【R18】ルーシェの苦悩 ~貧乏男爵令嬢は乙女ゲームに気付かない!?~

ウリ坊

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続編

隠しキャラ 3 ※※

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 終わらない攻防線に終止符を打ったのは、やはりクラウスだった。

 登城の時間ギリギリになってしまったので、強引に幕引きしてくれた。

 ルーシェは気になることがあったので、自室に籠っていた。
 そこでエミリオから譲ってもらった、クレアのメモを見ていた。

(あ、あった。ライオル皇子……えーっと、隠しキャラでウィル様を攻略するとルートが開く)
 
 ウィルソン自体の攻略法が難しいらしく、ライオルが現れる確率はかなり低いらしい。
 しかもライオルの攻略難易度もかなり高いようだ。

『アマンドリアの第三皇子。食にかなりうるさい。近隣諸国に赴いては珍しい料理を堪能している。
 後継者争いからは既に退いて、気儘に暮らしている。自由奔放で欲しいものは必ず手に入れる自信家』

 ルーシェの読んでいく手が震えていく。
 ダラダラと嫌な汗が流れ、青ざめてきた。


(えーっと…この通りだと、私ってまずい?いやでも、私はウィル様の婚約者だし。別にあの皇子を攻略するわけでもないし……ライオル皇子も、別に私が好きとかじゃないから、関係ないよね?)

 嫌な予感が止まらないが、極力関わらなければ大丈夫だと自分に言い聞かせた。


 



 あれから何日か経つが、何故かたまに来てはライオルにまとわり着かれている。
 もうすっかり治っているのだが、足を怪我させたからと、何かにつけて側に居ようと近づいてくるのだ。

「なぁ、ルーシェ。この菓子は何だ?」

「こちらはチーズケーキと申します」

 今日は休日なのだが、こうしてルーシェがお菓子を作っていると、なぜか調理場に顔を出すのだ。
 調理台でボールを器用に混ぜている様子を、反対側の台に肘をつきながら、興味深げに眺めている。

「ルー、ライルは構わなくていい。私のために作ってくれ」

 そしてまたなぜかわからないが、作っている後ろから牽制するようにお腹に腕を回し、ウィルソンが抱きしめてくる。
 実に作りにくいし、とても恥ずかしい。
 前世も含めた今までの人生に、一度もなかったモテ期でもやってきたのだろうか。
 まあ、この二人は元々友人なだけあり、仲が悪くなった訳ではないからそこはホッとしている。

(何だろう……これも乙女ゲームの影響なの?ウィル様を攻略したから?というか攻略した覚えなんて、全くないんだけど……ホント勘弁してほしい)
 
 こんな美男子2人に囲まれるのは、とても心臓に悪い。ルーシェは作りながら深いため息をついた。

 焼けたチーズケーキを良く冷やして、おやつにみんなで食べることに。
 テーブルに座り、紅茶と共に出されたケーキを口にしていく。

「っ!うまい!しっとりしてるのに濃厚で、チーズが甘いのにこんなに旨くなるのか!?」

 ライオルは気に入ってくれたようで、気持ちいいくらいパクパクと食べてくれている。
 こうしてみると年相応の少年という感じだ。その様子にクスリと笑ってしまう。

「気に入って貰えたようで良かったです」
「やっぱり欲しいな……なぁ、俺と一緒に来ないか?」
「……大変申し訳ございませんが、私は隣国に行くつもりはございません」

 皇族相手に言って良い言葉ではないが、はっきりした態度を取らないと付け入られてしまう。

「俺と一緒に行けば贅沢三昧出来るぞ」
「私は身の丈に合った生活で十分幸せでございます。今でさえ十分贅沢なんです。それ以上は望みません」
「お前は本当に変わったやつだな」

 変わり者扱いするライオルは、何が楽しいのか実に面白そうに笑っている。

 自分の料理がこれ程まで気に入ってもらえるのは嬉しいが、あまり勘違いさせる様な物言いは止めてもらいたい。
 変に口説かれているようで、背中がむずむずしてしまう。
 

「ライオル殿下。はっきりと申し上げますが、私はウィル様のお側を離れるようなことは致しません。私の望みは唯一それのみでございます」

「ルー…」

「まぁ、簡単に手に入るとは思ってないからな。ウィルより俺が良いと思わせればいいんだろう?」

「いくら言ってこられようと意味はありません。早々に諦めて頂いた方が宜しいかと思われます」

「くくっ、従順な女より余程面白い。まだ時間はあるしな。じっくり口説くことにしよう」

 ケーキを食べながら、またまた愉しそうに話すライオル。

「ライル…いい加減にしてくれ。私はルーを誰にも渡しはしない」

 ルーシェを膝の上に乗せ、やり取りを黙って聞いていたウィルソンは、ケーキを口に運びながら淡々と話す。

「あの……ウィル様、そろそろ降ろして頂いても宜しいですか………」

 しばらく我慢してあのやり取りをしていたが、さすがに恥ずかしくなってしまう。

 ウィルソンは気にすることなく、ルーシェの口にケーキを運ぶ。
 口元にケーキを突きつけられ、仕方なく口を開き、ケーキをパクっと食べる。
 その様子を確認して、ルーシェの頭を抑え自分の方へ引き寄せる。
 深く口付けられ、抵抗する間もなく口の中のケーキをそのまま舌を使って持っていかれてしまう。

