56 / 70
四十七
しおりを挟む
お父様は私がいなくなって1週間経ったとおっしゃった。
「あのーお話し中、失礼いたします。お嬢様は王城からお屋敷、森から山の山頂、森から私の家、その家から森へと転送を何度かされて時空の歪みに触れて、1週間もの時が経ってしまったのですよ」
「アルカさん」
「専門医様」
私たちの話し声が中まで聞こえたらしく、執務室にいたアルカさんとシルベスター君が現れた。
この香りは女神の涙を焚いた解毒剤の香りなのね。
(良かった、完成したんだ)
「一瞬で転送、移動したように見えても、そのつど時空の歪みに何度か触れたので、ロレッテ様が1日と感じていても、実質1週間経っていたということです」
「時空の歪みですか……私にはよく分かりませんが。多分専門医様に説明されても分からないですね」
私もわからないわ。
「いいのですよ、分からなくても仕方がないことです。それよりもグラッド公爵夫妻、ロレッテ様に話があります。重要な話ですので場所を移動致しましょう。シルベスター君はここに残り、オルフレット王子を見ていてください」
「はい、師匠」
執務室にシルベスター君を残して、私たちは応接間へと場所を変えた。
「専門医様、私たちに話とはなんでしょうか」
2人掛けのソファーにお父様とお母様、私とアルカさんでテープを挟み座った。
彼女がいまからは何を話すのかわからないけど、さっきまでとは違う声のトーンに緊張が増した。
「今回、ロレッテ様の稀な力のおかげでこの国の王子、側近、城の使用人が助かりました」
そう私の両親に言うと、オルカさんはテーブル近くまで深く頭を下げた。
私のおかげ?
「ロレッテの力? それはどう言うことでしょうか?」
「公爵様のお嬢様には特別な力が宿っております。今回の事件は隣国で栽培されている、サンム草という草の過剰摂取によるものです」
「えっ、あのリラックスが出来るお香がですか?」
お母様は肩を震わせ驚いた。
それもそうだ、王都ではサンム草のお香はリラックスが出来ると売られ、貴族たちの間でも流行りのお香。
「そうです、普通に使えばなんでことのない草です。しかし大量に焚き、その煙を吸うと深い眠りに陥るという草なのです。私がその効果を見つけた1人。私しか知らないサンム草の別効能。それが何者かが、何故か知り、悪用したものと考えれます」
「それは誰だ? 城の中にいるものか?」
「いま調べている途中ですので、お答えすることはできません。私はもしものことを考えて万能薬草を見つけました。今炊いているのがその女神の涙という草です」
アルカさんしか知らないサンム草の効果。
誰がどうやって知ったの?
図鑑は王都の古本屋でオルフレット様が購入した。
隠し文字のとこは私と著書のアルカさんとシルベスター君しか知らない、
「私でさえもまだ本物を見つけるのに手間取るなかで、一発でそれを見抜いたのがロレッテ様です。ほんとうなら1ヶ月いや半年かかっていたかもしれません」
「アルカさんでも、ですか?」
「怪我を治し、毒も麻痺も解除する万能薬草、あれの周りに咲く見た目も同じな偽物が多い。ロレッテ様がシルベスター君に案内された場所は私の訓練場所だったのですよ」
訓練?
「ロレッテ様も見たでしょう? 温室に咲く女神の涙の草の中にも偽物が混じっていたことを……私では見分けが難しく、薬を作る時は1本ずつ採り作りながら、本物かそうでないかを見分けます。それなのにあなた様は確実に本物の草を10本お採りになったのです」
「娘がですか……」
お父様が驚くのもわかる、私も驚いているもの。
温室の草を見た時に偽物があったから、まだアルカさんに試されているのだと思っていたわ。
「この力はもしかすると争いの火種になる。他の者、他の国にバレてはならない、特別なものだと私は考えます」
アルカさんの言葉に、お父様とお母様は深く頷く。
「わかっております、他言無用ですな」
「えぇ娘を守るため、誰にも言いませんわ」
「そのようにお願いします」
みんなが息を呑んだとき、ガリガリと応接間の扉が乱暴に叩かれた。
「師匠、師匠、ロレッテ、目を覚ましたよ! オルフレット君が目をしたよ!」
オルフレット様が目を覚ました!
