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予想外の展開
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「あともう一つ……わたくしは、貴方の知っているミレールではありません」
膝の上で握り締めていた手が震えてしまう。
ミレールの発言を聞いていたノアは案の定、訳のわからない顔をしていた。
「――はっ? 何を、言っているんだ?」
「晩餐の時の話の答えです。……わたくしがこうして変わったのは貴方のおかげではなく、元々のこの身体の持ち主と、魂が入れ代わってしまったせいなのです」
「……なんの話だ? そんなことで俺を欺けるとでも思っているのか?」
「欺こうとも、信じてもらおうとも思ってませんわ。ですが、それが事実なんです。貴方がわたくしを嫌っているのは百も承知ですもの……。ですから、この提案をさせていただいております」
「――」
「一年以内であれば白い結婚、もしくは子宝に恵まれなければ離婚できます。そうすれば貴方は晴れて自由の身。貴方ほどの方であれば、経歴に多少傷がつこうとも問題ないはずですわ。むしろ、わたくしと離婚したあとに娶られる方はさぞ優越感を抱けるでしょう……」
ミレールはミランダの娘。
社交界の華といわれたミランダの娘と離婚したあとで娶った女性であれば、これからの社交の場でも優位に立てるだろう。
「……俺はきちんと責任を取ると言っただろ。散々悩んで、あんたと婚姻を結ぶことを決意したんだ。今さら取り消すことも、ましてや離婚することもしない」
ノアはすでに腹が決まっているのか、意外なほど平然と話している。
「ですが……それでは……」
「それに両親にも言われている。早く子供を作れとな。あんたとの子供ができるまで、ずっと同衾しろと家長命令まで出されているんだ」
「ず、ずっと同衾……!?」
要するに孕むまで毎日子作りしろ、と言っているようなものだ。
思いも寄らない発言に、ミレールの顔が見る間に赤く染まっていく。熱くなった顔を抑えるように両手を頬に添えた。
(こ、侯爵夫妻はなんという無茶な命令を出してますのぉ!? ノアと毎晩……ど、同衾しろなどとっ……!)
「ま、そういうわけだ。元々俺があんたを抱いたことが原因だしな。……あんたは嫌なのかもしれないが、こればかりは従ってもらうしかない」
さらに言葉を付け加えるノアに、ミレールは瞠目する。
あまりにも予想外の展開に狼狽えてしまう。
これから杏の頃のように冷え切った夫婦生活を送るものだとばかり思っていたのに、物事がとんでもない状況に進んでいってしまった。
膝の上で握り締めていた手が震えてしまう。
ミレールの発言を聞いていたノアは案の定、訳のわからない顔をしていた。
「――はっ? 何を、言っているんだ?」
「晩餐の時の話の答えです。……わたくしがこうして変わったのは貴方のおかげではなく、元々のこの身体の持ち主と、魂が入れ代わってしまったせいなのです」
「……なんの話だ? そんなことで俺を欺けるとでも思っているのか?」
「欺こうとも、信じてもらおうとも思ってませんわ。ですが、それが事実なんです。貴方がわたくしを嫌っているのは百も承知ですもの……。ですから、この提案をさせていただいております」
「――」
「一年以内であれば白い結婚、もしくは子宝に恵まれなければ離婚できます。そうすれば貴方は晴れて自由の身。貴方ほどの方であれば、経歴に多少傷がつこうとも問題ないはずですわ。むしろ、わたくしと離婚したあとに娶られる方はさぞ優越感を抱けるでしょう……」
ミレールはミランダの娘。
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「……俺はきちんと責任を取ると言っただろ。散々悩んで、あんたと婚姻を結ぶことを決意したんだ。今さら取り消すことも、ましてや離婚することもしない」
ノアはすでに腹が決まっているのか、意外なほど平然と話している。
「ですが……それでは……」
「それに両親にも言われている。早く子供を作れとな。あんたとの子供ができるまで、ずっと同衾しろと家長命令まで出されているんだ」
「ず、ずっと同衾……!?」
要するに孕むまで毎日子作りしろ、と言っているようなものだ。
思いも寄らない発言に、ミレールの顔が見る間に赤く染まっていく。熱くなった顔を抑えるように両手を頬に添えた。
(こ、侯爵夫妻はなんという無茶な命令を出してますのぉ!? ノアと毎晩……ど、同衾しろなどとっ……!)
「ま、そういうわけだ。元々俺があんたを抱いたことが原因だしな。……あんたは嫌なのかもしれないが、こればかりは従ってもらうしかない」
さらに言葉を付け加えるノアに、ミレールは瞠目する。
あまりにも予想外の展開に狼狽えてしまう。
これから杏の頃のように冷え切った夫婦生活を送るものだとばかり思っていたのに、物事がとんでもない状況に進んでいってしまった。
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