「んっ!……っん、っふぅ!」

 唇が離され、口元に両手を当てながら、羞恥に顔を真っ赤にしてぷるぷると震えてしまう。
 ウィルソンは満足そうに咀嚼すると、口の端を舐めあげ、熱っぽく囁く。

「君も、君のケーキもとても甘いな……」

「ウィル様!」

(一番甘いのは貴方です!!)

 それを、見ていたライオルがテーブルに肘をつき顔を乗せながら、口を挟む。

「ウィルがここまで色恋に狂うとは……お前は稀代の悪女だな」

 半ば呆れたように言われるが、ルーシェはそれどころではない。
 人前で見せつけるようにキスされるだなんて信じられない。

(もう、本当に勘弁して!!)
 



 結局ライオルはなんだかんだ公務の関係で、次の日には国に帰ることに。
 本当はもっと早くに戻る予定だったのだが、ライオルがごねていたらしい。

 もちろんルーシェはまたお土産のお菓子を作って渡したが、最後までしつこい程一緒に帰るぞと言われ、それを全力で拒否した。
 

「ルーシェよ、俺は欲しいと思ったものは必ず手に入れる主義だ。簡単には諦めないからな」


 馬車に乗る前に、見惚れる様な笑顔で恐ろしい言葉を残し、ルーシェの手を強引に引くと頬に軽くキスをする。

「なっ!?」

 顔を真っ赤にして触れた頬を手で押さえる。
 そして、また来ると言って去って行った。

 凍えそうな冷ややかな笑みで見送るウィルソン。
 その隣でルーシェは固まりながら、かなりの居心地の悪さを感じていた。









 その日の夜、ウィルソンにしつこい程攻められることに。



「あっ!…ん、ぁ……ウィル…様ぁ、も…許…して……」
「ルー…まだだ……」

 ウィルソンのベッドの上で、もう何度達かされたかわからない。
 何度も膣内で出され、また激しく揺さぶられ、過度に与えられる快楽で、頭がおかしくなりそうだ。

 ベッドで抱き合った状態でウィルソンの剛直を受け入れている。

「あぁ!……ふぅ……、ぁ……」

 達きすぎてツラい。
 それなのにまたこうして奥を突かれると、身体に熱が燻ってくる。

「君は…私のものだ……」

 耳元で欲望を含んだ声で、囁かれる。
 ズチュズチュとイヤらしい音が室内に響く。
 ウィルソンの動きが早くなり、ルーシェを深みへと追いたてる。

「あん!あっ!また…イッ…あっ、もぅ、やだぁ……」

「……っ、イクぞ」

 ルーシェの瞳から涙が溢れる。ウィルソンにギュッとしがみつきながら、何度目かもわからない絶頂に達する。

「はぁう!あっ………はぁっ……」

 力なくルーシェの腕がベッドに落ちる。
 ウィルソンも膣内に熱い飛沫を放つと、荒い息をつきながら自身をナカから抜き、ルーシェを腕の中にギュッと強く抱きしめる。

「ルー…愛してる……誰にも、渡さない」

 激しいまでの独占欲に、少し怖くなりながらも、心を満たすような充足感でいっぱいになる。
 ルーシェはウィルソンの頬に手を添え、ソッと唇を重ねる。
 
「……っ」
「あ…なた…だけ……愛…して…ます」

 散々喘がされ、声があまり出ないが、伝わっただろうか。
 その言葉がウィルソン自身の抑えきれない劣情に、歯止めをかける。

「無理をさせて、すまない………」

 今度は優しく抱きしめられる。
 ルーシェは首を横に振り、瞳を閉じる。
 その触れられる肌の心地良さに意識を手放した。





 数日後。

 ライオルから隣国に遊びに来い、と手紙が届く。 
 ルーシェと一緒に手紙を読んでいたウィルソンの機嫌が一気に悪くなる。
 また一波乱ありそうな予感がするのは気のせいだろうか。

 
 ルーシェの苦悩はまだまだ続きそうだ。



 











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 読んでいただき、ありがとうございました!
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