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本編
乙女ゲームの世界
しおりを挟む次の日。
「…………ルーシェ嬢……大丈夫?」
王宮の第二王子専用執務室に集まっている。
「あ"……い"……」
ルーシェは羞恥心で顔が真っ赤になる。
ドレスのスカートを握り、ずっと下を向いていた。
何故ならウィルソンの膝の上にいるからだ。
昨晩ウィルソンにかなりしつこく攻めたてられ、足腰が立たなくなってしまったから。
しかも首筋にはキスマークが溢れ、ドレスからはみ出してしまっている。
勿論身体中にあるのだが、見える部分は何とかストールを巻いて隠した。
何度も達かされ、ナカにウィルソンの熱い飛沫を受け止めた。
もちろん自分が求めて煽ったせいもある。
昨日はウィルソンに抱いて欲しくて、仕方なかった。
そんな訳でルーシェの声も枯れてしまい、足腰もふらふらで、王子殿下の目の前で側近であるウィルソンの膝に乗るという大失態を引き起こしてしまったのだ。
執務室の豪華な椅子に座っているエミリオは、呆れた様な瞳で満足そうなウィルソンを見ている。
「ちょっと、ウィル!ルーシェ嬢抱き潰してどうするの!?これじゃ、話の続きが聞けないじゃないか!」
グレンも、エミリオの側に立ちながら笑っている。
「ほら、言っただろ?ウィルってムッツリだし、しつこそうだからな~」
「仕方ないでしょう。ルーが可愛すぎて、劣情を止めるのが難しかった」
ウィルソンは自分は悪くないとばかりに言って退ける。ルーシェのせいでもあるのに、わざと自分のせいに仕向けてくれている。
「…………はぁ~、とりあえず昼まで休憩!ルーシェ嬢は薬出してあげるから飲んだら休んで」
「す…い"ま……」
「喋らなくていいよ。悪いのは全部ウィルだからね!……喋れそうになったら、教えて。その時に聞くよ」
笑って気遣ってくれるエミリオ。
ルーシェはコクりと頷く。
ウィルソンが全て悪い訳じゃないのに。罪悪感が胸に渦巻く。
そもそも自分がウィルソンを煽って、もっとして欲しいと言ったのが原因だ。
(私のバカ……もう……本当に恥ずかし過ぎる……!)
ルーシェは自分の言動に、頭を抱えるのだった。
お昼になり、薬を飲んでからしばらく眠って休んだおかげで、だいぶ声も出る様になった。
だが、足腰だけは立たない。
立とうとすると、産まれたての小鹿の様な無様な姿を晒すことになり、仕方なしにウィルソンに運んでもらった。
今度はきちんとソファに座らせてもらった。
ウィルソンは不満そうにしていたが、ルーシェは譲らなかった。
仕切り直して、早速偽聖女クレアのメモを見せてもらった。
昨日も少し見たが、やはり間違いない。
ここはなんと!
乙女ゲームの世界だったのだ!!!
しかも、たぶんR18のやつ!!
ルーシェはそれを見ただけで、また倒れそうになる。
(しかも、しかも~!ウィル様が攻略対象だったなんて!)
でも、ウィルソンの手の早さや絶倫さといい、それに関するイベントといい、今になって色々考えると大いに納得できる。
『女神の指輪~果てることのない快楽の罠~』
とかいう、言葉に出すのも小っ恥ずかしいタイトルだった。
(そんなポスターが、コンビニのガラスに貼ってあるってどういうこと!)
ルーシェは心の中で盛大に突っ込みを入れる。
可愛らしい丸文字で簡単に書いてあった。
たぶん、自分で忘れない様にするためのメモなのではないかと思う。
攻略対象者は隠しキャラ含め全部で7人。
エミリオ王子、ウィルソン、グレン、ジュリアン、エレン王太子殿下、そして隠しキャラの特別顧問アルベルトと隣国皇子ライオル。
主人公が入学してから、卒業するまでの大まかな国の歴史や出来事が綴ってあった。
(なるほど、これでクレア様が入学してから起こる出来事を当てたって訳か…………)
さて、これをどうやって説明しよう。
まあ、最悪説明だけなら大丈夫だ。全て赤裸々に読む必要もない。というか読みたくない。
『先見』がどうやって行われたかはこのまま読めば問題はない。
しかし、この攻略対象者の性格とか、あまり言いたくはない。
ウィルソンのメモを見ると、溺愛、執着、絶倫……等思い当たる点が沢山有りすぎて卒倒しそうだ。
名前の横に『難』と書いて丸で囲ってある。難易度の事だろうか?
何枚か読んで、ルーシェは顔が赤くなりながら悶える。
そんなルーシェを三人は不思議そうに見ている。
とりあえず、『先見』が何故出来たのか、説明する。
一つ咳払いして喉の調子を確かめる。うん、何とかなりそうだ。
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