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三十二
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ーー何気ない、小さな変化だった。
王城の門番が寝坊をして遅れて現れたり、騎士が欠伸をしたり、オルフレット様とカウサ様の起きる時間がほんの少し遅くなったりと、ほんの少しずつ変化し始めた。
あの人たちから解放されて、ほっとしたのと、疲れからきているのだと思っていた。
少し可笑しいかな? 気に病むことのない、ぐらいの変化だった。
それは、オルフレット様とカウサ様は顔色も良く食欲もあり、体調も良さそう。
王城で働く人達も同じ様に見えた。
だからなのか、その小さな変化に気が付かなかったのかもしれない。
1週間たった早朝の王都にて、中央に差し掛かる時、いきなり馬車が止まった。
「お父様、事故でしょうか?」
「そうかもしれんな。ヤト、何があったか聞いてきてくれ」
「かしこまりました、旦那様」
従者が馬車を離れて話を聞きに行く。
しばらくしてガヤガヤと外で話す声が気になり窓から覗くと。
私たちと同じく多くの馬車が、立ち往生している姿が見えた。
それを見に王都市民たちも集まっている。
「ただいま戻りました」
「何があったんだ?」
話を聞きに行った従者の話によると、馬車が通る道路の真ん中に人が倒れていたらしい。
いま、街医者と王都警備人が呼ばれて倒れた人物を調べたところ。
その人物は馬車に跳ねられたでもなく、怪我もなくただ馬車道の真ん中で眠っていたみたいです、と従者は私たちに伝えた。
「ありがとう、ヤト。倒れた人に怪我がなくてよかったわ」
「そうだな。でも、こんな往来で眠るとは大物だ」
倒れた人物は診療所へと運ばれて、警備員は見物人の整理、馬車の整理を始めた。
それらが終わり馬車はスムーズに動き始める。
私たちが王城に着いたのは、王都に入ってから約1時間も経過していた。
しかし、着いた王城のおかしな点に気付く。
いつもいる門番が城の門を開けたまま立場にない。
他の騎士達の姿もいない。
メイド達も誰1人、王城の外と中に人の気配がなく音もしない。
まるでひと夜で、人が消えたもぬけのからのような城だった。
「オルフレット様は?」
お父様と執務室に向かい扉を開けると、オルフレット様が執務机の上に伏せていた。
「「オルフレット様!」」
執務机の近くにカウサ様も倒れている。
慌てて2人に近付くと息はあるらしく、体が上下に動き、眠ていることがわかった。
だけど、いくら呼び掛けても身体をさすっても、オルフレット様とカウサ様は目を覚さない。
「お父様、オルフレット様とカウサ様が目を覚まさないわ!」
お父様も彼の名を呼んだり、強く体を揺すったが、やはり目を覚さなかった。
「ロレッテはここにいなさい、私は城の専門医を呼んでくる」
「はい、お父様」
カウサ様をどうにか動かしソファーに寝かせて、隣の仮眠室から毛布を持ってきて2人に掛けた。
2人は急に眠気に襲われて、伏せてしまったのか書類がくしゃくしゃで、床にも散らばっていた。
ーーそれに。
「このほろ苦く、ツーンとする香りはなに?」
この香りはもしかして、リラックスハーブかしら?
でも、オルフレット様はラベンダーの香りの方が落ち着くと言っていた。
仮眠室にもラベンダーのお香が置いてあったし、執務室でリラックスハーブを焚いた形跡はない。
ここに専門医の方が来れば何かわかるはず。
お父様が専門医を呼ぶ間、執務机から落ちた書類を拾い集めていた。
拾い上げた書類の中にサンム草の領収書と書かれた紙を見つけた。その領収書の内容欄に薬香と記されていた。
この香りはサンム草を焚いた匂い?
サンム草には心を落ち着かせたり、リラックスする効果があるの?
いきなり、ズキッ、頭に鈍い痛みが走る。
「い、つっ……!」
前と同じ痛みだわ。
このサンム草には何かあるの?
そうだオルフレット様がこの前に古本屋で購入した図鑑はどこ?
執務室を探すと彼の上に、その薬草図鑑を見つけた。
カウサ様が眠るソファーの反対側に座り、折り目の付いたページを開いた。
そのページに載るサンム草の絵を見たとたんに、また痛みが走る。
まるで、見てはいけないもの様。
痛みを我慢しつつページを見続けた。
効能は? リラックス? 心を休める?
その他には載っていないの、指がページの余白部分に触れると、緑に光る隠し文字が現れた。
「えっ、この文字は何?」
見たこともない、文字がわたしに読めた。
使用目的、一度に使う量を間違えると……昏睡状態に陥る毒薬草の一種でもある。
毒薬草の一種! 毒薬草なら解毒薬は? 記してある、全ての光る文字を読んだけど書いていない。
ただ、女神の涙? 魔法水? とすり鉢などの絵が記されているだけ。
期待してめくった、次のページには違う薬草が載っていた。
「ない、どこにも解毒薬が載ってないわ」
どうしたらいいの?
あぁ、オルフレット様……いやっ、彼が目を覚まさないなんて……そんなの、いやぁぁぁーー!
