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六
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あ、いま……私。
「オルフレット様、お父様すみません。大声をあげてしまって」
「いや、ロレッテ。邪魔をした私が悪い」
どうしましょう落ち込んでしまいましたわ。
お父様は真面目なオルフレット殿下のことがだいのお気に入りで。
毎回お酒に酔うと殿下を婿養子にと仰っていましたもの。
〈グラット公爵には悪いですが。ロレッテが私と二人きりになりだなんて嬉しい。そのご期待に応えて手を繋いで庭園を散歩するか? それとも見つめ合ってテーブルでおしゃべりをするか? どちらも捨てがたい。どちらもお願いしても良いかな?〉
(まあ、先ほどから真剣な表情をされていると思ったら、この後の私との予定をお考え中ですか?)
もう、どちらも殿下にお付き合いしますわ。
問題はお父様ね……そうだわ! 良い案が思いつきました。
今日の夕食にオルフレット殿下をお誘いすればいいのですわ。
そうすれば私も殿下とご一緒できますし、お父様も好きなだけ殿下と話せます。
「ねぇお父様、オルフレット様を夕食にお誘いしてみてはどうかしら?」
お父様は私の提案に目を光らせた。
「ロレッテ、それはいい妙案だ。いまからオルフレット殿下の好きなものを用しなくてはならない。殿下、失礼致します」
あ、お父様? オルフレット殿下を夕飯にご招待されておりませんわ。喜んで戻っていくお父様の後ろ姿を二人で微笑んで見送った。
「いいお方だな。……ところでロレッテ嬢、私はグラッド公爵に夕食へのご招待をされたと、思ってもいいんだよね?」
「えぇ、いいと思いますわ。お父様はオルフレット殿下の事を気に入っておりますから。それよりもオルフレット様はご覚悟をしたほうがよくて……ふふっ」
〈ロレッテ嬢、そんな意地悪く楽しそうに笑うな。前に招待された時、食事の量はすざましかったものな。これは覚悟しなくては〉
(ほんと、あの日のオルフレット殿下は大変でしたものね)
立ち話も何だからと殿下とテーブルに戻る。
「あら、紅茶が冷めてしまいましたわね、新しくご用意しますわ」
「いいや、この紅茶を飲み終わってから、新しいのを入れてもらうよ」
ダメですと言う前に、オルフレット殿下は冷めた紅茶を飲んでしまった。
これは流石に殿下に失礼ですわ。
「ロレッテ、そんな顔しないで。いい茶葉は冷めても美味しいよ、ロレッテ嬢も飲んでごらん」
〈良い茶葉だし、勿体ない〉
(勿体ない……)
「では、いただきます」
オルフレット殿下の言う通り、冷めても紅茶の風味が損なわれず美味しかった。
今まで紅茶は温かいものでと思っておりましたが、これはこれでありです。
「どう?」
「オルフレット殿下のおっしゃる通り、冷めても美味しい」
〈よかった、ロレッテに気に入ってもらえたみたいだ〉
オルフレット殿下は微笑み、バタークッキーに手を伸ばした。
サクサク口に運ぶ殿下に見入る。
(オルフレット殿下はなんと言うかしら?)
「おぉこれは美味しい、このバタークッキーはどこで買ったんだい?」
「そのクッキーは買ったのではありません作ったのですわ。私もお手伝いいたしましたのよ」
〈やはり、そうだと思った〉
(えっ?)
〈ロレッテが作った物はすぐに分かる〉
(お分かりになるの?)
〈あんな満面な笑みを見せられれば、おのずと分かってしまうよ……しかし、今日は目のやり場に困るがな。ちょっと前屈み過ぎだぞ〉
(目のやり場? 前屈み?)
殿下の視線をたどり自分の姿を見た。私ったら、無意識にテーブルに身を乗り出しておりました。
これはオルフレット殿下の笑顔を近くで見ようしたのだとわかり、照れながら椅子に戻った。
〈あっ……あぁ残念だが、仕方あるまい〉
(そんな残念だなんて……)
「私の好きなバター風味の効いたクッキーだ」
「オルフレット様のお口にあって良かったですわ」
〈ほんとうに嬉しそうに笑う。その笑顔は出会った頃と変わらんな。私の誕生日になると満面の笑みで来るんだ。ロレッテからもらった物は全て大切にしまっている〉
(オルフレット……で、様。私もあなたから貰ったものを大切に宝箱にしまっていますわ)
子供の頃の話をしたり、初めて踊ったダンスの話。誕生日のプレゼントの話。最近読んだ本の話をしていた。
「ロレッテ嬢。日が落ちて少し風が出て来たな、寒くはないか?」
「平気ですわ……あの、オルフレット様。庭園の中を散歩致しませんか? その後に書庫へ行きましょう」
「庭園を散歩か、良いな」
オルフレット様が出した手に手を重ねて、様々なバラが咲く庭園の中を手を繋ぎ歩く。
どうしたのかしら?
