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本編
報告
しおりを挟むクレアのあの破廉恥な行為はすぐにエミリオに報告された。
「ねぇ、君って実は諜報部なの?ここまで有力な情報を的確に集めて来れるなんて感心するよ」
「……誤解の無いよう申し上げますが、全て偶然に過ぎません」
「ははっ、褒めてるんだよ。本当、感謝してる!」
「恐悦至極にございます」
「もぉ、相変わらず固いね~。本当に諜報部みたいだよ」
ここは王族が使える学内の応接室だ。
エミリオ、ウィルソン、グレンとルーシェの四人で集まっている。
少しはこのイケメン達にも慣れてきた。
中央の応接用の椅子にエミリオが腰をかけ、周りにウィルソンとグレンが控えている。
「教師と生徒の色事ねぇ……ずいぶんこの学園は腐敗してきてるらしい」
椅子に座りながら机に肘を立て、目の前で手を組んで、どこか楽しそうにエミリオが呟く。
「本当ですね!ルーシェ嬢も災難だったな」
グレンが労ってくれる。
「いえ、大丈夫です。まぁ、多少…驚きはしました」
「そうだよね…聞いたこっちも吃驚だよ。他には何か話していなかったんでしょ?」
「……はい。私が聞いたのはそのくらいです」
「わかったよ。ありがとう、ルーシェ嬢」
「いえ、とんでもございません」
「後はウィルにたっぷり慰めてもらって!」
エミリオはルーシェに向かってニッコリ笑っている。
「は、はぁ?」
「そちらは抜かりありません」
ウィルソンはエミリオの隣に立ちながら普通に話している。
「へぇ~、ウィルって意外と手が早いんだね!」
「よ、むっつり!」
「うるさい」
「??」
イケメン達三人の会話についていけない。
とりあえず報告して私の役目は済んだし、早く教室に戻ろう。
ひっそりため息を付き、中々終わらない三人の会話を見守っていた。
◇
◇
次の日
今日は朝から他の生徒の態度がよそよそしい。クラスメイトも何故か顔を赤くしながら、ヒソヒソと話してはルーシェをチラチラと見ている。
何だろう?と不思議に思っていたが、授業が始まり解らずじまいだ。
お昼休み。
ルーシェはウィルソンの側から離れられないので、アイリスと共に王族専用の応接室で食べている。
アイリスも初めは遠慮していたが、エミリオが許可したので今では一緒に昼食を取っていた。
初めは1人で座って食べていたが、周りにイケメン達が居て全く食べた気にならなかった。
なので、どうしてもアイリスと食べたいとウィルソンに懇願し、何とか許可してもらった。
このくらい譲歩してもらわないとこっちの身が持たない。
交換条件として、ウィルソンの分のお弁当も何故か一緒に作るようになっていた。
エミリオ達はお昼休みでも関係なく仕事をしていた。
時々会話しているが、こちらには聞こえてこない。
アイリスとルーシェは応接用のソファを借りて座って食べている。
「ねぇ、ルーシェ。私に何か話すことはないかしら?」
「?アイリスに話すこと?」
お弁当をつつきながら小声でアイリスが尋ねてきた。
「もう!隠すつもり?既に学園中の噂よ?昨日貴女とクロウド様が廊下で熱く抱擁していたこと!」
「なっ!」
「クロウド様って意外と大胆ね」
ニッコリ笑うアイリス。相変わらずの美少女ぶりだ。
(が、学園中の噂!?)
「あ、あれは……!」
顔から湯気が出そうなくらい熱い。
必然的に忘れ様としていたあの官能的な口付けまで思い出してしまう。
「…っ!!」
「ふふふ…親友が幸せそうで良かったわ」
嬉しそうにアイリスは話しているが、盛大に勘違いしている。自分とウィルソンは恋仲ではないのだ。
だが、秘密を守るために否定することも出来ないし、事の経緯を詳しく話せないのがつらい。
(うぅ~~!)
歯痒い想いにルーシェは頭を抱える。
クラスメイトがヒソヒソ話していたのはこの事だったのか!恥ずかしくて穴があったら入りたい気分だ。
ウィルソンとの仲は偽りだと声を大にして言いたい!
学園中に言いふらしたい。
しかし、国が絡んでいる以上何も出来ない。
顔を赤くしながら、ちらりとウィルソンを盗み見る。
するとウィルソンもルーシェを見ていたのか視線がぶつかると、ウィルソンが目を細め軽く微笑む。
「──っ!」
まさかウィルソンがこっちを見てると思わなくてドキドキしてしまう。
慌てて視線を逸らすと、逆にアイリスと目があった。
アイリスは頬を上気させながら目をキラキラとさせている。ホゥとため息を吐いて、
「ごちそうさま」
と、謎の言葉を残す。
居たたまれないルーシェは無我夢中でお弁当を食べるのだった。
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