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 屋敷に戻り夕食の時に、明日はオルフレット殿下がここに、お茶に来ることを両親に伝えた。

 両親は喜び、お父様は高級茶葉を用意すると張り切っていた。
 私は夕食後に厨房でバタークッキーの下準備をコック長と始めた。

 オルフレット殿下は甘さは控えめでバター風味が強い風味がお好き。
 想いを込めて生地を作り寝かせた。

(美味しくと言ってもらえますように)


 ♢


 コック長とメイドにお茶の準備とバタークッキーを頼んだ。
 任せてください! とメイドもコック達もみんな張り切って、庭園にお茶の準備をしてくれている。

 朝、学園に向かうと馬車着き場にオルフレット殿下の側近、カウサ様が私を待っていた。

「おはようございます、カウサ様」
「ロレッテ様おはようございます。オルフレット殿下はまだ書類整理に追われいまして今日は学園には来れませんが。午後のお茶会には行くと張り切っております」

 そんなにお忙しいのかしら。

「オルフレット殿下はご無理をなさってはおりませんか? もし、無理でしたら……」


「「お辞めなるとは仰らないでください!」」


 私は言葉を遮られて、いつも殿下の隣で穏やかなカウサ様が珍しく声を上げた。それに驚き、目をパチクリしてしまいました。

 それは彼も同じだったみたいで、慌てて頭を深々く下げた。

「失礼しました、ロレッテ様」

「オルフレット殿下にお伝えください。午後に屋敷の庭園でお待ちしておりますと」

「ありがとうございます……あの、不躾ですが。ロレッテ様に一つ、お願いがあります」

 カウサ様が胸に手を当てて畏まった。

「私にお願いですか?」
「はい、ロレッテ様にしか出来ないことなんです。オルフレット殿下をお茶会で癒してあげてください」


(私にしか出来ないこと? オルフレット殿下を癒す?)


 頼みますとまた深く頭を下げて、足早に去っていってしまった。 

「どう、癒やせばいいのかしら?」

 しばらく悩み。
 昨日のオルフレット殿下の心の声を思い出す。私が側にいれは殿下は癒されると仰っていた。
 
 他に『胸に顔を埋めたい』とも仰っていた……わ。


 ♢


 学園が終わり部屋でメイドに頼み、胸が少し開いたドレスを選んで着付けてもらっている。
 
 姿見に写して思う。舞踏会でもまだここまで胸の見える、ドレスは着たことがないわ。

 でも、これで殿下は癒されるのかしら。
 
 ここまでやってオルフレット殿下に引かれてしまったら。
 当分の間、立ち直れないわね。

「ロレッテお嬢様、お綺麗ですよ」
「ありがとう、リラ」

 庭園のスペースに用意されたパラソル付きのテーブル。
 お父様が用意した高級茶葉、殿下のお好きなバタークッキーとケーキスタンド。オルフレット殿下を迎える準備は終わった。

 後、癒せるかはわかりませんが私なりに頑張りますわ。

「ロレッテお嬢様、オルフレット殿下がお付きになりました」
「はい、お迎えに向かいます」

 このドレスを見て殿下がなんと言うのか、ドキドキして彼の元へ向かった。

 屋敷前に王族が使用する馬車が止まる。
 そこから黒い軍服を着たオルフレット殿下が降りてきた。


(ぐ、軍服! 普通のお茶会に正装だわ。でも、素敵)


「ご機嫌よう、オルフレット様」
「ロレッテ嬢、お茶へのご招待嬉しく思う」

 私を見て優しく微笑まれた。

〈あぁ私のロレッテ、今日も綺麗だ。それは初めて見るドレスではないか。すべすべな真っ白な肌、それとなんて立派な、おっ……〉

(おっ? その後は言わないのですか?)


 オルフレット殿下の視線が胸の所で止まっていた。
 そんなに見つめられて照れますが。お、の後に続く言葉がわかりました、もう、殿下は。


〈いいっ! 徹夜で書類を終わらせてよかった。これは私への最高なご褒美だっ!〉

(これが殿下のご褒美ですの⁉︎)


「ロレッテ嬢?」

 驚き固まっていました。
 
「こ、こちらです。ご案内いたしますわ」
「あぁ頼むよ。グラッド公爵家はいつも丁寧に手入れされた立派な庭だね」

「オルフレット様にそう言っていただき庭師も喜びますわ。お好きなバタークッキーをご用意しましたのよ」

 オルフレット殿下の後ろに続く、カウサ様は手に木箱を持っていた。
 庭園に着くと木箱をテーブルの上に置き蓋を開けた。
 その中には少し大きめな苺と、苺ジャムが入っていた。

「ロレッテ嬢にお土産だ、苺好きだったろ?」
「えぇ苺は好きですわ。オルフレット様ありがとうございます」

「今朝採れたての新鮮な苺だ」
「まあ、美味しそうですわ」

〈頬をそんなに綻ばせて可愛い。持ってきてよかった。さぁ、ロレッテの小さな口でこの苺を頬張ってくれ。あっ、私がロレッテに食べさせるのもありだな。あーんをしたい!〉

(オルフレット殿下!)

 そこには爽やかに微笑む、オルフレット殿下がおりました。

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