66 / 113
続編
隠しキャラ 3 ※※
しおりを挟む終わらない攻防線に終止符を打ったのは、やはりクラウスだった。
登城の時間ギリギリになってしまったので、強引に幕引きしてくれた。
ルーシェは気になることがあったので、自室に籠っていた。
そこでエミリオから譲ってもらった、クレアのメモを見ていた。
(あ、あった。ライオル皇子……えーっと、隠しキャラでウィル様を攻略するとルートが開く)
ウィルソン自体の攻略法が難しいらしく、ライオルが現れる確率はかなり低いらしい。
しかもライオルの攻略難易度もかなり高いようだ。
『アマンドリアの第三皇子。食にかなりうるさい。近隣諸国に赴いては珍しい料理を堪能している。
後継者争いからは既に退いて、気儘に暮らしている。自由奔放で欲しいものは必ず手に入れる自信家』
ルーシェの読んでいく手が震えていく。
ダラダラと嫌な汗が流れ、青ざめてきた。
(えーっと…この通りだと、私ってまずい?いやでも、私はウィル様の婚約者だし。別にあの皇子を攻略するわけでもないし……ライオル皇子も、別に私が好きとかじゃないから、関係ないよね?)
嫌な予感が止まらないが、極力関わらなければ大丈夫だと自分に言い聞かせた。
あれから何日か経つが、何故かたまに来てはライオルにまとわり着かれている。
もうすっかり治っているのだが、足を怪我させたからと、何かにつけて側に居ようと近づいてくるのだ。
「なぁ、ルーシェ。この菓子は何だ?」
「こちらはチーズケーキと申します」
今日は休日なのだが、こうしてルーシェがお菓子を作っていると、なぜか調理場に顔を出すのだ。
調理台でボールを器用に混ぜている様子を、反対側の台に肘をつきながら、興味深げに眺めている。
「ルー、ライルは構わなくていい。私のために作ってくれ」
そしてまたなぜかわからないが、作っている後ろから牽制するようにお腹に腕を回し、ウィルソンが抱きしめてくる。
実に作りにくいし、とても恥ずかしい。
前世も含めた今までの人生に、一度もなかったモテ期でもやってきたのだろうか。
まあ、この二人は元々友人なだけあり、仲が悪くなった訳ではないからそこはホッとしている。
(何だろう……これも乙女ゲームの影響なの?ウィル様を攻略したから?というか攻略した覚えなんて、全くないんだけど……ホント勘弁してほしい)
こんな美男子2人に囲まれるのは、とても心臓に悪い。ルーシェは作りながら深いため息をついた。
焼けたチーズケーキを良く冷やして、おやつにみんなで食べることに。
テーブルに座り、紅茶と共に出されたケーキを口にしていく。
「っ!うまい!しっとりしてるのに濃厚で、チーズが甘いのにこんなに旨くなるのか!?」
ライオルは気に入ってくれたようで、気持ちいいくらいパクパクと食べてくれている。
こうしてみると年相応の少年という感じだ。その様子にクスリと笑ってしまう。
「気に入って貰えたようで良かったです」
「やっぱり欲しいな……なぁ、俺と一緒に来ないか?」
「……大変申し訳ございませんが、私は隣国に行くつもりはございません」
皇族相手に言って良い言葉ではないが、はっきりした態度を取らないと付け入られてしまう。
「俺と一緒に行けば贅沢三昧出来るぞ」
「私は身の丈に合った生活で十分幸せでございます。今でさえ十分贅沢なんです。それ以上は望みません」
「お前は本当に変わったやつだな」
変わり者扱いするライオルは、何が楽しいのか実に面白そうに笑っている。
自分の料理がこれ程まで気に入ってもらえるのは嬉しいが、あまり勘違いさせる様な物言いは止めてもらいたい。
変に口説かれているようで、背中がむずむずしてしまう。
「ライオル殿下。はっきりと申し上げますが、私はウィル様のお側を離れるようなことは致しません。私の望みは唯一それのみでございます」
「ルー…」
「まぁ、簡単に手に入るとは思ってないからな。ウィルより俺が良いと思わせればいいんだろう?」
「いくら言ってこられようと意味はありません。早々に諦めて頂いた方が宜しいかと思われます」
「くくっ、従順な女より余程面白い。まだ時間はあるしな。じっくり口説くことにしよう」
ケーキを食べながら、またまた愉しそうに話すライオル。
「ライル…いい加減にしてくれ。私はルーを誰にも渡しはしない」
ルーシェを膝の上に乗せ、やり取りを黙って聞いていたウィルソンは、ケーキを口に運びながら淡々と話す。
「あの……ウィル様、そろそろ降ろして頂いても宜しいですか………」
しばらく我慢してあのやり取りをしていたが、さすがに恥ずかしくなってしまう。
ウィルソンは気にすることなく、ルーシェの口にケーキを運ぶ。
口元にケーキを突きつけられ、仕方なく口を開き、ケーキをパクっと食べる。
その様子を確認して、ルーシェの頭を抑え自分の方へ引き寄せる。
深く口付けられ、抵抗する間もなく口の中のケーキをそのまま舌を使って持っていかれてしまう。
「んっ!……っん、っふぅ!」
唇が離され、口元に両手を当てながら、羞恥に顔を真っ赤にしてぷるぷると震えてしまう。
ウィルソンは満足そうに咀嚼すると、口の端を舐めあげ、熱っぽく囁く。
「君も、君のケーキもとても甘いな……」
「ウィル様!」
(一番甘いのは貴方です!!)
