45 / 110
代償
しおりを挟む
「……あんたって、やっぱ変わってるわ」
王宮の長い廊下を歩きながら、ノアは呆れたような ふと見上げると、隣で歩いているノアの顔がわずかに赤くなっているように見える。
ノアが赤くなるなんてまさか……と思いながら、通り過ぎようとした脇の花壇を見て、ミレールは思わず足を止めた。
(あっ……! おそらくここですわ! 小説に書いてあった感じですと、ここで間違えありません!)
突然足を止めたミレールを、不思議にノアが見ている。
「どうした?」
「あの、今……わたくしも趣味で、侯爵家の庭に花壇を作ってまして……、あそこにも花壇を見かけて……、その、少し、見学させていただいても、よろしいですか?」
なぜミレールがわざわざこんなことを言っているかというと、実はここに侵入者の証拠が隠されているからだ。
この犯人は暗殺ギルドの人間で、狙いはもちろんレイリンだった。
その暗殺ギルドに依頼したのは、同じ王太子妃候補で有力な公爵家の娘だった。
レイリンはマクレインとの仲が非常に良かったため、ミレールを含めて他の候補者からも狙われ、度々危険に晒されていたのだ。
「まぁ、構わないが」
とくに嫌な顔もせず、ノアはミレールを連れて花壇まで近づいた。
そこは薔薇で出来た垣根で周りが囲まれ、まだ成長途中の花の苗が植えてあった。
「まぁ、これはグラジオラスの苗ですわね! この苗は成長させるのがとても難しいのに、さすが王宮の庭師は腕が違いますわね」
(たしか、この花壇の後ろにある薔薇で出来た垣根の奥に、ギルドのマークが刻まれたペンダントが落ちているはずですわっ!)
しゃがみ込んで賛辞を送っているミレールの隣で、ノアもしゃがみながら苗を見ていた。
「俺には何がなんだかさっぱりわからないが……」
ノアの気が苗へと移っている内に、ミレールはそっと立ち上がってすぐ後ろにある薔薇の垣根を急いで探す。
(どこっ?! 早く見つけなくてはっ……!)
ざっと垣根を見渡し、急ぎながらも隈なく探す。
そして垣根の奥の中心部に光るものを見つけた。
(あっ! ありましたわ!)
その光るものに向かって手を最大限伸ばすが、薔薇の棘がミレールの手や腕を傷つけていく。
(い、痛いッ……! でも、あと、少しっ……!)
「――! 何をしてるっ!?」
後ろを振り向いたノアが、ミレールの行動に声を荒らげている。
慌てたようにミレールの体を掴み、垣根から引き離した。
「あっ!」
「なぜこんなことをッ?! 傷だらけじゃないか!」
ノアはミレールの傷ついた腕を掴み、所々破れて血の滲んでいる腕や手を見て、顔を歪めている。
「髪飾りが……風で、飛んだので取ろうとしたら、少し引っかかってしまって……」
ノアは咄嗟にミレールを抱き上げて、ものすごい速さで走り出した。
「――キャッ!」
「しっかり掴まってろッ!!」
ミレールは慌ててノアの首にしがみついた。
ノアはミレールを抱えて王宮の廊下を脇目も振らずに駆け抜けた。
王宮の長い廊下を歩きながら、ノアは呆れたような ふと見上げると、隣で歩いているノアの顔がわずかに赤くなっているように見える。
ノアが赤くなるなんてまさか……と思いながら、通り過ぎようとした脇の花壇を見て、ミレールは思わず足を止めた。
(あっ……! おそらくここですわ! 小説に書いてあった感じですと、ここで間違えありません!)
突然足を止めたミレールを、不思議にノアが見ている。
「どうした?」
「あの、今……わたくしも趣味で、侯爵家の庭に花壇を作ってまして……、あそこにも花壇を見かけて……、その、少し、見学させていただいても、よろしいですか?」
なぜミレールがわざわざこんなことを言っているかというと、実はここに侵入者の証拠が隠されているからだ。
この犯人は暗殺ギルドの人間で、狙いはもちろんレイリンだった。
その暗殺ギルドに依頼したのは、同じ王太子妃候補で有力な公爵家の娘だった。
レイリンはマクレインとの仲が非常に良かったため、ミレールを含めて他の候補者からも狙われ、度々危険に晒されていたのだ。
「まぁ、構わないが」
とくに嫌な顔もせず、ノアはミレールを連れて花壇まで近づいた。
そこは薔薇で出来た垣根で周りが囲まれ、まだ成長途中の花の苗が植えてあった。
「まぁ、これはグラジオラスの苗ですわね! この苗は成長させるのがとても難しいのに、さすが王宮の庭師は腕が違いますわね」
(たしか、この花壇の後ろにある薔薇で出来た垣根の奥に、ギルドのマークが刻まれたペンダントが落ちているはずですわっ!)
しゃがみ込んで賛辞を送っているミレールの隣で、ノアもしゃがみながら苗を見ていた。
「俺には何がなんだかさっぱりわからないが……」
ノアの気が苗へと移っている内に、ミレールはそっと立ち上がってすぐ後ろにある薔薇の垣根を急いで探す。
(どこっ?! 早く見つけなくてはっ……!)
ざっと垣根を見渡し、急ぎながらも隈なく探す。
そして垣根の奥の中心部に光るものを見つけた。
(あっ! ありましたわ!)
その光るものに向かって手を最大限伸ばすが、薔薇の棘がミレールの手や腕を傷つけていく。
(い、痛いッ……! でも、あと、少しっ……!)
「――! 何をしてるっ!?」
後ろを振り向いたノアが、ミレールの行動に声を荒らげている。
慌てたようにミレールの体を掴み、垣根から引き離した。
「あっ!」
「なぜこんなことをッ?! 傷だらけじゃないか!」
ノアはミレールの傷ついた腕を掴み、所々破れて血の滲んでいる腕や手を見て、顔を歪めている。
「髪飾りが……風で、飛んだので取ろうとしたら、少し引っかかってしまって……」
ノアは咄嗟にミレールを抱き上げて、ものすごい速さで走り出した。
「――キャッ!」
「しっかり掴まってろッ!!」
ミレールは慌ててノアの首にしがみついた。
ノアはミレールを抱えて王宮の廊下を脇目も振らずに駆け抜けた。
93
お気に入りに追加
2,633
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

婚約者が巨乳好きだと知ったので、お義兄様に胸を大きくしてもらいます。
鯖
恋愛
可憐な見た目とは裏腹に、突っ走りがちな令嬢のパトリシア。婚約者のフィリップが、巨乳じゃないと女として見れない、と話しているのを聞いてしまう。
パトリシアは、小さい頃に両親を亡くし、母の弟である伯爵家で、本当の娘の様に育てられた。お世話になった家族の為にも、幸せな結婚生活を送らねばならないと、兄の様に慕っているアレックスに、あるお願いをしに行く。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる