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本編
○○エンド
しおりを挟む久しぶりの温もりが嬉しい。直接吸い込むこの爽やかな匂いも、広くて暖かな腕の中も。
もう離れたくない。もっともっと感じていたい。
「ルー、今…何て………」
ウィルソンは信じられないものを見るような顔をしている。
抱きついていた力を弱め、顔を上げてウィルソンと向き合う。
真っ直ぐにウィルソンの双眸を見つめる。
前世では男性が苦手で怖くて、恋をしても告白なんて出来なかった。
でも今、ウィルソンを好きになって、初めて気持ちを伝えたいと思えるようになった。
もう何も出来ないまま後悔したくないから。
「ウィル様に会えない間、ずっと考えてました。自分のこの気持ちが何なのか……」
「……ルーシェ」
ルーシェは少し視線を落とし、ウィルソンの背中に回していた手を緩める。
「私は他のご令嬢の様な容姿も家柄も何もない、ただの貧乏貴族です。本来ならここに居ることさえ場違いなくらい、不相応な人間です」
「そんなことは…!」
そして再びウィルソンの瞳を見つめ、力を込める。
「──身の程知らずなのはわかっています!でも私は、貴方の側にいたい!……貴方の隣に立って、同じ景色を見て、ずっと一緒に笑っていたい……」
「私は貴方が好きです。お慕いしております」
ルーシェは感情が溢れ、途中言葉に詰まりながらも、何とか思いの丈を伝えることができた。
ルーシェの顔に笑顔が溢れる。
前世も含め、初めての告白に緊張したが、ようやく言えてスッキリした。
うまく伝わったかわからないが、結果がどうであれ、言って良かった。
晴れ晴れとした気分だ。
「くそっ…!」
ウィルソンは吐き捨てるように言い、ルーシェの頭を引き寄せ、強引に唇を重ねる。
「ふぅ…っ……ん」
身を焦がす様な荒々しい口付けに身体が震える。
深くて熱いキスに身体の芯が疼く。
唇が離され、また啄む様に何度も何度もキスを繰り返す。
「ん、はっ………んっ」
そして名残惜しむ様に離され、きつく抱きしめられる。
「君は、本当に…なんでこんな!」
紡ぎ出される言葉に焦燥が混じる。
ウィルソンはルーシェをソッと離し、その場に跪いた。
ルーシェの片手を取り、その美しい容貌で見上げる。
「ルーシェ=サタナイト嬢。私は貴女を愛している。私が側に居てほしい女性は、未来永劫貴女だけだ。私と結婚してほしい」
そのまま指先に唇を落とす。
急な愛の告白に混乱してしまう。
「!!……はい!ウィル様……嬉しい。私で…いいんですか?」
「君が良いんだ」
ウィルソンはうっとりするような眼差しを浮かべ、立ち上がりながら再びルーシェを抱きしめた。
月明かりが照らす中、二人はようやく結ばれる事ができたのだった。
◇
◇
お互いの気持ちを確かめ合った二人は、再びパーティー会場に戻った。
エミリオにもお礼を言いにいく。
エミリオも沢山のご令嬢に囲まれていたが、こちらに気付く手を挙げてくれた。詰め襟の白い正装衣が王子様っぽくていつもより大人っぽく見える。
隣に騎士服姿のグレンも控えている。二人ともいつにも増し麗しい。
「やぁ、ルーシェ嬢。僕の用意したドレス着てくれたんだね!良く似合っているよ!」
「畏れ入ります」
「えぇ!ルーシェ嬢!?いつもと全然雰囲気違うな~!」
エミリオがどこかウィルソンを挑発するように笑う。グレンは何気に失礼な事を言っている。
ウィルソンはルーシェの肩を抱き寄せながら、瞼に唇を落とす。
「エミリオ殿下にドレスを送って貰えるなんて光栄だな。屋敷に戻ったら直ぐに脱がせてあげるよ」
「なっ!ウィル様!」
不埒な言葉に、ルーシェは顔が真っ赤になる。
エミリオが納得したように、
「…ふぅん、どうやらこちらも納まるとこに納まったのかな?」
「はい。滞りなく」
「そっか。良かったね!安心したよ」
どこか嬉しそうに話す。
「ルーシェ嬢、ウィルはむっつりだから気をつけろよ」
「グレン……」
「…?」
話しているウィルソンに断りをいれ、先ほど食べれなかったデザートを取りに行く。
(あ、あったあった!)
どうやらまだ下げられてないようだ。見つけた皿を取ろうとしたら、急に正面から抱きしめられる。
甘い花の蜜の様な香りと、柔らかな感触に、すぐ正体がわかった。
「アイリス!」
「……うっ、うぅっ……ルーシェ。良かった……」
泣いて抱きついてくるアイリスを、ルーシェは抱きしめる。
断罪の件があり、アイリスにも事情が説明出来ず、ルーシェの安否を心配していたのだ。
「アイリス……心配かけてごめんなさい」
「もお!本当に本当に心配したんだから!でも、でも……ルーシェが…無事で…良かった……」
「ありがとう……私もずっとアイリスに会いたかった」
しばらく抱き合って、二人でケーキを食べた。アイリスは社交の場でルーシェと一緒にいれて嬉しそうだ。
「ついにクロウド様と正式に婚約されるのね!」
「えぇ…私がウィル様の隣に居てもいいのか不安だけど」
「何を言っているの!?ルーシェはこんなに綺麗で可愛らしいのに!もっと自信を持ちなさい!」
「ふふ…ありがとうアイリス。大好きよ」
久しぶりの親友との会話。緊張した日々を送っていた心が温かくなる。
それからぽつりぽつりとクラスメイトも気遣いの声をかけてくれて、お礼を言いながら安否を報告した。
こうして無事に卒業パーティーも終わり、ルーシェとウィルソンはお屋敷に戻った。
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