私は応接間を出て、執務室へと走った。
「あのーお話し中、失礼いたします。お嬢様は王城からお屋敷、森から山の山頂、森から私の家、その家から森へと転送を何度かされて時空の歪みに触れて、1週間もの時が経ってしまったのですよ」
「アルカさん」
「専門医様」
私たちの話し声が中まで聞こえたらしく、執務室にいたアルカさんとシルベスター君が現れた。
この香りは女神の涙を焚いた解毒剤の香りなのね。
(良かった、完成したんだ)
「一瞬で転送、移動したように見えても、そのつど時空の歪みに何度か触れたので、ロレッテ様が1日と感じていても、実質1週間経っていたということです」
「時空の歪みですか……私にはよく分かりませんが。多分専門医様に説明されても分からないですね」
私もわからないわ。
「いいのですよ、分からなくても仕方がないことです。それよりもグラッド公爵夫妻、ロレッテ様に話があります。重要な話ですので場所を移動致しましょう。シルベスター君はここに残り、オルフレット王子を見ていてください」
「はい、師匠」
執務室にシルベスター君を残して、私たちは応接間へと場所を変えた。
「専門医様、私たちに話とはなんでしょうか」
2人掛けのソファーにお父様とお母様、私とアルカさんでテープを挟み座った。
彼女がいまからは何を話すのかわからないけど、さっきまでとは違う声のトーンに緊張が増した。
「今回、ロレッテ様の稀な力のおかげでこの国の王子、側近、城の使用人が助かりました」
そう私の両親に言うと、オルカさんはテーブル近くまで深く頭を下げた。
私のおかげ?
「ロレッテの力? それはどう言うことでしょうか?」
「公爵様のお嬢様には特別な力が宿っております。今回の事件は隣国で栽培されている、サンム草という草の過剰摂取によるものです」
「えっ、あのリラックスが出来るお香がですか?」
お母様は肩を震わせ驚いた。
それもそうだ、王都ではサンム草のお香はリラックスが出来ると売られ、貴族たちの間でも流行りのお香。
「そうです、普通に使えばなんでことのない草です。しかし大量に焚き、その煙を吸うと深い眠りに陥るという草なのです。私がその効果を見つけた1人。私しか知らないサンム草の別効能。それが何者かが、何故か知り、悪用したものと考えれます」
「それは誰だ? 城の中にいるものか?」
「いま調べている途中ですので、お答えすることはできません。私はもしものことを考えて万能薬草を見つけました。今炊いているのがその女神の涙という草です」
アルカさんしか知らないサンム草の効果。
誰がどうやって知ったの?
図鑑は王都の古本屋でオルフレット様が購入した。
隠し文字のとこは私と著書のアルカさんとシルベスター君しか知らない、
「私でさえもまだ本物を見つけるのに手間取るなかで、一発でそれを見抜いたのがロレッテ様です。ほんとうなら1ヶ月いや半年かかっていたかもしれません」
「アルカさんでも、ですか?」
「怪我を治し、毒も麻痺も解除する万能薬草、あれの周りに咲く見た目も同じな偽物が多い。ロレッテ様がシルベスター君に案内された場所は私の訓練場所だったのですよ」
訓練?
「ロレッテ様も見たでしょう? 温室に咲く女神の涙の草の中にも偽物が混じっていたことを……私では見分けが難しく、薬を作る時は1本ずつ採り作りながら、本物かそうでないかを見分けます。それなのにあなた様は確実に本物の草を10本お採りになったのです」
「娘がですか……」
お父様が驚くのもわかる、私も驚いているもの。
温室の草を見た時に偽物があったから、まだアルカさんに試されているのだと思っていたわ。
「この力はもしかすると争いの火種になる。他の者、他の国にバレてはならない、特別なものだと私は考えます」
アルカさんの言葉に、お父様とお母様は深く頷く。
「わかっております、他言無用ですな」
「えぇ娘を守るため、誰にも言いませんわ」
「そのようにお願いします」
みんなが息を呑んだとき、ガリガリと応接間の扉が乱暴に叩かれた。
「師匠、師匠、ロレッテ、目を覚ましたよ! オルフレット君が目をしたよ!」
オルフレット様が目を覚ました!
私は応接間を出て、執務室へと走った。
20
お気に入りに追加
4,210
あなたにおすすめの小説
【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。
※他サイトに自立も掲載しております
21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
【完】チェンジリングなヒロインゲーム ~よくある悪役令嬢に転生したお話~
えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
私は気がついてしまった……。ここがとある乙女ゲームの世界に似ていて、私がヒロインとライバル的な立場の侯爵令嬢だったことに。その上、ヒロインと取り違えられていたことが判明し、最終的には侯爵家を放逐されて元の家に戻される。但し、ヒロインの家は商業ギルドの元締めで新興であるけど大富豪なので、とりあえず私としては目指せ、放逐エンド! ……貴族より成金うはうはエンドだもんね。
(他サイトにも掲載しております。表示素材は忠藤いずる:三日月アルペジオ様より)
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
【完結】婚約破棄された私は昔の約束と共に溺愛される
かずきりり
恋愛
学園の卒業パーティ。
傲慢で我儘と噂される私には、婚約者である王太子殿下からドレスが贈られることもなく、エスコートもない…
そして会場では冤罪による婚約破棄を突きつけられる。
味方なんて誰も居ない…
そんな中、私を助け出してくれたのは、帝国の皇帝陛下だった!?
*****
HOTランキング入りありがとうございます
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
公爵令嬢は愛に生きたい
拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。
一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる