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旅行編
クロノ商会 3
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ウィルソンの強行を諦めたルーシェは、されるがまま身を委ねている。
暫くして戻ってきたタユラは、二人の様子を見て吃驚している。顔を赤くして、店の中に戻ろうとしたのをルーシェが慌てて引き留めた。
「こ、こちらがジャニールの穀物になりやす」
麻袋に入った穀物は米とは多少違う物の、似たような形状をしている。
タユラに聞いてみると、脱穀方法もあまり変わらず味も淡白らしい。
炊いたものを少し試食させてもらうと、やはりお米だった。
「タユラさん!私が求めていたのはコレです!とりあえず1俵買い取ります!」
ルーシェが意気揚々とお財布を取り出すと、ウィルソンがすかさずそれを止める。
「君が払う必要はない。タユラ、彼女が望む物は全て伯爵邸へ運ぶように」
「ウィル様…ですが……」
「恋人に欲しい物も贈れない、甲斐性の無い男にしないでくれ」
ルーシェの手を取り、指先に口付けを落とす。
目の前で繰り広げられる甘いやり取りに、顔を赤らめクラクラしてくる。
恋人は愚か、貢いでくれる男など全くいなかったルーシェはこんなときにどんな反応をしていいのかわからない。
指先に唇をあてながら、上目遣いで見つめてくるウィルソンの色気にやられ思わず「はい」と返事をしてしまう。
ウィルソンはその答えに満足したのか、微笑むとルーシェの頬に軽いキスをしてくる。
「ウィル様!?」
「このくらい良いだろ?」
顎に手を添え自らの方へ向かされると、吐息の触れるほど間近で告げられる。本当はもっと激しく奪いたいと言わんばかりの挑発的な態度に、ルーシェは身体の奥がゾクリと疼く。
その光景を直ぐ側で見ているタユラは堪ったものではない。
二人のやり取りを邪魔しないようにそっぽを向くべきか、気にせず笑顔でいるべきか激しい葛藤を心の中で繰り広げていた。
「あの…ウィル様…もう少し商品が見たいのですが……」
「ん?そうか……」
そう言って漸く解放してくれた。
ルーシェはホッとしながら隣にいるウィルソンから少し距離を空ける。
胸のドキドキが止まらない。世の中の恋人はこんなに甘いやり取りをしているのだろうか。
心臓が幾つあっても足りなさそうだ。
これ以上のイチャイチャはタユラにも申し訳ないから、気持ちを切り替えて購入する商品を厳選した。
商品を選び終えタユラに大層感謝されながらクロノ商会を後にする。婚約祝いにとお米は無償でわけて貰った。
途中ウィルソンが店ごと買い取ると言い出さないかヒヤヒヤしていたが、ルーシェの事を考えてくれたのか言葉にすることはなかった。
辺りはすっかり暗くなってしまった。街灯が照らすなか、馬車に乗り伯爵邸へ戻る。
隣り合わせで座ったルーシェはウィルソンにお礼を言う。
「ウィル様、ありがとうございます!沢山買って頂いて凄く嬉しいです!」
買って貰った商品を思い浮かべルーシェは自然と笑顔が溢れる。与えられた贈り物ではなく自分が求めていた物だけに、ルーシェは満面の笑みを浮かべる。
「……君のその顔が見れるならどれ程購入しても構わない。これ以上の僥倖はない」
「……っ」
対面で甘く見つめられルーシェはドキッと跳ねる。
「ウィル様、そんなに私を甘やかすと贅沢三昧する悪い女になってしまいますよ!」
キッとウィルソンを見ると、臆することなどまるでない笑みを浮かべる。
「それはそれで見て見たいな。君が私に強請る姿など中々見れるものではない」
脅すつもりで言ったのに、愉しそうに容認されてしまうと何も言えなくなる。
もう何も言うまい。
ルーシェはそう決めて月明かりが照らす街の風景に目を向けた。
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読んで頂き、ありがとうございます!
