アルファルドも安心したように目を細めて笑ってくれた。
そしてそのままゆっくりと目を閉じて……今でも見惚れるくらい綺麗な顔が近づいてくる。
「んっ」
しっとり重なった唇が心地良くて、アルファルドの腰に抱きついたまま夢中になって唇を合わせた。
あの頃もたしかに楽しかったけど。
思う存分アルファルドとイチャイチャできる今のほうが、やっぱり私にとっても最高に幸せだな……
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