それを、見ていたライオルがテーブルに肘をつき顔を乗せながら、口を挟む。
「ウィルがここまで色恋に狂うとは……お前は稀代の悪女だな」
半ば呆れたように言われるが、ルーシェはそれどころではない。
人前で見せつけるようにキスされるだなんて信じられない。
(もう、本当に勘弁して!!)
結局ライオルはなんだかんだ公務の関係で、次の日には国に帰ることに。
本当はもっと早くに戻る予定だったのだが、ライオルがごねていたらしい。
もちろんルーシェはまたお土産のお菓子を作って渡したが、最後までしつこい程一緒に帰るぞと言われ、それを全力で拒否した。
「ルーシェよ、俺は欲しいと思ったものは必ず手に入れる主義だ。簡単には諦めないからな」
馬車に乗る前に、見惚れる様な笑顔で恐ろしい言葉を残し、ルーシェの手を強引に引くと頬に軽くキスをする。
「なっ!?」
顔を真っ赤にして触れた頬を手で押さえる。
そして、また来ると言って去って行った。
凍えそうな冷ややかな笑みで見送るウィルソン。
その隣でルーシェは固まりながら、かなりの居心地の悪さを感じていた。
その日の夜、ウィルソンにしつこい程攻められることに。
「あっ!…ん、ぁ……ウィル…様ぁ、も…許…して……」
「ルー…まだだ……」
ウィルソンのベッドの上で、もう何度達かされたかわからない。
何度も膣内で出され、また激しく揺さぶられ、過度に与えられる快楽で、頭がおかしくなりそうだ。
ベッドで抱き合った状態でウィルソンの剛直を受け入れている。
「あぁ!……ふぅ……、ぁ……」
達きすぎてツラい。
それなのにまたこうして奥を突かれると、身体に熱が燻ってくる。
「君は…私のものだ……」
耳元で欲望を含んだ声で、囁かれる。
ズチュズチュとイヤらしい音が室内に響く。
ウィルソンの動きが早くなり、ルーシェを深みへと追いたてる。
「あん!あっ!また…イッ…あっ、もぅ、やだぁ……」
「……っ、イクぞ」
ルーシェの瞳から涙が溢れる。ウィルソンにギュッとしがみつきながら、何度目かもわからない絶頂に達する。
「はぁう!あっ………はぁっ……」
力なくルーシェの腕がベッドに落ちる。
ウィルソンも膣内に熱い飛沫を放つと、荒い息をつきながら自身をナカから抜き、ルーシェを腕の中にギュッと強く抱きしめる。
「ルー…愛してる……誰にも、渡さない」
激しいまでの独占欲に、少し怖くなりながらも、心を満たすような充足感でいっぱいになる。
ルーシェはウィルソンの頬に手を添え、ソッと唇を重ねる。
「……っ」
「あ…なた…だけ……愛…して…ます」
散々喘がされ、声があまり出ないが、伝わっただろうか。
その言葉がウィルソン自身の抑えきれない劣情に、歯止めをかける。
「無理をさせて、すまない………」
今度は優しく抱きしめられる。
ルーシェは首を横に振り、瞳を閉じる。
その触れられる肌の心地良さに意識を手放した。
数日後。
ライオルから隣国に遊びに来い、と手紙が届く。
ルーシェと一緒に手紙を読んでいたウィルソンの機嫌が一気に悪くなる。
また一波乱ありそうな予感がするのは気のせいだろうか。
ルーシェの苦悩はまだまだ続きそうだ。
****************************
読んでいただき、ありがとうございました!
22
お気に入りに追加
1,588
あなたにおすすめの小説

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる