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事の顛末
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「ミレール! 目覚めて良かったわ……!」
「とにかく無事で良かったよ! 君にあんなことがあって倒れたと聞いて、どれだけ心配したか……」
ミレールが目覚めたことを聞いて、オルノス侯爵夫妻や他の使用人たちまで無事を確認しに部屋まで来てくれた。
ノアに聞いたが、三日も眠ったままだったらしい。
目覚めてからすぐに動こうとしたが止められた。ひとまずミレールの部屋に移動し、今目の前にはオルノス侯爵夫妻が椅子を並べて座っている。
「心配していただき、ありがとうございます。お義父さま、お義母さま」
オルノス侯爵はノアにミレールが貝類アレルギーだと伝えていなかった。当然知っているものだと思っていたらしく、ノアが知らなかったと聞いて驚き、ミレールに謝っていた。
ミレールもその場でついた嘘だったので、あえてノアには話していなかった。
オルノス侯爵はノアが当然知っているだと思っていて、ミレールを守り切れなかったことを悔いていた。
「――本当にすまなかったね」
「いえ、わたくしもノアにお伝えしていませんでしたし……お義父さまのせいではありませんわ。お気になさらずに」
ミレールが倒れたのはアレルギーによるものだと勘違いされていた。
実際はまったく違うのだが、説明できることでもなかったので、逆に理由があって良かったとミレールも安堵した。
そしてオルノス侯爵からリアーノ伯爵令嬢はその場で取り押さえられ、牢に投獄されたと聞いた。
さらにその後すぐに、リアーノ伯爵家が違法事業に手を染めた罪で捕まり、リアーノ伯爵家は多額の資金難に陥って没落したことを詳しく説明してくれた。
オルノス侯爵の話を黙って聞いていたが、大体予想通りの展開になり、ミレールは耳を傾けながら事の顛末に納得していた。
「……そうだったのですね。色々と処理していただき、感謝いたしますわ」
「いや、感謝するのはこちらのほうだよ。違法事業の話を聞いた時に、私たちもかなり肝を冷やしたからね。ミレールがあの時に止めてくれなかったら、没落していたのは間違いなくうちだった……そう思うとゾッとするよ」
椅子に座ったまま、真剣に話しているオルノス侯爵にミレールも言葉に詰まる。ここまで感謝されることがあまりなかったので、どうして良いのかわからなかった。
「その通りよ! こんな目に遭ったあなたには悪いけど、あなたの体質のおかげで我が家は助かったわ。感謝しても足りないくらいよ! 本当にありがとう、ミレールっ」
そして間髪を入れずノクターンがオルノス侯爵の隣からお礼を言ってくれている。
二人の気持ちが嬉しくて、ミレールは自分のやったことが報われたのだと、温かい気持ちになれた。
「とんでもありませんわ。この体質が家門のためにお役に立てたのでしたら、これ以上の僥倖はありませんわ」
ベッドに座ったまま二人に向かい、にこりと笑顔を向ける。
「もうっ、ミレールったら! なんていい子なのかしらっ!」
「お、お義母さま……」
椅子から立ち上がったノクターンにガバッと抱きしめられて、ミレールは擽ったい気持ちになる。
(わたくしのついた嘘の体質なので、皆さまを騙している心苦しさはありますが、致し方ありませんよね)
「やはり我が義娘は素晴らしいな! これで我が家も安泰だ」
賛辞を送ってくれるオルノス侯爵に苦笑しながら、ノクターンの背中に手を添えた。
「とにかく無事で良かったよ! 君にあんなことがあって倒れたと聞いて、どれだけ心配したか……」
ミレールが目覚めたことを聞いて、オルノス侯爵夫妻や他の使用人たちまで無事を確認しに部屋まで来てくれた。
ノアに聞いたが、三日も眠ったままだったらしい。
目覚めてからすぐに動こうとしたが止められた。ひとまずミレールの部屋に移動し、今目の前にはオルノス侯爵夫妻が椅子を並べて座っている。
「心配していただき、ありがとうございます。お義父さま、お義母さま」
オルノス侯爵はノアにミレールが貝類アレルギーだと伝えていなかった。当然知っているものだと思っていたらしく、ノアが知らなかったと聞いて驚き、ミレールに謝っていた。
ミレールもその場でついた嘘だったので、あえてノアには話していなかった。
オルノス侯爵はノアが当然知っているだと思っていて、ミレールを守り切れなかったことを悔いていた。
「――本当にすまなかったね」
「いえ、わたくしもノアにお伝えしていませんでしたし……お義父さまのせいではありませんわ。お気になさらずに」
ミレールが倒れたのはアレルギーによるものだと勘違いされていた。
実際はまったく違うのだが、説明できることでもなかったので、逆に理由があって良かったとミレールも安堵した。
そしてオルノス侯爵からリアーノ伯爵令嬢はその場で取り押さえられ、牢に投獄されたと聞いた。
さらにその後すぐに、リアーノ伯爵家が違法事業に手を染めた罪で捕まり、リアーノ伯爵家は多額の資金難に陥って没落したことを詳しく説明してくれた。
オルノス侯爵の話を黙って聞いていたが、大体予想通りの展開になり、ミレールは耳を傾けながら事の顛末に納得していた。
「……そうだったのですね。色々と処理していただき、感謝いたしますわ」
「いや、感謝するのはこちらのほうだよ。違法事業の話を聞いた時に、私たちもかなり肝を冷やしたからね。ミレールがあの時に止めてくれなかったら、没落していたのは間違いなくうちだった……そう思うとゾッとするよ」
椅子に座ったまま、真剣に話しているオルノス侯爵にミレールも言葉に詰まる。ここまで感謝されることがあまりなかったので、どうして良いのかわからなかった。
「その通りよ! こんな目に遭ったあなたには悪いけど、あなたの体質のおかげで我が家は助かったわ。感謝しても足りないくらいよ! 本当にありがとう、ミレールっ」
そして間髪を入れずノクターンがオルノス侯爵の隣からお礼を言ってくれている。
二人の気持ちが嬉しくて、ミレールは自分のやったことが報われたのだと、温かい気持ちになれた。
「とんでもありませんわ。この体質が家門のためにお役に立てたのでしたら、これ以上の僥倖はありませんわ」
ベッドに座ったまま二人に向かい、にこりと笑顔を向ける。
「もうっ、ミレールったら! なんていい子なのかしらっ!」
「お、お義母さま……」
椅子から立ち上がったノクターンにガバッと抱きしめられて、ミレールは擽ったい気持ちになる。
(わたくしのついた嘘の体質なので、皆さまを騙している心苦しさはありますが、致し方ありませんよね)
「やはり我が義娘は素晴らしいな! これで我が家も安泰だ」
賛辞を送ってくれるオルノス侯爵に苦笑しながら、ノクターンの背中に手を添えた。
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