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駆け引きは任せといて!
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「…公妃。わかるか?」
隣に座ってたアルファルドが、私の方を窺ってる。
「えぇ。結論から言わせてもらえば、読めます」
顎に手を当てて文献に目を落としてた私は、アルファルドの問いに淡々と答えた。
その返答を聞いて聖王様も目を見張ってる。
「本当ですか?! これがおわかりになるなんて、やはりシリウス様は素晴らしいです! それで、ここにはなんと書かれているのですか!」
繊細でたおやかそうな聖王様としては意外なほど必死に私に問いかけてる。
よっぽど内容を知りたいのか、掛けてたソファーから立ち上がりそうな勢いだよ。
「一つお聞きしてもよろしいですか?」
「はい。なんでしょうか?」
ここは冷静に対応していかないとね。
姿勢を正して真顔で話を切り出した。
「私は考古学者の資格も持っていて、そして引退した今でも冒険者として名が残っております。さらに言えば一国の妃でもあります。……そんな私が、ただ慈善事業でこのような重用事項をお教えすることはできかねます」
ビシッと言い切った私に、すぐ後ろで控えてた側近さんが噛み付くように異論を唱えてる。
「なっ、なんと無礼な!」
アルファルドもバッと横向いて、私に驚きの声をかけてた。
「…公妃っ」
でも私はどっちを向くこともしないで、ただ聖王様の様子を窺ってる。
聖王様もじっと私を見てて、そのあと後ろにいた側近さんに向けて片手を挙げてた。
「アレクセイ、お止めなさい。公王陛下も大丈夫です……たしかにシリウス様の仰る通り。もちろんお礼として、できる限りドラコニス大公国側のご要求をのむつもりでいます。わたしが焦るあまり、言葉を失しておりました。申し訳ございません」
おっ、聖王様がちゃんとした人で良かったよ。ここでゴネられてもそのままお帰りいただくだけだったし。
聖王様には悪いけど、ここで簡単になんでも引き受けてたら、後々かなり面倒なことになりかねないからね。
「お分かりいただけたようで安心いたしました。こちらもご無礼をお許しください」
「いえ、とんでもございません。……それで、こちらにはなんと書かれているのですか?」
改めて姿勢を正してやっぱり焦るように聞いてくる聖王様。
まぁ、そうだよね。これが神聖国の例の件に関係してるかもしれないし。
「結論から申し上げますと……おそらく、なんらかの薬……もしくは解毒薬を記した古代語です。薬草の種類が何種類か書かれており、薬の製造方法が記されています」
禁書を手に取って見てるけど、古いから文字も掠れてるし、かなり乱雑に書かれてる。
私もすらすら話してるように見えるけど、実際こんなことは書かれてなかったりする。
「それは、もしやっ……!」
「これが聖下のお探しの薬かは、わかりかねます」
「っ!」
にこりと笑った私に、聖王様が驚いたように目を見張ってる。
笑ってる私を見たまま深くため息を吐いてて、自身を落ち着かせるように目を閉じてるように見える。
「――シリウス様は……、私の言いたいことが初めからわかっていたようですね。やはり貴女は、神が遣わされた使者なのですか? まるで万物を見通しているかのようなそのお言葉。そして貴女から、常人ではない神聖な気配が感じ取れます」
「ハハッ、さぁ……どうでしょうね? 巷では、私を神とも化け物とも例える輩がいますから、あながち間違えではないのでは?」
聖王様に向かって試すように腕を組んで、フッと笑いながら言ってみた。
もちろんこんな態度は失礼なんだけど、小国だからって舐められたくないし。
ある程度、私っていう存在を脅威に感じてもらわないとね。
隣に座ってたアルファルドが、私の方を窺ってる。
「えぇ。結論から言わせてもらえば、読めます」
顎に手を当てて文献に目を落としてた私は、アルファルドの問いに淡々と答えた。
その返答を聞いて聖王様も目を見張ってる。
「本当ですか?! これがおわかりになるなんて、やはりシリウス様は素晴らしいです! それで、ここにはなんと書かれているのですか!」
繊細でたおやかそうな聖王様としては意外なほど必死に私に問いかけてる。
よっぽど内容を知りたいのか、掛けてたソファーから立ち上がりそうな勢いだよ。
「一つお聞きしてもよろしいですか?」
「はい。なんでしょうか?」
ここは冷静に対応していかないとね。
姿勢を正して真顔で話を切り出した。
「私は考古学者の資格も持っていて、そして引退した今でも冒険者として名が残っております。さらに言えば一国の妃でもあります。……そんな私が、ただ慈善事業でこのような重用事項をお教えすることはできかねます」
ビシッと言い切った私に、すぐ後ろで控えてた側近さんが噛み付くように異論を唱えてる。
「なっ、なんと無礼な!」
アルファルドもバッと横向いて、私に驚きの声をかけてた。
「…公妃っ」
でも私はどっちを向くこともしないで、ただ聖王様の様子を窺ってる。
聖王様もじっと私を見てて、そのあと後ろにいた側近さんに向けて片手を挙げてた。
「アレクセイ、お止めなさい。公王陛下も大丈夫です……たしかにシリウス様の仰る通り。もちろんお礼として、できる限りドラコニス大公国側のご要求をのむつもりでいます。わたしが焦るあまり、言葉を失しておりました。申し訳ございません」
おっ、聖王様がちゃんとした人で良かったよ。ここでゴネられてもそのままお帰りいただくだけだったし。
聖王様には悪いけど、ここで簡単になんでも引き受けてたら、後々かなり面倒なことになりかねないからね。
「お分かりいただけたようで安心いたしました。こちらもご無礼をお許しください」
「いえ、とんでもございません。……それで、こちらにはなんと書かれているのですか?」
改めて姿勢を正してやっぱり焦るように聞いてくる聖王様。
まぁ、そうだよね。これが神聖国の例の件に関係してるかもしれないし。
「結論から申し上げますと……おそらく、なんらかの薬……もしくは解毒薬を記した古代語です。薬草の種類が何種類か書かれており、薬の製造方法が記されています」
禁書を手に取って見てるけど、古いから文字も掠れてるし、かなり乱雑に書かれてる。
私もすらすら話してるように見えるけど、実際こんなことは書かれてなかったりする。
「それは、もしやっ……!」
「これが聖下のお探しの薬かは、わかりかねます」
「っ!」
にこりと笑った私に、聖王様が驚いたように目を見張ってる。
笑ってる私を見たまま深くため息を吐いてて、自身を落ち着かせるように目を閉じてるように見える。
「――シリウス様は……、私の言いたいことが初めからわかっていたようですね。やはり貴女は、神が遣わされた使者なのですか? まるで万物を見通しているかのようなそのお言葉。そして貴女から、常人ではない神聖な気配が感じ取れます」
「ハハッ、さぁ……どうでしょうね? 巷では、私を神とも化け物とも例える輩がいますから、あながち間違えではないのでは?」
聖王様に向かって試すように腕を組んで、フッと笑いながら言ってみた。
もちろんこんな態度は失礼なんだけど、小国だからって舐められたくないし。
ある程度、私っていう存在を脅威に感じてもらわないとね。
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