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四十九

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 2人きりになった仮眠室……オルフレット様はアルカさんとシルベスター君がいなくなると、私をもっと力強く抱きしめた。

「私のロレッテだ……目の前が真っ暗になり倒れる寸前、ロレッテに2度と会えないと思った。こうして、また君を抱きしめれて私は嬉し……い……っ、」

 涙声だわ。

「私もですわ、本当に目を覚まされてよかった」

 彼の涙声を聞き、胸がいっぱいで何も考えなくなり、気持ちだけが先に動く。
 嬉しくって、彼の胸の中で思い存分に甘えた。

 ーーあぁロレッテとキスしたい。

(えっ?)

 オルフレット様の心の声が聞こえたような気がして、見つめると彼が近付く気配を感じた。

 ダメっ! 猫が嫌がるときにするポーズで止めてしまった。

「ほれっ……て?」

「あのオルフレット様ごめんなさい。私だってキスしたいですわ、でもいまは無理なの。後で綺麗になった私と存分にしてください」

「ほぉ存分にか……ロレッテ、逃げるなよ」

 はい、と言う代わりに彼の頬に自分の頬を付けた。

 ーーくっ、もっとロレッテと触れていたいけど、なんだか眠い……な。

(オルフレット様?)

 どうやら、眠ってしまわれたみたいだ。


 ♢


 眠ってしまった、彼の布団を直して側に置かれた椅子に座った。

(やはり、少し頬がやつれているわ)

 彼の頬に手を置いた。


「オルフレット様、ロレッテ様、戻りました」
 
「戻ったよー!」

 執務室の扉が開き、カウサ様と他の方の診察を終えて仮眠室にアルカさんとシルベスター君が戻ってきたようだ。

 私はオルフレット様が眠ってしまったこと伝えると、彼女は診察にしてこう伝えた。
 
「ロレッテ様、まだ体からサンム草の毒素が抜けきっておりませんので、2、3日は目を覚ましたり眠ったりを繰り返すと思われます」

「2、3日ですか、わかりました」

 アルカさんと話す私にシルベスター君が近付き腕に鼻を押し当てた。

「っ! どうしたの、シルベスター君?」

「後は僕と師匠が見てるから、ロレッテはいまのうちにご飯とお風呂済ませておいでよ。匂いが気になるんでしょ?」

 匂いとお風呂という言葉に反応してしまう。ここに専門医のアルカさんのシルベスター君もいるから、そのお言葉に甘えよう。

「ありがとう、シルベスター君。お風呂に入ってくるね」

「アルカさんよろしくお願いします」

 オルフレット様にお願いして、執務室を出て王城の浴室を借りる為にこの城の何処かにいる、メイドのリラを探すことにした。
 王城の中で、忙しく働く公爵家の使用人を見つけて、話しかけリラの場所を聞いた。

「お帰りなさいませ、ロレッテお嬢様。リラはいま調理場でシェフの手伝いをしております」

「調理場にいるのね、ありがとう」

 聞いた通りに調理場に向かうと、そこには椅子に座り奥で野菜を剥くリラの姿が見えたのだけど。

 屋敷では調理に入る許可はお父様にとってあるけど、王城の調理場に入る許可は取っていないので、中で働くシェフにリラを呼んでもらうことにした。

「忙しいところに失礼いたしますわ、この中にいるリラを呼んでください」

 入り口で呼びかけると、調理場の中で見慣れた1番コック帽の高い男性が、私に頭を下げた。

「これはロレッテお嬢様、お帰りになったのですね。リラ、心配していたお嬢様が戻ったぞ!」

「えっ、ロレッテお嬢様がお戻りになったのですか!」

 カランと何か落ちる音が聞こえて、ドタドタと走る音がした。
 調理場は走るのが禁止だと周りの注意も聞かずに彼女は走り、入り口に立つ私に抱きついたのだった。
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