先程からオルフレット様がお静かだわ。
〈ふぅーロレッテといい雰囲気だ、もしかしたら今日はできるか? いやする。私はしたい。何としてもロレッテの柔らかな唇を奪いたい〉
(オ、オルフレット様⁉︎)
繋いだ手に力が入り引き寄せられた。
「オルフレット様、お父様すみません。大声をあげてしまって」
「いや、ロレッテ。邪魔をした私が悪い」
どうしましょう落ち込んでしまいましたわ。
お父様は真面目なオルフレット殿下のことがだいのお気に入りで。
毎回お酒に酔うと殿下を婿養子にと仰っていましたもの。
〈グラット公爵には悪いですが。ロレッテが私と二人きりになりだなんて嬉しい。そのご期待に応えて手を繋いで庭園を散歩するか? それとも見つめ合ってテーブルでおしゃべりをするか? どちらも捨てがたい。どちらもお願いしても良いかな?〉
(まあ、先ほどから真剣な表情をされていると思ったら、この後の私との予定をお考え中ですか?)
もう、どちらも殿下にお付き合いしますわ。
問題はお父様ね……そうだわ! 良い案が思いつきました。
今日の夕食にオルフレット殿下をお誘いすればいいのですわ。
そうすれば私も殿下とご一緒できますし、お父様も好きなだけ殿下と話せます。
「ねぇお父様、オルフレット様を夕食にお誘いしてみてはどうかしら?」
お父様は私の提案に目を光らせた。
「ロレッテ、それはいい妙案だ。いまからオルフレット殿下の好きなものを用しなくてはならない。殿下、失礼致します」
あ、お父様? オルフレット殿下を夕飯にご招待されておりませんわ。喜んで戻っていくお父様の後ろ姿を二人で微笑んで見送った。
「いいお方だな。……ところでロレッテ嬢、私はグラッド公爵に夕食へのご招待をされたと、思ってもいいんだよね?」
「えぇ、いいと思いますわ。お父様はオルフレット殿下の事を気に入っておりますから。それよりもオルフレット様はご覚悟をしたほうがよくて……ふふっ」
〈ロレッテ嬢、そんな意地悪く楽しそうに笑うな。前に招待された時、食事の量はすざましかったものな。これは覚悟しなくては〉
(ほんと、あの日のオルフレット殿下は大変でしたものね)
立ち話も何だからと殿下とテーブルに戻る。
「あら、紅茶が冷めてしまいましたわね、新しくご用意しますわ」
「いいや、この紅茶を飲み終わってから、新しいのを入れてもらうよ」
ダメですと言う前に、オルフレット殿下は冷めた紅茶を飲んでしまった。
これは流石に殿下に失礼ですわ。
「ロレッテ、そんな顔しないで。いい茶葉は冷めても美味しいよ、ロレッテ嬢も飲んでごらん」
〈良い茶葉だし、勿体ない〉
(勿体ない……)
「では、いただきます」
オルフレット殿下の言う通り、冷めても紅茶の風味が損なわれず美味しかった。
今まで紅茶は温かいものでと思っておりましたが、これはこれでありです。
「どう?」
「オルフレット殿下のおっしゃる通り、冷めても美味しい」
〈よかった、ロレッテに気に入ってもらえたみたいだ〉
オルフレット殿下は微笑み、バタークッキーに手を伸ばした。
サクサク口に運ぶ殿下に見入る。
(オルフレット殿下はなんと言うかしら?)
「おぉこれは美味しい、このバタークッキーはどこで買ったんだい?」
「そのクッキーは買ったのではありません作ったのですわ。私もお手伝いいたしましたのよ」
〈やはり、そうだと思った〉
(えっ?)
〈ロレッテが作った物はすぐに分かる〉
(お分かりになるの?)
〈あんな満面な笑みを見せられれば、おのずと分かってしまうよ……しかし、今日は目のやり場に困るがな。ちょっと前屈み過ぎだぞ〉
(目のやり場? 前屈み?)
殿下の視線をたどり自分の姿を見た。私ったら、無意識にテーブルに身を乗り出しておりました。
これはオルフレット殿下の笑顔を近くで見ようしたのだとわかり、照れながら椅子に戻った。
〈あっ……あぁ残念だが、仕方あるまい〉
(そんな残念だなんて……)
「私の好きなバター風味の効いたクッキーだ」
「オルフレット様のお口にあって良かったですわ」
〈ほんとうに嬉しそうに笑う。その笑顔は出会った頃と変わらんな。私の誕生日になると満面の笑みで来るんだ。ロレッテからもらった物は全て大切にしまっている〉
(オルフレット……で、様。私もあなたから貰ったものを大切に宝箱にしまっていますわ)
子供の頃の話をしたり、初めて踊ったダンスの話。誕生日のプレゼントの話。最近読んだ本の話をしていた。
「ロレッテ嬢。日が落ちて少し風が出て来たな、寒くはないか?」
「平気ですわ……あの、オルフレット様。庭園の中を散歩致しませんか? その後に書庫へ行きましょう」
「庭園を散歩か、良いな」
オルフレット様が出した手に手を重ねて、様々なバラが咲く庭園の中を手を繋ぎ歩く。
どうしたのかしら?
先程からオルフレット様がお静かだわ。
〈ふぅーロレッテといい雰囲気だ、もしかしたら今日はできるか? いやする。私はしたい。何としてもロレッテの柔らかな唇を奪いたい〉
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繋いだ手に力が入り引き寄せられた。
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