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帰宅
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王宮の馬車乗り場にある侯爵家の馬車の中で御者は寝ていた。ノックの音に気づき、御者は飛び起きる。
「ひぇっ! あっ……、お嬢様!! ご無事でしたか?!」
「えぇ……。言ったでしょ? 朝までは帰らないと思うと」
「ですが……お嬢様にもしものことがあったら、私が旦那様にお叱りを受けますので!」
御者もミレールの父が怖いのか、馬車から降りて涙目になりながらミレールを見ていた。
「お父様にはわたくしからきちんと説明いたしますわ。……ひとまず馬車を出してちょうだい。疲れているの」
「これは、失礼をっ! すぐに出発いたします!!」
馬車に乗り込み、ミレールはふかふかの背もたれに体を預けて一息ついた。
(はぁ……これからどうしましょう。ノアとあんなことになってしまって、これでは原作からだいぶ外れてしまいましたわ……)
ミレールは馬車の中でまた盛大にため息をつく。
疲れた体を休ませながら、ボーっと窓の景色を見て昨夜の出来事を思い返す。
ノアはミレールだと気づくことがなかったため、口調も柔らかく笑顔も見せてくれていた。
体に触れてくる骨張った手は見た目に反してとても繊細で丁寧に動き、ミレールをみつめる瞳も優しさであふれていた。
ノアの身体も騎士団で鍛えていて綺麗に筋肉がつき、手足も長くてスタイルもとても良くて、あの身体に抱かれたのかと思うと、それだけで幸せな気分になれた。
(それにしても……昨日のノアは本当に、すごかったわ……。ノアは腕っぷしも強いけれど……アッチのほうもとても強くて……)
そこまで考えて恥ずかしさに一人頬を赤らめ、ミレールは何も考えずバッと体を起した。
「イタっ……!」
昨日酷使した秘所と腰がズキッと痛む。腰を擦り、再び背もたれに背中を預けた。
(あんなこと、もうこれっきりですわ……おそらく今回で、さらにノアに嫌われてしまいましたから……)
馬車に揺られながら、ミレールはエボルガー侯爵邸に着くまでの間、どうしようかとずっと悩んでいた。
◇◆◇
「ミレール! こんな時間に帰宅するとはっ! 一体何があったのだ!?」
侯爵邸に着いてすぐ、待ち構えていた父親に物凄い剣幕で問いただされる。
「そ、そのドレスはどうしたのだっ!? 背中が裂かれて着乱れているでないかっ!?」
兄が二人いるミレールは、末っ子で紅一点。
しかもミレールは、いい年の父親が毎日のように愛を囁やきイチャイチャしている母親と瓜二つ。
そんなミレールを父は目に入れても痛くないほど溺愛していたのだ。
父は四十過ぎだが渋めのイケオジだった。ミレールと同じく栗色の髪に濃いめの顔立ち、瞳の色は緑色だが耳の形や眉の辺りはミレールと似ている。
「ただいま帰りましたわ、お父様。遅くなりまして、申し訳ありません。コルセットがキツくて途中で具合が悪くなってしまいましたの……ですから王宮の侍女にお願いして、コルセットの紐を切ってもらっただけですわ」
「しかし、そのような格好で……! 着替えも用意されなかったのか?!」
ミレールの話に、父はものすごい剣幕で捲し立てて話している。
「いえ、着替えも勧められましたが、気分が悪すぎて動けなかったので断りましたの。部屋で休んでいたら寝てしまって、いつの間にか朝になっていたので慌てて帰宅したまでですわ」
にこりと笑うミレールに、父のテンションがようやく平常に戻っていく。
「そうか……具合はもういいのか?」
「まだ少し、体が怠くて……お父様には申し訳ございませんが、少し横になってきてもよろしいかしら?」
「なにぃ!? まだ具合が悪いのか!? よしっ!!」
