【R18】ルーシェの苦悩 ~貧乏男爵令嬢は乙女ゲームに気付かない!?~

ウリ坊

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続編

隠しキャラ 2

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 ライオルに横抱きされ、お屋敷のエントランスホールに入ってきたルーシェとライオルを見たウィルソンは、吃驚して固まってしまった。

「ラ…イル、何をしている?」
 
 ライオルは何事もないふうに話し出す。

「ウィルか。なぁ、こいつ連れて帰ってもいいか?」

「「はっ?」」

 ウィルソンとルーシェが同時に不満の声を漏らす。
 
(私は物じゃないんだけど!)

 ウィルソンは鋭くライオルを睨み、冷たい口調で言い放つ。

「ライル……ルーは私のモノだ。連れて帰るなど…例え友人でも許しはしない」
 
 ウィルソンが殺気を出しながら牽制している。
 それを見てライオルは更に愉しそうに笑う。

「これは珍しい……ウィルがこれ程感情を露にするとは」

 ライオルの腕に抱き上げられながら、ルーシェは思った。

(お願いだから、私の意見をちゃんと聞いてよ!!)



 あれから睨み合いになり、見かねたクラウスが止めに入った。
 ウィルソンがライオルからルーシェを奪い取り、今度はウィルソンに抱えられ、手当てして貰うことになってしまう。
 それでも自分でやると全力で拒否したのだが、聞き入れて貰えなかったのだ。


 そして今、応接室のソファーで三人で座っているのだが、ルーシェはかなりの居心地の悪さを感じている。
 
(私……居なきゃダメ?)

 とても逃げ出したい気分の中、先に口を開いたのはルーシェの隣に座っていたウィルソンだ。

「それで?何故ルーが怪我をして、ライルに抱えられて戻ってきたんだ?」

 口調にかなりの苛立ちが含まれている。
 ルーシェは自分が悪い訳でもないのに、なぜか罪悪感を持ってしまっていた。
 そんなことはお構い無しのライオルは、向かい合ったソファーに優雅に腰掛けながら話し出す。

「ああ、コイツが打ち込みしてるのを見かけてな。そこで手合わせしたんだ」
「その時に怪我をさせたのか」
「そうだ。少し本気を出してしまってな。悪いことをしたが、俺が本気を出せるヤツは中々いない。ましてや女でここまで出来る者もな」

 そう言ってライオルは笑ってルーシェを流し見る。
 これだけの美形に見られると、ルーシェは真っ赤になってしまう。未だにこの手の男は苦手なのだ。

 それを見て面白くないのはウィルソンだ。自分以外の男に頬を染めるのは許しがたいものがある。

「ルーは私の婚約者だ。誰にも渡さない。無理に連れて行くというなら手段は問わない」

「ふっ……あのウィルがここまで執着を見せるか…女相手に」

 ウィルソンの、まるで敵に向けるような鋭く冷たい瞳に、ルーシェはゾッとしてしまう。
 面白いものを見るかのように、ライオルはウィルソンを眺める。
 
 ルーシェはそんな二人を見ておろおろしてしまう。
 何故こうなってしまったのか甚だ疑問なのだが、とりあえず自分を無視して、話を勝手に進めないでほしい。

 気まずい雰囲気を壊してくれたのはクラウスだった。

「坊っちゃま方、そろそろ出発しないと遅れてしまいますよ」

 ナイスなタイミングで入って来てくれた。

(クラウスさん、大好き!)

 今日は登城する予定らしい。
 この場から解放される喜びで、ルーシェは安堵してホッと胸を撫で下ろす。

「今行く」

「ああ、そうだ。今夜の晩餐にまたあの料理人を呼んでくれないか?あの味が忘れられなくてな」

 ライオルが思い出したようにクラウスに頼んでいる。
 
(もしやそれは、私のことか?)

 クラウスがチラリとルーシェを見る。ルーシェは慌てて首を振った。

「本日は他の場所に行っておりますので、晩餐にはお呼び出来ないかと思われます」
「どうしてもダメなのか?俺が直接行って話をする」

 その言葉にルーシェはギョッとしてしまう。
 あの時はジェフが病気で仕方なく代理をしたのだ。気に入って貰えたのは嬉しいが、自分は専門の料理人ではない。
 中々引き下がらないライオルに、クラウスが困り果てていた。
 見かねたルーシェが思わず口を挟んでしまう。

「申し上げございませんが、本日は怪我をしておりますので、お作り出来ません」
「ルー!」
「まさか……お前があの時の料理人か?」
「左様でございます」
「これは本気で欲しくなってきたな」
「はっ?」

 ウィルソンがルーシェを守るように抱きしめる。

「ウィ、ウィル様?」
「ライル……」

 見たこともないような怖い顔で威嚇しながら、凄まじい殺気を放つウィルソン。
 ルーシェはその様子に驚いてしまう。

「流石ウィルが選んだだけあるな。手に入れるだけの価値はある」

 腕を組み、獲物を狙う動物のような目でルーシェを見る。
 
 怖い。

 本能的にそう思った。この瞳に捕らわれたら、ウィルソンと引き離されてしまいそうで。
 ルーシェもウィルソンにギュッとすがりつく。

「無理やり奪うような真似はしないさ。ようは俺に、着いて来たいと思わせればいいんだろう?」

 ニヤリと笑い、ウィルソンを挑発する。
 
「何度も言うが、彼女は婚約者だ。ライルに着いて行くことはあり得ない!」

婚約者だろ?」

 
 バチバチと音が聞こえそうな程の二人のやり取りに、ルーシェはソッとため息を吐く。


 どうやらまた大変なことに巻き込まれたようだ。




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