【R18】ルーシェの苦悩 ~貧乏男爵令嬢は乙女ゲームに気付かない!?~

ウリ坊

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番外編

お約束?

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 ルーシェとウィルソンが婚約して間もなく、結婚式のドレスを作る為、お屋敷に工房のデザイナーの人に来てもらい、ルーシェのドレスを決めていた。

 ルーシェは前世も合わせて初めての結婚に今から緊張し、反面とても嬉しくもあった。

「クロウド様、ご婚約者様。婚姻の場合はお相手の色のドレスを着るのが一般的なのですが、何かご希望等はございますか?」

 工房のマダムがニコニコしながら話す。

「私ではなく、彼女に聞いてくれ。ルーの望み通りにする予定だ」

 応接室に通され、持ち寄られた沢山のデザインやドレスの型も見せてもらう。

 何人かの手伝いの人達も周りに控えている。

 対面のソファーに座りながら、机には所狭しとデザイン画が並べなれている。

 ルーシェの隣に座ったウィルソンは、そう言いながらルーシェの腰に手を回し、甘く見つめる。

 その様子に周りの人達も頬を赤く染めている。

「まぁまぁ!噂はかねがね伺っておりましたが、違わぬ程のご寵愛ぶりでございますね!」

 マダムはニコニコしながら、その様子を微笑ましそうに眺めている。

 ルーシェは恥ずかしくてしょうがない。
 人目のある場所でこのように接せられるのは、かなり気恥ずかしい。

「ルー、君の希望はあるか?」

「は、はい。出来ればウェディングドレスの色は、『白』にして欲しいのですが………」

 その言葉に周りの人達は意外そうに驚いている。
 この世界では大体が相手の瞳、もしくは髪色のドレスを着るのが慣例なのだ。

 ウィルソンも少し意外そうにこちらを見ていた。

「『白』…か、珍しいな」

「そうでございますね、『白』はあまり着られていないのですが…」

 マダムも驚いたようにルーシェを見ている。てっきり紫色のドレスにすると思っていたのだろう。

「えっとですね……私の、前の故郷では『白』が主流でして………」

 それを聞いてウィルソンが反応する。

「前とは、異世界過去のことか?」

「……はい」

 ウィルソンは早々理解してくれた。

 マダム達は良くわからない顔をしていたが、とりあえず話を聞いてくれている。


「『白』は穢れのない清らかな純潔の色で、そのまっさらな何者にも染められていない色あいから、花嫁が着ることで『貴方の色に染まります』という意味も兼ねているんです」


 ちょっと言ってて恥ずかしかったが、結婚式のドレスは前世のこともあり、絶対『白』にしたかった。

 前世過去では憧れはあったがとてもじゃないけど、無理だった。
 今世でも半ば諦めていて、結婚なんて本当に夢のまた夢だったから。

 だからウィルソンには悪いが、そこは譲れなかった。

 ルーシェが自分の想いを伝えると、何故か周りはシーンと静まってしまった。

(え?え?……何かおかしなこと言っちゃったかな?)

 思わずキョロキョロしてしまう。

 マダムがぷるぷると震え、顔を真っ赤にしている。
 もしかして、怒らせてしまったのだろうか。
 ルーシェはその様子に焦ってしまう。

「なんて…なんて素晴らしい考えなんでしょう!!」

「へ…?」

 いきなり立ち上がったマダムは目をキラキラと輝かせ、手を握りしめて興奮している。

「もう『白』しかないですわ!これからの流行色は『白』よ!皆様、聞きまして!全面的にこの考えを広めて行きましょう!!」

「「「はい!!」」」

 周りが騒然とし始め、ルーシェは呆気に取られてしまう。

「あ、あの……?」

 ルーシェがビックリして、ウィルソンに助けを求めようと横を見る。

 ウィルソンは立ち上がりルーシェを抱えあげた。

「なっ!?ウィル様?!」

 ビックリしてウィルソンの首にしがみつく。
 
「悪いがマダム。今日はこれで失礼する」
「え?えぇ?」

 まだほとんどドレスのデザインを決めていないのだが。

 思わずウィルソンを凝視してしまう。
 ウィルソンはルーシェを至近距離で見つめ、

「君がどれ程私に染まっているか、確かめたくなった……」

 色気を帯びた熱っぽい瞳でルーシェを甘く流し見る。

「「「きゃあぁ~~!!!」」」

 若い手伝いの女性達が、手を取り合って声を上げる。
 ルーシェは瞬時に真っ赤に染まった。

「な、な、何を~!!」

「あらあらまあまあ~!本っ当にお熱いこと!我々のことはお気に為さらず、存分に愛を確かめ合って下さいませ!!」

(どうしてこうなるの!?)

「ちょ、ちょっと待ってぇ~~!!」

 ウィルソンはそのまま、ルーシェを抱え別室へと消えて行った。



 ◇




 その後、ドレスは白に決まり、差し色の装飾品が紫色になったのだった。

 








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