65 / 110
好きという気持ち
しおりを挟む
庭園の周りがまたシーン……と静まり返っていた。
聞こえるのはミレールの啜り泣く声と、鳥の囀りと、風の音だけ。
庭園の木の下でミレールの肩を掴んだまま立ち尽くしていたノアは、俯いて顔を覆って泣いているミレールを再び自分の腕の中に抱き寄せた。
「――俺は……、あんたが好きだ」
静かに語られていくノアの言葉に、ミレールは涙に濡れた瞳を大きく見開いた。
あまりにさり気なく言われた言葉に、聞き逃してしまいそうになった。
「初めは……たしかに義務や責任感もあった。……けど、今は違う」
ゆっくりと涙に濡れた顔を上げたミレールに、ノアは目を細めて愛しそうな視線を送っている。
ノアはさらに力を込め、ミレールの肩口に自分の顔を埋めていた。
「いつからか……ふとした瞬間に、あんたが今どうしてるか考えるようになってた……」
抱きしめられている腕の温もりをひどく切なく感じ、耳元で囁かれる切実な言葉は、ミレールの頑なだった心を次第に溶かしていく。
「側にいれば触れたいと思うし……城勤めが早く終わらないか考える時もある。こんな風に思うことなんて初めてだ」
「……っ」
「毎晩あんたを抱いてると……たまらなく、愛しい気持ちになる。あんたが俺のことしか考えられないようにしたくて、何度も繋がりを求めてしまうんだ」
「ノア……」
悲しみで押し潰されてしまいそうだった心に、一変して今度は、温かな気持ちが流れ込んでくる。
「あんたが欲しいものが何かわからないが……」
触れ合ってる体から、ノアの体温と共に鼓動も伝わってくる。
「俺にできることならなんでもする。……だから、頼むっ……一生、俺の妻でいてくれ」
「――っ!」
自分のものよりもさらに速く、忙しく動いているノアの心臓の音。
ぎゅうぅぅっ……と締め付けるように抱きしめているノアの腕が少し震えていた。
「……本当……に……私を?」
「あぁ」
「わたくしが……好き?」
「そうだ」
「本当、ですの? 責任感では、なく……?」
「そんなんじゃなく、好きだ。ミレールが好きなんだ。信じられるまで何度でも言ってやる。……あんたが好きだっ」
目の奥がずっとずっと熱くて、涙と嗚咽が止まらない。
「ふっ、ぅ……うぅっ! ひ……くっ……」
こんなに声を上げて思い切り泣くのは、子供の時以来かもしれない。
それほど、今まで報われなかった様々な想いが、ノアによって救われた気持ちになれた。
「……俺は、マクレイン殿下に忠誠を誓っている護衛騎士だ。だから、命をくれてやることはできない。……だが、心と体はミレール、あんたに捧げると誓おう」
涙でぼやけたノアの凛々しい顔がミレールに迫り、ゆらゆら揺れている瑠璃色の瞳が真っ直ぐに射抜いている。
「は、い。……私も、すき! ノアが……、すき、ですっ……」
しゃくり上げながらも、なんとか自分の気持ちを言葉に表した。
そのままミレールもノアの背中に腕を回し、思い切り抱きた。
遠慮もなく、力を込めてノアを欲するまま力を込めた。
「すげぇ……嬉しいっ! 俺も好きだ。あんただけだ」
抱きしめていた顔を上げて、ノアはミレールに深く口付ける。
「んッ……!」
聞こえるのはミレールの啜り泣く声と、鳥の囀りと、風の音だけ。
庭園の木の下でミレールの肩を掴んだまま立ち尽くしていたノアは、俯いて顔を覆って泣いているミレールを再び自分の腕の中に抱き寄せた。
「――俺は……、あんたが好きだ」
静かに語られていくノアの言葉に、ミレールは涙に濡れた瞳を大きく見開いた。
あまりにさり気なく言われた言葉に、聞き逃してしまいそうになった。
「初めは……たしかに義務や責任感もあった。……けど、今は違う」
ゆっくりと涙に濡れた顔を上げたミレールに、ノアは目を細めて愛しそうな視線を送っている。
ノアはさらに力を込め、ミレールの肩口に自分の顔を埋めていた。
「いつからか……ふとした瞬間に、あんたが今どうしてるか考えるようになってた……」
抱きしめられている腕の温もりをひどく切なく感じ、耳元で囁かれる切実な言葉は、ミレールの頑なだった心を次第に溶かしていく。
「側にいれば触れたいと思うし……城勤めが早く終わらないか考える時もある。こんな風に思うことなんて初めてだ」
「……っ」
「毎晩あんたを抱いてると……たまらなく、愛しい気持ちになる。あんたが俺のことしか考えられないようにしたくて、何度も繋がりを求めてしまうんだ」
「ノア……」
悲しみで押し潰されてしまいそうだった心に、一変して今度は、温かな気持ちが流れ込んでくる。
「あんたが欲しいものが何かわからないが……」
触れ合ってる体から、ノアの体温と共に鼓動も伝わってくる。
「俺にできることならなんでもする。……だから、頼むっ……一生、俺の妻でいてくれ」
「――っ!」
自分のものよりもさらに速く、忙しく動いているノアの心臓の音。
ぎゅうぅぅっ……と締め付けるように抱きしめているノアの腕が少し震えていた。
「……本当……に……私を?」
「あぁ」
「わたくしが……好き?」
「そうだ」
「本当、ですの? 責任感では、なく……?」
「そんなんじゃなく、好きだ。ミレールが好きなんだ。信じられるまで何度でも言ってやる。……あんたが好きだっ」
目の奥がずっとずっと熱くて、涙と嗚咽が止まらない。
「ふっ、ぅ……うぅっ! ひ……くっ……」
こんなに声を上げて思い切り泣くのは、子供の時以来かもしれない。
それほど、今まで報われなかった様々な想いが、ノアによって救われた気持ちになれた。
「……俺は、マクレイン殿下に忠誠を誓っている護衛騎士だ。だから、命をくれてやることはできない。……だが、心と体はミレール、あんたに捧げると誓おう」
涙でぼやけたノアの凛々しい顔がミレールに迫り、ゆらゆら揺れている瑠璃色の瞳が真っ直ぐに射抜いている。
「は、い。……私も、すき! ノアが……、すき、ですっ……」
しゃくり上げながらも、なんとか自分の気持ちを言葉に表した。
そのままミレールもノアの背中に腕を回し、思い切り抱きた。
遠慮もなく、力を込めてノアを欲するまま力を込めた。
「すげぇ……嬉しいっ! 俺も好きだ。あんただけだ」
抱きしめていた顔を上げて、ノアはミレールに深く口付ける。
「んッ……!」
97
お気に入りに追加
2,633
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる