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幼馴染との結婚 (ノア視点)

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 珍しく愁傷な幼馴染。

 自らの非を認めることもせず、謝ることも譲ることもしなかったミレールが、仕切りに責任を取ると言ったノアの意見を突っぱねた。
 だが、結果がどうであれ一夜を共にし純潔を奪ってしまったのなら、婚姻を結ぶほかない。

 ミレールが帰ってしまった後、ノアもオルノス侯爵邸に戻り、渋々一連の出来事を両親へと話した。

『よしっ! 良くやったぞ、ノアっ!!』
『ようやく念願が叶うのね~!! ミレールが私の娘になるわっ!』

 両親の喜び様を見て、ノアは頭が痛くなった。
 そう、何を隠そうこの両親は、ずっと昔からこうなることを望んでいたからだ。
 そのために母ノクターンはエボルガー侯爵邸に何度も通い、ノアとミレールを引き合わせていた。

 これからのことを考えるとさらに頭が痛くなるノアだが、自分があのミレールを制御することができるのかとうんざりしていた。
 
(まぁ、体の相性は悪くないし……子供でもできれば、あの性格も少しは落ち着くか……?)

 この時のノアはミレールの変化にまだ気づいていなかった。

 急いでエボルガー侯爵家に求婚状を送り、一悶着ののち、ようやく式も終え、ミレールがオルノス侯爵邸へ嫁いでくる日。

『ノアぁ、お前は一体何をトチ狂ってあの女に手を出したんだぁ!?』
『オルノス卿も相当酔っていたんですって。察してあげてくださいよっ!』
『しかし不思議だよなぁ? あれだけ殿下に入れ込んでベタ惚れだったミレール嬢が、犬猿の仲だったノアとなんてさぁ……』

 同じ護衛騎士に属している仲間たちからは散々な言われようだった。
 ノアは終始黙秘を通していたが、あの日のミレールはたしかにいつもの傲慢な彼女ではなかった。

『やぁノア、結婚おめでとう! 意外なことに私も驚いてしまったよ!』

 結婚の報告を上げたマクレインは、いつも以上に機嫌が良かった。
 マクレインはミレールに長年悩まされていたこともあり、目の上のたんこぶが無くなったせいか、どこか晴れやかな顔をしていた。

『まさか先を越されてしまうとはね……、とにかくお幸せに!』
『はあ……、殿下の方が幸せそうに見えますが……』
『はははっ! 気のせいだよ、ノア!』

 早めに帰って来いと両親に釘を刺されていたが、質問責めにあっていたため、気づいた時には定時を超えていた。

 帰宅時間もとうに過ぎ、ノアは憂鬱な気分で帰宅した。
 すでに晩餐の時間になり、着替えを済ませて食卓の席へと移動する。

(――っ!)

 両親と共に、席についていたミレールを見てノアは驚いた。
 そこに座っていた彼女が、まるで昔に戻ったように清楚で可憐な女性に変わっていたからだ。

 マクレインを意識して着ていた赤いドレスは落ち着いた色へと変わり、気合を入れて厚く化粧をしていた顔は薄化粧になり、以前の穏やかな美しい顔へと変化していた。
 
『ノア。お勤め、ご苦労さまです』

 初めて聞いたミレールからの労りの言葉と、儚げに浮かべる笑顔。
 あの傲慢だった幼馴染が、少し見ない内に落ち着いた大人の女性へと変わってしまった。

『女性はね、男によって変わるのよ。だからミレールをここまで変えたのは貴方ノアのおかげってこと!』

 ノアは母親の言葉に簡単に頷くことはできなかった。

(それにしては変わりすぎだろう。おそらく、何かを企んでいるに違いない。……俺を騙して、殿下に近づこうって魂胆か?)

 疑う心を拭えないまま、迎えた初夜。

 そこでノアはミレールの口から信じられない言葉を聞くこととなる。

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