上 下
96 / 166
第二章

15話

しおりを挟む
 朝、アール君と出発した原っぱに、チリの森で出会ったゲンさんと戻り、姿を消して話をしていた。

「いまのボクの名前はアール、この方は主人のエルバ様です。サタ様のご主人でもあります」

「サタ様? もしや、サタナス様の事か?」
「えぇ、そうです」

 アール君が、ゲンさんにサタ様の話をすると。

「な、な、なにぃ! サタナス様が生きている⁉︎ それは誠か……300年前、忽然(こつぜん)と消えてしまったサタナス様が……生きていらっしゃる」

 パパと同じくゲンさんもブワッと豪快に涙を流して、サタ様が生きていると知って喜んだ。次にアール君はゲンさんに、どうしてチリの森にいたのかを聞いた。

「どうしてかって……」

 ゲンさんの話ではアウドラムの家族と仲が良く、ちょくちょく会いにいっていたらしい。彼らの天敵コーブラがいなくなったと、魔物達の話を聞き。何かあったのかと会いにきたら、先ほどの冒険者と出会ったと話した。

「そうだっのですね。コーブラはボクとサタ様で倒しまして、アウドラムの家族はサタ様がエルバ様の故郷――魔法都市に連れて行きました」

「おお、そうでありましたか……よかった、彼らに何もなくて。それで、サタナス様はいつお戻りになられますか?」

「3日ほどで戻ると連絡がありました」

 彼らの側で、三角座りをして大人しくしている私。
 黒猫と大きな猪が仲良く話す、不思議な光景を眺めている。アウドラムの家族もだけど、みんなサタ様が好きだな。
 
 そうだとすると、この大陸の何処かには……まだまだサタ様が消えてしまったと、悲しむ魔族、魔物が多くいるのかもしれない。

「お帰りは3日ですか……早くお会いしたい」
「だったらフクロウを読んで、サタ様に手紙を書けばいいんじゃない? 私が手紙の代筆するよ」

「おお、その手がありました、ゲンさんサタ様に手紙を書きましょう」

 魔法都市にいる、サタ様に手紙を送ることにした。

「『ワイルドポポーのゲンです、サタナス様にお会いしたい。スズール森の水辺で待っております』これでいい?」

「はい、ありがとうございます、エルバ様」

「アール君も何か伝えることある? 私は昨日描いたからいいかな?」

「ボクも大丈夫です。それよりエルバ様、朝食べましたチャーハンというものが食べたいです」

 時刻はお昼を過ぎて夕方に近い。フクロウでサタ様に手紙を送って、ご飯の準備を始める事にした。

 ゲンさんにはアウドラム家族に出した、エダマメマメとトーモロコシを畑で採取して出して、チャーハンを作るからコメ草も収穫した。

 コメ草からコメを取りメスティンで炊いて、次にジャロ芋、レタスス、トマトマ、レンモンも採った。トマトマはサラダ用で、レンモンはシュワシュワ用だ。

「アール君、コメが炊けたらバター醤油チャーハンと、ジャロ芋のバターを作るからね。ゲンさんはどう?」

「とても美味しいです。あの、その、もう少しいただけると嬉しい」

 と言ったので、たくさん彼の前にエダマメマメとトーモロコシを置いた。

 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,991pt お気に入り:5,863

転生少女は異世界でお店を始めたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,468pt お気に入り:1,720

いずれ最強の錬金術師?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,618pt お気に入り:35,414

異世界モフモフ食堂!美味しいご飯で幸せいっぱい!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:142pt お気に入り:1,549

僕の部下がかわいくて仕方ない

BL / 連載中 24h.ポイント:583pt お気に入り:18

処理中です...