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悪夢
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――夢を、見た。
またいつも見る夢。
ただ、最近……この夢の前に、別の夢が加わるようになってきた。
それは小説でのミレールが、レイリンを罠へ嵌めようと男を雇い、だが逆にその男に凌辱される。
その時の生々しい記憶。その後の絶望感。
まるで悪夢のようにこの夢を見る度、魘されながら起きる。
しかし最近はまた夢に変化があった。
ミレールが精神崩壊し部屋に引きこもっているのだが、そこに何故かノアが現れる。
何かを喋っているが、話している声は何も聞こえず部屋のベッドで蹲っているミレールに、ノアは何か必死に話していて、しばらくすると諦めたように部屋を出ていった。
その後に真っ暗な空間が現れる。
また声が聞こえて、誰かが暗闇の中で蹲っていて、自分がその様子をジッと見ている。
『……しも、……されたい……』
繰り返される悲痛な言葉。
おそらく泣いている誰か。
(どうして、ずっと泣いているの? なぜこんな真っ暗な場所にずっといるの? あなたは、一体――――)
近づくとその人物は振り返るのに、誰かわからないまま、そこで目を覚ました。
パチッと瞳を開けると体がじっとりと汗ばみ、流れるほどの額の汗を手で拭った。
(また、あの夢…………)
ゆっくりと体を起こし、体に溜まった疲労感と倦怠感に両手で顔を覆った。
(夢がまるで、現実のように生々しいですわ……特にミレールが男にっ…………。もう、それだけでも胸が引き裂かれて、わたくしまでおかしくなってしまいそうっ……!)
ミレールは言い知れない恐怖と不快なほどの嫌悪感に身震いし、顔を覆っていた手で裸の体を抱きしめた。
まだ部屋は薄暗く、日も昇っていない。
近くのサイドテーブルに置いてある水差しをコップに注ぐと、カラカラに乾いた喉を潤すように一気に水を飲み干した。
そして同じく置いてあった手拭いで顔や体の汗を拭いた。
一息ついたが、まだ不安が治まらない。
またベッドへ入り、隣で寝ていたノアに抱きついた。
「ん……」
ノアは一度寝てしまうと滅多に起きなかった。
まだ眠っていたが安心したくてノアの体にくっついていると、無意識なのか寝ぼけているのか、ノアがミレールの背中に腕を伸ばして抱きしめてくれる。
(はぁ……、ノアが……こうしてくれるだけで、とても安心いたしますわ。あんなに怖くて恐ろしかった気持ちが、ここまで安らぐのはどうしてなのでしょう……)
温かくて力強く腕に、引き締まった逞しい体、靭やかについた筋肉質な胸元に顔をつけると、ミレールの心も落ち着いていく。
一瞬で悪夢を消し去ってくれる、愛しくて優しい、誰よりも信頼できる旦那様。
(近頃、夢が鮮明すぎて……なぜ、こんな夢を見るのか、わかりませんが……あのミレールがいた部屋。どこかで見覚えがあるかと思いましたら、わたくしがオルノス侯爵家で使っている部屋でしたわ……)
それが一体、何を意味するのか。
どういうことなのか見当もつかないが、ミレールの中で漠然とした不安が払拭できず、ノアに抱きついたまま再び瞳を閉じた。
またいつも見る夢。
ただ、最近……この夢の前に、別の夢が加わるようになってきた。
それは小説でのミレールが、レイリンを罠へ嵌めようと男を雇い、だが逆にその男に凌辱される。
その時の生々しい記憶。その後の絶望感。
まるで悪夢のようにこの夢を見る度、魘されながら起きる。
しかし最近はまた夢に変化があった。
ミレールが精神崩壊し部屋に引きこもっているのだが、そこに何故かノアが現れる。
何かを喋っているが、話している声は何も聞こえず部屋のベッドで蹲っているミレールに、ノアは何か必死に話していて、しばらくすると諦めたように部屋を出ていった。
その後に真っ暗な空間が現れる。
また声が聞こえて、誰かが暗闇の中で蹲っていて、自分がその様子をジッと見ている。
『……しも、……されたい……』
繰り返される悲痛な言葉。
おそらく泣いている誰か。
(どうして、ずっと泣いているの? なぜこんな真っ暗な場所にずっといるの? あなたは、一体――――)
近づくとその人物は振り返るのに、誰かわからないまま、そこで目を覚ました。
パチッと瞳を開けると体がじっとりと汗ばみ、流れるほどの額の汗を手で拭った。
(また、あの夢…………)
ゆっくりと体を起こし、体に溜まった疲労感と倦怠感に両手で顔を覆った。
(夢がまるで、現実のように生々しいですわ……特にミレールが男にっ…………。もう、それだけでも胸が引き裂かれて、わたくしまでおかしくなってしまいそうっ……!)
ミレールは言い知れない恐怖と不快なほどの嫌悪感に身震いし、顔を覆っていた手で裸の体を抱きしめた。
まだ部屋は薄暗く、日も昇っていない。
近くのサイドテーブルに置いてある水差しをコップに注ぐと、カラカラに乾いた喉を潤すように一気に水を飲み干した。
そして同じく置いてあった手拭いで顔や体の汗を拭いた。
一息ついたが、まだ不安が治まらない。
またベッドへ入り、隣で寝ていたノアに抱きついた。
「ん……」
ノアは一度寝てしまうと滅多に起きなかった。
まだ眠っていたが安心したくてノアの体にくっついていると、無意識なのか寝ぼけているのか、ノアがミレールの背中に腕を伸ばして抱きしめてくれる。
(はぁ……、ノアが……こうしてくれるだけで、とても安心いたしますわ。あんなに怖くて恐ろしかった気持ちが、ここまで安らぐのはどうしてなのでしょう……)
温かくて力強く腕に、引き締まった逞しい体、靭やかについた筋肉質な胸元に顔をつけると、ミレールの心も落ち着いていく。
一瞬で悪夢を消し去ってくれる、愛しくて優しい、誰よりも信頼できる旦那様。
(近頃、夢が鮮明すぎて……なぜ、こんな夢を見るのか、わかりませんが……あのミレールがいた部屋。どこかで見覚えがあるかと思いましたら、わたくしがオルノス侯爵家で使っている部屋でしたわ……)
それが一体、何を意味するのか。
どういうことなのか見当もつかないが、ミレールの中で漠然とした不安が払拭できず、ノアに抱きついたまま再び瞳を閉じた。
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