「きゃあっ! お、お父様?!」
父はミレールを勢いよく抱え上げ、そのままミレールの部屋へと走り出すのだった。
「ひぇっ! あっ……、お嬢様!! ご無事でしたか?!」
「えぇ……。言ったでしょ? 朝までは帰らないと思うと」
「ですが……お嬢様にもしものことがあったら、私が旦那様にお叱りを受けますので!」
御者もミレールの父が怖いのか、馬車から降りて涙目になりながらミレールを見ていた。
「お父様にはわたくしからきちんと説明いたしますわ。……ひとまず馬車を出してちょうだい。疲れているの」
「これは、失礼をっ! すぐに出発いたします!!」
馬車に乗り込み、ミレールはふかふかの背もたれに体を預けて一息ついた。
(はぁ……これからどうしましょう。ノアとあんなことになってしまって、これでは原作からだいぶ外れてしまいましたわ……)
ミレールは馬車の中でまた盛大にため息をつく。
疲れた体を休ませながら、ボーっと窓の景色を見て昨夜の出来事を思い返す。
ノアはミレールだと気づくことがなかったため、口調も柔らかく笑顔も見せてくれていた。
体に触れてくる骨張った手は見た目に反してとても繊細で丁寧に動き、ミレールをみつめる瞳も優しさであふれていた。
ノアの身体も騎士団で鍛えていて綺麗に筋肉がつき、手足も長くてスタイルもとても良くて、あの身体に抱かれたのかと思うと、それだけで幸せな気分になれた。
(それにしても……昨日のノアは本当に、すごかったわ……。ノアは腕っぷしも強いけれど……アッチのほうもとても強くて……)
そこまで考えて恥ずかしさに一人頬を赤らめ、ミレールは何も考えずバッと体を起した。
「イタっ……!」
昨日酷使した秘所と腰がズキッと痛む。腰を擦り、再び背もたれに背中を預けた。
(あんなこと、もうこれっきりですわ……おそらく今回で、さらにノアに嫌われてしまいましたから……)
馬車に揺られながら、ミレールはエボルガー侯爵邸に着くまでの間、どうしようかとずっと悩んでいた。
◇◆◇
「ミレール! こんな時間に帰宅するとはっ! 一体何があったのだ!?」
侯爵邸に着いてすぐ、待ち構えていた父親に物凄い剣幕で問いただされる。
「そ、そのドレスはどうしたのだっ!? 背中が裂かれて着乱れているでないかっ!?」
兄が二人いるミレールは、末っ子で紅一点。
しかもミレールは、いい年の父親が毎日のように愛を囁やきイチャイチャしている母親と瓜二つ。
そんなミレールを父は目に入れても痛くないほど溺愛していたのだ。
父は四十過ぎだが渋めのイケオジだった。ミレールと同じく栗色の髪に濃いめの顔立ち、瞳の色は緑色だが耳の形や眉の辺りはミレールと似ている。
「ただいま帰りましたわ、お父様。遅くなりまして、申し訳ありません。コルセットがキツくて途中で具合が悪くなってしまいましたの……ですから王宮の侍女にお願いして、コルセットの紐を切ってもらっただけですわ」
「しかし、そのような格好で……! 着替えも用意されなかったのか?!」
ミレールの話に、父はものすごい剣幕で捲し立てて話している。
「いえ、着替えも勧められましたが、気分が悪すぎて動けなかったので断りましたの。部屋で休んでいたら寝てしまって、いつの間にか朝になっていたので慌てて帰宅したまでですわ」
にこりと笑うミレールに、父のテンションがようやく平常に戻っていく。
「そうか……具合はもういいのか?」
「まだ少し、体が怠くて……お父様には申し訳ございませんが、少し横になってきてもよろしいかしら?」
「なにぃ!? まだ具合が悪いのか!? よしっ!!」
「きゃあっ! お、お父様?!」
父はミレールを勢いよく抱え上げ、そのままミレールの部屋へと走り出すのだった。
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