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番外編
お約束?
しおりを挟むルーシェとウィルソンが婚約して間もなく、結婚式のドレスを作る為、お屋敷に工房のデザイナーの人に来てもらい、ルーシェのドレスを決めていた。
ルーシェは前世も合わせて初めての結婚に今から緊張し、反面とても嬉しくもあった。
「クロウド様、ご婚約者様。婚姻の場合はお相手の色のドレスを着るのが一般的なのですが、何かご希望等はございますか?」
工房のマダムがニコニコしながら話す。
「私ではなく、彼女に聞いてくれ。ルーの望み通りにする予定だ」
応接室に通され、持ち寄られた沢山のデザインやドレスの型も見せてもらう。
何人かの手伝いの人達も周りに控えている。
対面のソファーに座りながら、机には所狭しとデザイン画が並べなれている。
ルーシェの隣に座ったウィルソンは、そう言いながらルーシェの腰に手を回し、甘く見つめる。
その様子に周りの人達も頬を赤く染めている。
「まぁまぁ!噂はかねがね伺っておりましたが、違わぬ程のご寵愛ぶりでございますね!」
マダムはニコニコしながら、その様子を微笑ましそうに眺めている。
ルーシェは恥ずかしくてしょうがない。
人目のある場所でこのように接せられるのは、かなり気恥ずかしい。
「ルー、君の希望はあるか?」
「は、はい。出来ればウェディングドレスの色は、『白』にして欲しいのですが………」
その言葉に周りの人達は意外そうに驚いている。
この世界では大体が相手の瞳、もしくは髪色のドレスを着るのが慣例なのだ。
ウィルソンも少し意外そうにこちらを見ていた。
「『白』…か、珍しいな」
「そうでございますね、『白』はあまり着られていないのですが…」
マダムも驚いたようにルーシェを見ている。てっきり紫色のドレスにすると思っていたのだろう。
「えっとですね……私の、前の故郷では『白』が主流でして………」
それを聞いてウィルソンが反応する。
「前とは、異世界のことか?」
「……はい」
ウィルソンは早々理解してくれた。
マダム達は良くわからない顔をしていたが、とりあえず話を聞いてくれている。
「『白』は穢れのない清らかな純潔の色で、そのまっさらな何者にも染められていない色あいから、花嫁が着ることで『貴方の色に染まります』という意味も兼ねているんです」
ちょっと言ってて恥ずかしかったが、結婚式のドレスは前世のこともあり、絶対『白』にしたかった。
前世では憧れはあったがとてもじゃないけど、無理だった。
今世でも半ば諦めていて、結婚なんて本当に夢のまた夢だったから。
だからウィルソンには悪いが、そこは譲れなかった。
ルーシェが自分の想いを伝えると、何故か周りはシーンと静まってしまった。
(え?え?……何かおかしなこと言っちゃったかな?)
思わずキョロキョロしてしまう。
マダムがぷるぷると震え、顔を真っ赤にしている。
もしかして、怒らせてしまったのだろうか。
ルーシェはその様子に焦ってしまう。
「なんて…なんて素晴らしい考えなんでしょう!!」
「へ…?」
いきなり立ち上がったマダムは目をキラキラと輝かせ、手を握りしめて興奮している。
「もう『白』しかないですわ!これからの流行色は『白』よ!皆様、聞きまして!全面的にこの考えを広めて行きましょう!!」
「「「はい!!」」」
周りが騒然とし始め、ルーシェは呆気に取られてしまう。
「あ、あの……?」
ルーシェがビックリして、ウィルソンに助けを求めようと横を見る。
ウィルソンは立ち上がりルーシェを抱えあげた。
「なっ!?ウィル様?!」
ビックリしてウィルソンの首にしがみつく。
「悪いがマダム。今日はこれで失礼する」
「え?えぇ?」
まだほとんどドレスのデザインを決めていないのだが。
思わずウィルソンを凝視してしまう。
ウィルソンはルーシェを至近距離で見つめ、
「君がどれ程私に染まっているか、確かめたくなった……」
色気を帯びた熱っぽい瞳でルーシェを甘く流し見る。
「「「きゃあぁ~~!!!」」」
若い手伝いの女性達が、手を取り合って声を上げる。
ルーシェは瞬時に真っ赤に染まった。
「な、な、何を~!!」
「あらあらまあまあ~!本っ当にお熱いこと!我々のことはお気に為さらず、存分に愛を確かめ合って下さいませ!!」
(どうしてこうなるの!?)
「ちょ、ちょっと待ってぇ~~!!」
ウィルソンはそのまま、ルーシェを抱え別室へと消えて行った。
◇
その後、ドレスは白に決まり、差し色の装飾品が紫色になったのだった。
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