ウィルソンの強行を諦めたルーシェは、されるがまま身を委ねている。
暫くして戻ってきたタユラは、二人の様子を見て吃驚している。顔を赤くして、店の中に戻ろうとしたのをルーシェが慌てて引き留めた。
「こ、こちらがジャニールの穀物になりやす」
麻袋に入った穀物は米とは多少違う物の、似たような形状をしている。
タユラに聞いてみると、脱穀方法もあまり変わらず味も淡白らしい。
炊いたものを少し試食させてもらうと、やはりお米だった。
「タユラさん!私が求めていたのはコレです!とりあえず1俵買い取ります!」
ルーシェが意気揚々とお財布を取り出すと、ウィルソンがすかさずそれを止める。
「君が払う必要はない。タユラ、彼女が望む物は全て伯爵邸へ運ぶように」
「ウィル様…ですが……」
「恋人に欲しい物も贈れない、甲斐性の無い男にしないでくれ」
ルーシェの手を取り、指先に口付けを落とす。
目の前で繰り広げられる甘いやり取りに、顔を赤らめクラクラしてくる。
恋人は愚か、貢いでくれる男など全くいなかったルーシェはこんなときにどんな反応をしていいのかわからない。
指先に唇をあてながら、上目遣いで見つめてくるウィルソンの色気にやられ思わず「はい」と返事をしてしまう。
ウィルソンはその答えに満足したのか、微笑むとルーシェの頬に軽いキスをしてくる。
「ウィル様!?」
「このくらい良いだろ?」
顎に手を添え自らの方へ向かされると、吐息の触れるほど間近で告げられる。本当はもっと激しく奪いたいと言わんばかりの挑発的な態度に、ルーシェは身体の奥がゾクリと疼く。
その光景を直ぐ側で見ているタユラは堪ったものではない。
二人のやり取りを邪魔しないようにそっぽを向くべきか、気にせず笑顔でいるべきか激しい葛藤を心の中で繰り広げていた。
「あの…ウィル様…もう少し商品が見たいのですが……」
「ん?そうか……」
そう言って漸く解放してくれた。
ルーシェはホッとしながら隣にいるウィルソンから少し距離を空ける。
胸のドキドキが止まらない。世の中の恋人はこんなに甘いやり取りをしているのだろうか。
心臓が幾つあっても足りなさそうだ。
これ以上のイチャイチャはタユラにも申し訳ないから、気持ちを切り替えて購入する商品を厳選した。
商品を選び終えタユラに大層感謝されながらクロノ商会を後にする。婚約祝いにとお米は無償でわけて貰った。
途中ウィルソンが店ごと買い取ると言い出さないかヒヤヒヤしていたが、ルーシェの事を考えてくれたのか言葉にすることはなかった。
辺りはすっかり暗くなってしまった。街灯が照らすなか、馬車に乗り伯爵邸へ戻る。
隣り合わせで座ったルーシェはウィルソンにお礼を言う。
「ウィル様、ありがとうございます!沢山買って頂いて凄く嬉しいです!」
買って貰った商品を思い浮かべルーシェは自然と笑顔が溢れる。与えられた贈り物ではなく自分が求めていた物だけに、ルーシェは満面の笑みを浮かべる。
「……君のその顔が見れるならどれ程購入しても構わない。これ以上の僥倖はない」
「……っ」
対面で甘く見つめられルーシェはドキッと跳ねる。
「ウィル様、そんなに私を甘やかすと贅沢三昧する悪い女になってしまいますよ!」
キッとウィルソンを見ると、臆することなどまるでない笑みを浮かべる。
「それはそれで見て見たいな。君が私に強請る姿など中々見れるものではない」
脅すつもりで言ったのに、愉しそうに容認されてしまうと何も言えなくなる。
もう何も言うまい。
ルーシェはそう決めて月明かりが照らす街の風景に目を向けた。
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