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五十一

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 隅から隅まで全部洗います!

 お風呂で泡立てた石鹸でしっかり体を洗い、湯船で温まり落ち着き、リラに紅茶を入れてもらっていた。

 きっちりした乗馬服から、ゆったりしたドレスに着替えて。
 お風呂でリラックスしてほっこり温まった体と、1人掛けのソファーのふんわり感も加わり、瞼が重くなってくる。

 ソファーに埋もれて、うとうとしていたらしく。
 お風呂の後片付けを終えて、戻って来たリラは私を優しく揺すり起こした。

「風邪をひかれますよ、ロレッテお嬢様。しばらくベッドでお休みになってはいかがでしょうか?」

「んっ……ふわぁ、そうさせてもらうわ」

 眠気まなこの私は、リラに手を引かれてベッドに移動しようとしたとき、コンコンと扉が叩かれた。
 それに返事を返すと、再び目を覚まされたオルフレット様が私を呼んでいる、と伝えられる。

「オルフレット様が呼んでいるのね。リラ、執務室に行って来るわ」

「かしこまりました。私は旦那様と奥様の手伝いに向かわせていただきます」

「わかりました、何かあったらリラを呼ぶわね」

 部屋を後にして彼がいる執務室に向かった。



 ♢



「ロレッテです、オルフレット様、お呼びですか?」

 執務室で声をかけて仮眠室の扉を叩き中に入ると。
 部屋の中に、アルカさんとシルベスター君の姿はなく、彼1人だった。

「来てくれてありがとう、ロレッテ」

 オルフレット様はベッドの横をぽんぽん叩き、ここにおいでと私を呼ふ。
 呼ばれて淵に座ると、彼は何かに気が付いたのか私の顔を覗き込んだ。

「少しロレッテの目が赤い……休んでいる所を呼んでしまったようだね」

「お気にならさずに。呼ばれたら、この様に直ぐに来ますわ。オルフレット様、体の調子はいかがですか?」

「頭がまだぼーっとしてる感じかな? 君の顔を近くで見れば治るかも」

 えっ? 驚く隙に手を引かれてふんわり唇を奪われた。

「んっ……? オル…フレッ……ト様?」

「柔らかくて、甘い唇だ……」

 ーーほんのり染まる赤い頬に欲情した。さっきの姿も、いまのドレス姿も可愛い、全てが可愛い、私だけのロレッテ。

(オルフレット様、はっ、激しい。キスも声も激しいですわ……息が、で、きない)

 苦しいと彼の胸に叩き伝えても。
 いくどなく降りそそぐキスは止めてもらえず、私を思う彼の気持ちはさらに大きくなった。


 ーーもっとロレッテを食べたい、全てを奪いたい。


(もう、食べられてます。あなたにがぶがぶ食べられてますわ、これ以上は無理です……)

 ちゅっと音を出して唇が離れる。
 はぁ、はぁ息の上がる私を見て、彼は満足げに微笑んだ。

「ごめん……身体中を真っ赤にしてしまったね、可愛い」

「うっ⁉︎ ……オルフレット様!」

「怒った顔もいいね、抱きしめてもいい?」

 あれだけしておいて、いまさら抱きしめていいって聞くのですか?

「嫌です、だめです」

「え、だめって、ロレッテ?」

 そんなに驚いた顔をしなくても、がっかりした顔もしないでいいの。

 だって

「私がオルフレット様を抱きしめるのですもの」

 彼を引き寄せて胸に優しく抱きこんだ。
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