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「ロレッテ嬢今日は天気がいい、今からテラスでお茶をしないか?」

〈ダメ元だがな〉

 ダメ元って? 
 オルフレット殿下は私などと、テラスでお茶をしても嬉しいのてしょうか? 

 はい、と私がお受けすると彼はどんな反応をして、なんと答えるのかしら。と、私は鼓動を早くしながら会釈をして伝えた。

「えぇ、喜んでオルフレット殿下」
「やはり、ダメか……えっ、いいのか⁉︎ では、行こう」


 彼が慌てて差し出した手に、自分の手を重ねた。


〈やったー‼︎ いつものように結構ですと断れなかった。くぅーっ嬉しいなぁ。久しぶりのロレッテと二人きりの時間だ〉


(まぁ子供のような喜びようですわ)


 チラッと横顔を盗み見れば。隣で口元を緩ますオルフレット殿下の姿が見えた。


(喜んでくれているのかしら?)

 これはオルフレット殿下の本心? なのでしょうか?


「ロレッテ嬢、今日は暑くないし過ごしやすいな」
「そうですわね」


〈ロレッテとお茶、お茶だぁ!〉
(あの、オルフレット殿下落ち着いてください)


 こんな調子で並んで歩き、ご一緒にテラスに移動をしました。


  *


 オルフレット殿下にはテラスだと聞いていたのですけど。
 周りに生徒は誰もおらず、テーブルは一つだけで、殿下と二人の空間だった。


(困りましたわ)


 殿下がこの調子では普通にしているのが辛いです。

 もう、誰がオルフレット殿下の心の声をお止めてくださいませ。
 近くの警備の騎士でも、殿下の側近でも、離れた位置にいるメイドの方でもいいですわ。


〈なんて、ロレッテには苺のケーキが似合っているんだ。私がケーキになって君に舐められたいなぁ……おっ、やばい、たってきた〉

(どこが? ですの!)

 と、彼を見ても穏やかに微笑んで、向かいの席で爽やかに紅茶を飲んでいるだけ。

 でも、オルフレット殿下の心の声はただの変態。
 誰にも止める事のできない彼の心の声は止まらない。


〈あぁ、ロレッテ。そんな小さなお口で大きな苺を頬張って可愛い。今日のドレス姿もいいなぁ、あの柔らかそうな大きな胸に顔を埋めたい、すりすりしたい、匂いを嗅ぎたい〉

(私の胸に顔を埋めたい⁉︎ どこの匂いを嗅ぐというですか⁉︎)

 衝撃的なオルフレット殿下の思いを聞いて驚き、手を滑らせて静かな庭にガシャッと紅茶のカップが音をたてた。

「火傷はしていないか!ロレッテ嬢!」
「平気ですわ。オルフレット殿下、失礼しました」


〈よかった、火傷はしていないみたいだな。あ、口元にクリームが付いている。その付いたクリームを舐めたら怒るかなぁ。舐めたい。ピンク色の唇にむしゃぶりつきたい、いやっ、他にも色々したい〉


(殿下ぁ⁉︎)

 涼しい顔をしながら、なんて事をお考えになっていらっしゃるの。

 聞いているこっちが恥ずかしいですわ。
 ぞわぞわしてきて、何やら体が熱いです。

〈どうした? ロレッテの頬がほんのり赤い。まさか私を見て照れているのか?〉

(いいえ違います。殿下の心の声に照れているのですわ、きっと)
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