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登城

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 翌朝。
 起きた時にもうノアはいなかった。

 あれだけ毎晩ミレールを夜遅くまで攻めているにも関わらず、よく朝早く起きて登城できるものだと感心してしまう。
 単にミレールの体力がないだけなのかもしれないが、それでもノアの体力についていくのはかなり大変だと最近感じていた。

(昨日は、しないと思ってましたのに……ノアは義務だと思っているのか、きっちりとわたくしを夢中にさせてから就寝してますもの……)

 ミレールは顔を赤らめてから長いため息をついている。
 まさかここまで充実した性生活を送れるとは露ほども思っていなかったミレール。
 また昨夜のことを思い出し、そのまま回想にふけるところだった。
 
(ダメね。そろそろ準備をしなくては、ノアに差し入れを持って行くのに、厨房もお借りしたいし)

 重い腰を動かし、床に無造作に置かれたナイトドレスを身に着けた。


 ◆◇◆

 
 自分の部屋へ戻り、ドレッサーの前でアルマと共にして支度をしていると、ミレールの栗色の長い髪を結っていたアルマがにこにこしている姿が鏡に映っていた。

「アルマ、どうしたの? ずいぶん機嫌がいいのね?」
「それはそうですよ。結婚された当初はどうなることかと思いましたが、お嬢様がノア様にとても愛されているようで……! アルマはとても安心いたしました」
「あ、愛っ?! な、なんのことかしら?!」
「いえ、ですから……毎晩ノア様の部屋へ趣き、次の日もお昼に近い時間に部屋へ戻って来られるじゃありませんか。しかもお嬢様にここまで自分のモノだ、という印まであちこちに刻まれていますもの」
「――っ! それはっ!」

 即座に否定したかったが、たしかに昨日ノアはそのようなことを言っていた。
 ノアの与える快楽に溺れていて、はっきりとは覚えていないが、自分のモノだとわかるように……みたいなことは言っていたと思う。
 思い出した途端、かぁーと顔が赤くなり思わず俯いたミレールに、アルマは一層嬉しそうな顔を見せている。

「の、ノアはそういうつもりは、ありませんの! ただ、わたくしが勝手に行動しないように……首輪みたいなものですわ」
「ふふふ、わかりました。なんにしろ、良かったです。お嬢様がとても良い方へ変わられて!」
「そうかしら……?」
「えぇ! ですから気合を入れてお洒落にしていきましょう! この際ですから美しい髪も縦ロールにして、服装も目立つようゴージャスにしていってはいかがでしょう?!」

 アルマは変に気合が入ったのか、ミレールをとんでもない姿にしようとしている。

「も、もう結婚しましたし、これからは落ち着いたよそおいでいきますわ」

 ミレールは普段から長い髪を下ろしていた。それを縦ロールになどしてしまえば、本当に物語に出てくる悪役令嬢になってしまう。それだけはどうにか避けたかった。

「そうですか……」

 シュンッと残念そうにしていたアルマを説き伏せ、指示通りの髪型に結い上げてもらう。

 ようやく支度が整い、急いで作った差し入れもカゴに入れて準備が整った。

「ではおば様、行ってまいりますわ」
「えぇ、気を付けてね! その格好、とても貴女によく似合っているわ!」
「ありがとうございますっ!」

 それからアルマと共に馬車へと乗り、ノアの待つ王宮へと向かった。

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