ガツっと頭を殴られたような強烈な痛みに、目の前が真っ白になった。
王城の門番が寝坊をして遅れて現れたり、騎士が欠伸をしたり、オルフレット様とカウサ様の起きる時間がほんの少し遅くなったりと、ほんの少しずつ変化し始めた。
あの人たちから解放されて、ほっとしたのと、疲れからきているのだと思っていた。
少し可笑しいかな? 気に病むことのない、ぐらいの変化だった。
それは、オルフレット様とカウサ様は顔色も良く食欲もあり、体調も良さそう。
王城で働く人達も同じ様に見えた。
だからなのか、その小さな変化に気が付かなかったのかもしれない。
1週間たった早朝の王都にて、中央に差し掛かる時、いきなり馬車が止まった。
「お父様、事故でしょうか?」
「そうかもしれんな。ヤト、何があったか聞いてきてくれ」
「かしこまりました、旦那様」
従者が馬車を離れて話を聞きに行く。
しばらくしてガヤガヤと外で話す声が気になり窓から覗くと。
私たちと同じく多くの馬車が、立ち往生している姿が見えた。
それを見に王都市民たちも集まっている。
「ただいま戻りました」
「何があったんだ?」
話を聞きに行った従者の話によると、馬車が通る道路の真ん中に人が倒れていたらしい。
いま、街医者と王都警備人が呼ばれて倒れた人物を調べたところ。
その人物は馬車に跳ねられたでもなく、怪我もなくただ馬車道の真ん中で眠っていたみたいです、と従者は私たちに伝えた。
「ありがとう、ヤト。倒れた人に怪我がなくてよかったわ」
「そうだな。でも、こんな往来で眠るとは大物だ」
倒れた人物は診療所へと運ばれて、警備員は見物人の整理、馬車の整理を始めた。
それらが終わり馬車はスムーズに動き始める。
私たちが王城に着いたのは、王都に入ってから約1時間も経過していた。
しかし、着いた王城のおかしな点に気付く。
いつもいる門番が城の門を開けたまま立場にない。
他の騎士達の姿もいない。
メイド達も誰1人、王城の外と中に人の気配がなく音もしない。
まるでひと夜で、人が消えたもぬけのからのような城だった。
「オルフレット様は?」
お父様と執務室に向かい扉を開けると、オルフレット様が執務机の上に伏せていた。
「「オルフレット様!」」
執務机の近くにカウサ様も倒れている。
慌てて2人に近付くと息はあるらしく、体が上下に動き、眠ていることがわかった。
だけど、いくら呼び掛けても身体をさすっても、オルフレット様とカウサ様は目を覚さない。
「お父様、オルフレット様とカウサ様が目を覚まさないわ!」
お父様も彼の名を呼んだり、強く体を揺すったが、やはり目を覚さなかった。
「ロレッテはここにいなさい、私は城の専門医を呼んでくる」
「はい、お父様」
カウサ様をどうにか動かしソファーに寝かせて、隣の仮眠室から毛布を持ってきて2人に掛けた。
2人は急に眠気に襲われて、伏せてしまったのか書類がくしゃくしゃで、床にも散らばっていた。
ーーそれに。
「このほろ苦く、ツーンとする香りはなに?」
この香りはもしかして、リラックスハーブかしら?
でも、オルフレット様はラベンダーの香りの方が落ち着くと言っていた。
仮眠室にもラベンダーのお香が置いてあったし、執務室でリラックスハーブを焚いた形跡はない。
ここに専門医の方が来れば何かわかるはず。
お父様が専門医を呼ぶ間、執務机から落ちた書類を拾い集めていた。
拾い上げた書類の中にサンム草の領収書と書かれた紙を見つけた。その領収書の内容欄に薬香と記されていた。
この香りはサンム草を焚いた匂い?
サンム草には心を落ち着かせたり、リラックスする効果があるの?
いきなり、ズキッ、頭に鈍い痛みが走る。
「い、つっ……!」
前と同じ痛みだわ。
このサンム草には何かあるの?
そうだオルフレット様がこの前に古本屋で購入した図鑑はどこ?
執務室を探すと彼の上に、その薬草図鑑を見つけた。
カウサ様が眠るソファーの反対側に座り、折り目の付いたページを開いた。
そのページに載るサンム草の絵を見たとたんに、また痛みが走る。
まるで、見てはいけないもの様。
痛みを我慢しつつページを見続けた。
効能は? リラックス? 心を休める?
その他には載っていないの、指がページの余白部分に触れると、緑に光る隠し文字が現れた。
「えっ、この文字は何?」
見たこともない、文字がわたしに読めた。
使用目的、一度に使う量を間違えると……昏睡状態に陥る毒薬草の一種でもある。
毒薬草の一種! 毒薬草なら解毒薬は? 記してある、全ての光る文字を読んだけど書いていない。
ただ、女神の涙? 魔法水? とすり鉢などの絵が記されているだけ。
期待してめくった、次のページには違う薬草が載っていた。
「ない、どこにも解毒薬が載ってないわ」
どうしたらいいの?
あぁ、オルフレット様……いやっ、彼が目を覚まさないなんて……そんなの、いやぁぁぁーー!
ガツっと頭を殴られたような強烈な痛みに、目の前が真っ白になった。
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