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第一章

77話

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 私達は王都近くの原っぱにいて、みんなとジャガイモ料理の話をしていた。私が言った『ガレット』にみんなは食いつく。
 
「エルバ、ガレットを今すぐ作れ!」
 
「ジャロ芋のガレットですか? 食べたいです、早く作りましょう」
 
「ガレット、ガレット~!」

「ちょっと、みんな落ち着いてよ」

 
「「ガレット!!」」
 

 腹ペコのみんなが興奮して飛びつくもんだから、隠れていた茂みからとび出してしまい、新魔王ローザン様に見つかった。
 

 彼は私達に瞳を大きくして、プルプル震え。

「あ、ああ!! リリ、リ、リラックスモードのま、ま、魔王サタナス様……は、は、はじめまして、ボク、ロ、ロ、ローザンといいます」

 噛み噛みの挨拶と、自分が今新魔王であることを忘れ、サタ様の前にひれ伏した。

「ローザン、挨拶は良いが。ワタシはもう魔王ではなく普通のサタナスだ、君がいま魔王様であろう?」

 サタ様がそう言っても、更に頭が低くなり。

「め、めめ、滅相もございません、ボクなんか魔王サタナス様の足元にも及びません……で、でも、みんなはボクが魔王様の紋章を受け継いだとき……ボクを新魔王と呼んでくれて、優しくしてくれます」

「そうか……ローザンはみんなに新魔王だと、認めてもらったのだな」

「はい、恐縮です」

 

 2人のやりとりを側で見て。

「なんと、微笑ましい光景です」
 
「うん、うん、とても可愛い、新魔王様だね~。彼なら仲魔の魔犬達も喜んでついていくよ。ボクはサタナス様一筋だけどぉ~」

 アール君とヌヌ君はやさしく見つめながら、話をしていた。

(この魔王様の気持ちがわかる。私も憧れていたキャンプの達人に会ったらこうなる自信がある。憧れのキャンプの達人は私にとって師匠で、神的な存在だった)



 ❀
 


 新魔王ローザンは学生寮の門限時間だからと、学園に戻ると言った。

 サタ様は新魔王ローザンが戻る前に『ローザンがどうしても友達が欲しかったら……』人で勇者の末裔だが、同じ学年のモサモサ君――グルナと話が合うんじゃないかと伝えた。

 ローザンは『ボクに勇気がでれば、明日にでも彼に話しかけてみます』と笑った。そしてサタ様は、モサモサ君には事情があって彼は言葉を話せない。彼は魔法文字で話すとも伝えた。

「グルナ君は魔法文字で話すのですか? わかりました。サタナス様、皆様、ありがとうございました。また、会える日を楽しみにしております」

 と、丁寧な挨拶と笑顔で手を振り。ポフッと小さな黒い羽を背中にはやしたモフモフの羊姿になり、書物を持って学園に帰っていった。

「……モコモコ、可愛い羊」

「あの御姿が、新魔王様のリラックスモードですか。彼もまた人が苦手のようです。だけど……魔王国を豊かにするために学園に通っているのですね」

「うむ、ローザンは良い魔王になるな。彼が困ったらワタシ達が手を貸してやろう」
 
 アール君とヌヌ君、私は頷き新魔王様を見送った。
 


「さてと、お腹も空いたしご飯にしよう!」
 

「「おー!!」」
 

 原っぱにテントを置き、焚き火をして、みんなのご所望のジャロ芋のガレットを作る。サタ様は残っているお肉を焼くと言って、アイテムボックスからお肉をとり取りだした。

 アール君とヌヌ君は火の番をお願いして。
 原っぱで私達が調理を始めると『サタナス様、帰ってきた』『来た』『おかえり』いつの間にかカラス達も何処からか戻ってきた。
 
「うむ、肉が少なくなったな……明日ギルドで討伐クエストを受けよう」

「クエスト? 私は採取のクエストを受けたい!」

「では討伐と採取クエスト両方受けましょう。よいクエストがあるといいですね」

「うんうん」
 

 焼けたよ! と、スキレットで焼いたジャロ芋のガレットと、卓上コンロの上で肉が焼きあがる。カラス達には魔法水をあげ、人数分に大きくしたテーブルを囲んで座り、食事が始まった。

「そうだ、ヌヌ。ワタシ達はしばらくここで冒険するつもりだが……ついてくるか? それともタクス達がいる魔法都市サングリアに行くか? 住む家なら、タクスに頼めばヌヌ用の家を用意してくれると思うぞ」

「うーん、サタナス様と冒険したいけど……ボクは一度、魔法都市サングリアに行くよ~タクス達に挨拶が終わって、気持ちが落ち着いたら合流してもいい?」

「いいぞ、ゆっくり休んでから来い」


 この日作った、ジャロ芋のガレットをみんな気に入ってくれた。
 
「さてさて、今夜の寝床とお風呂どうするかなぁ?」と、ヒノキ風呂を想像して、いつものトイレと、大きめなベッドを人数分想像した。

 ヌヌは初めてのお風呂ではしゃぎ。
 ベッドの上でも枕を投げて、はしゃぐ。

 私達も枕投げに参加してたのだけど……

 ボフッ⁉︎

「ぎゃっ、あつぅ! サタ様、魔法は禁止です!」

 小さな炎枕が飛んできた。
 
「ほほう、ワタシの顔に枕を当てておきながら、高笑いしたのは誰だ?」
 
「フフ、エルバ様の投げた枕が、寛ぐサタ様の顔にクリーンヒットしましたから」

「エルバ、許さん!」
 
「わっ⁉︎ 今度はビリビリ? 雷魔法? 卑怯サタ様!」
「うるさいぃ――! ワタシがルールだぁ!!」

 さんざん、みんなで枕を投げて暴れ。
 倒れ込むように眠った。
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