【R18】夫と6年間レスだった私が憑依転生したのは、大人向けweb小説の悪役令嬢でした

ウリ坊

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夢の続き

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 ノアとのデートも満足に終わり、その時に普段遣いのドレスとアクセサリーまでたくさん買ってもらった。
 ドレス選びもノクターンのおかげで慣れているのか、長々と続く試着さえもノアは最後まで付き合ってくれた。

 余談だが、その日から護衛騎士であるアーミッドの態度が少し柔らかくなったように感じていた。
 これはアルマも感じていたことらしく、ミレールの支度を整えていた時に髪を梳かしながら面白おかしく話していた。


 そして、ある日の夜。

 ――また、あの夢を見た。
 
 いつもの夢のあと……そこにはノアがいて、やはり部屋の中で蹲っているミレールに何かを必死に話しかけている。
 そしてある場面では、二人でオルノス侯爵家の庭に出て、ノアが暗い表情で俯いているミレールを心配そうに見ながらゆっくり歩いていた。
 またある場面では、ノアが泣いているミレールを抱きしめて二人で重なるようにベッドで横たわっていた。
 
 ――最後、夢の終わりには、再び暗闇が訪れる。

 真っ暗な空間に誰かがいて、その人物だけがぼんやりと見えている。

『わたくしも、……されたい……、わたくしも……されたい』

 頭の中で直接響くようなか細い声。
 夢にしてはあまりに鮮明な映像。
 
(どういう、ことですの? これは、元々のミレールの記憶? でも、どうしてノアと――)

 そこで目が覚めた。

「はぁっ、はぁっ……!」

 怖くなってバッと上半身を起こした。
 汗が額から流れ、全力で走ったくらいの疲労感が襲ってくる。
 辺りはすでに明るく、隣にいたノアはいなくなっていた。
 ノアのベッドの上で、震える裸の体を抱きしめた。

(小説でのミレールは、あの事件以降登場していません。ノアも終盤手前で没落してから、小説での登場はなくなってました……。最後はレイリンと殿下の婚姻式と、その後の幸せな初夜シーンで物語は終わってましたわ)
 
 つまり、その後のミレールとノアのことはわかっていない。
 この夢が何を意味するのかわからないが、こう何度も繰り返し見ていては、何かが関係しているのだと思わざるを得ない。

(この漠然とした不安はなんなのでしょうっ……。胸の中でずっと何かがつかえていて、手が届きそうで届かないような……そんな、もどかしくて焦れったい気持ちがいつまでも払拭できませんっ)

 時間が経てば忘れてしまうのに、忘れた頃にまた同じ夢を見る。
 そして夢は次第にはっきりと脳裏に残るようになっていた。

 天を仰いだが、答えが出ないまま、ミレールは長く息を吐き、ベッドから立ち上がった。


 ◇◆◇

 
 その日の晩餐の席のことだった。
 
「パーティーですか?」
 
「えぇ! 三日後に知り合いの御婦人のお屋敷で開かれるの。ぜひ家族でって書かれていたから、ミレールとノアも一緒に参加しましょう!」

 対面で座っていたノクターンは相変わらず美しい笑顔を浮かべ、両手を胸の前で合わせて楽しそうに提案してきた。

「まぁ、俺は構いませんが……、あんたは?」

「わたくしも大丈夫ですわ」

「良かった! じゃあ決まりね!」

 ミレールの返事に、ノクターンは嬉しそうに微笑んで喜びを表していた。

(パーティーということは、ダンスを踊りますよね? わたくし、ダンスの経験はありませんが……大丈夫なのでしょうか?)

 晩餐の席に座り、ミレールの頭の中はそのことでいっぱいになっていた。
 これから社交の場に出るのならば、ダンスを踊ることは必須条件となってくる。
 元々のミレールの記憶が戻りつつあるが、ダンスはまだ踊る機会がなく、どこまでできるのか不安が募る。

 晩餐のあと、ノアの部屋へ移動したミレールはすでにベッドで座って待っていたノアの隣に座り、話を切り出した。

「あの、ノア」

「ん? なんだ?」

 不安そうにしているミレールに視線を移し、不思議そうに首を傾げて問いかけている。

「パーティーの前に一度でいいので、一緒にダンスを踊っていただけませんか? 少し不安で……」

「はっ? ダンスはあんたの得意分野だろ?」

 隣から意外そうな顔で見られた。
 確かに元々のミレールは王太子妃を目指していただけあって、ダンスはもちろん教養にも力を入れていた。
 マクレインと踊る機会こそ少なかったが、それでも元々のミレールのダンスは人に教えられるほど完璧なものだった。

「前までのわたくしでしたらそうかもしれませんが……、今のわたくしでは力不足かもしれませんわ」

「――っ」

 ベッドに座ったノアは、思い至ったように目を見張ってミレールの顔をみつめていた。

「……そういうことか」

 片手を口元に当て、納得したように視線を逸らしている。
 ノアが前に話していたことを受け入れているのかわからないが、わかったように話しているということは、ノアがある程度受け入れてくれているという証拠でもあった。

「はい。だめですか……?」

 隣からノアを見上げて確認する。

「いや……、わかった。俺も、ダンスはあんまり得意じゃないが、リードするくらいはできる」

「良かったですわ! ありがとうございますっ」

 ノアに色よい返事をもらって、ミレールの顔にぱっと明るい笑顔が浮かんだ。
 その様子を隣で見ながら、ノアはまた口を開いた。

「なぁ」

「はい?」

「あんたは本当に……、あのミレールじゃないのか?」

 ベッドで座ってホッと胸を撫で下ろしていたミレールに、ノアが疑問を投げかけてきた。

「………………はい」

 暫しの沈黙の後、ミレールはその問いに答える。

「じゃあ、今いるあんたは、一体誰なんだ?」

「――っ、それは……」

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