野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ

文字の大きさ
72 / 171
第一章

69話

しおりを挟む
 テッテレェ~『耐熱グローブ!(神様仕様)』を私はマジックバッグから出して手に装着した。業火仕様となったグローブ、その意味は……悪人がみをほろぼすことを表す言葉と地獄の業火。

 見た目は可愛いけど、実用的。ほんらいの使い方は焚き火に薪をくべたり、スキレットなど熱くなった調理具を掴んだり、薪割りなど作業用にも使える万能グローブ。
 脱着のしやすさとフィット感が良く、神様仕様となったこの耐熱グローブで、あの金髪がくりだす炎に耐えれるのか試したい。
 ここに来る前、ママが防御魔法を何重にもかけたローブをいま着ているから、少々あたっても平気だろう……試したい。

 サタ様とアール君で試すまえに、あの金髪君の炎をうけてみたい。

 ――行くぞ!


〈はぁ、エルバ? 戦いの前に出てくるな!〉
 
 
〈サタ様は2人が相手だし。この神様仕様の耐熱グローブが、あの炎に耐えれるのか使ってみたいの〉

『正気か?』と言う、モコ鳥のサタ様の瞳に正気だとうなずいた。

〈クク、さすがだ……パワー重視、特攻隊長タクスの娘だ、悠長なことを抜かす。そのグローブであの炎に耐えれるかだと? ふむ、その実験は面白そうではあるが……少しでも危なかったら、強制的に後ろに飛ばすからな!〉

〈わかった〉

 よし、サタ様の許可がもらえた。

 

「ん、んん? サタナス様、この子は誰? 魔力にタクスの力を感じるけど?」

 ヌヌは檻の中で首を捻る。

「ほお、気付いたかヌヌ。この娘はタクスの子、エルバだ」

「ええ、タクスがモーレツにアタックしていた、あの美人な魔女と結婚したのは知っているけど……ほぇ~子供が生まれたんだぁ~、めでたい、めでたいねぇ~!」

 ヌヌが喜びの舞をはじめ、檻がガシャン、ガシャンと揺れる。その様子に前の2人は魔犬が遂に暴れはじめたと息を飲む。

「まずい、魔物から攻撃がくるわよ!!」
「檻を破って出てくるきかぁ!!」
 
 悪役令嬢は杖を構え、魔法を唱える。
 金髪君は炎の拳をかまえた。

 魔力の高まりと、2人の緊張がこっちにも届く。

〈ヌヌ、喜ぶのは後にしなさい。エルバ、金髪の炎が来るぞ!〉
 
〈はい!〉

「くらいやがれでェエエエ!!」

 金髪君が拳ら繰り出した炎を、私は両手を前にだして耐熱グローブ受けようとしたのだけだ……条件反射でムニッと掴んでしまった。

〈うおっ? サタ様、炎掴んじゃった〉
〈掴んだだと? 早く、それを離せ!〉

〈分かってる〉

(でも何処に?)

 学生達、私達がいない所を探した。手の中でゴウゴウ燃える炎は熱くなく、耐熱グローブとローブは耐えたのだけど……無防備な顔が熱い。

〈あつぅ!〉

 と、腕を上げた瞬間、その炎は飛びあがり空中で爆発した。突然の空中爆発で、学生達は悲鳴をあげた。

〈……あっ〉

〈フフ、あの炎を掴み押し上げるか……ふむ、ふむ、そのグローブは『ドラゴンのファイアブレス』も耐えれるかもな〉

(ドラゴン?)

「お、お――スッゴォい、面白い! もう一回、もう一回やってぇ~!」

〈エルバ様、ズルい。僕にもソレ貸してください!〉

 みんなには大好評だけど、この場の教師と学生達を驚かせてしまった。だけど、サタ様がドラゴンの『ファイアブレス』にも耐えるといったから……いつか、この耐熱グローブで止めてみたい。

 私達が湧き上がるなか、金髪君は悔しがった。
 

「「……クッ、おれの炎がぁぁ――!」」
 

 いまの衝撃で茶髪君と悪役令嬢の攻撃がとまる。
 2人は檻の中のヌヌに敵わないと悟ったらしく、遠目に見ていた『グルナ』の名を呼んだ。
 
 だが、呼ばれたモサモサ髪のグルナは2人言葉に、視線も体も動かさない。その彼の彼はずっと私達の方を向いていた。

「……どうなさったの、グルナ王子?」
「どうした、グルナ殿下?」

「…………」

 2人に呼ばれて、困っているようにも見えた。


 グルナ――モサモサ君と呼ばれた学生。
 

〈……ねぇ、サタ様。あのモサモサ君って、私達が見えていない?〉

 
 サタ様はコクッと頷き。
 

〈ようやくエルバは気付いたのか。アヤツは勇者の末裔だから、一応、何かしてくるかもと……気にしていたがアヤツは何もしてこなかった〉

〈ええ、してきませんでしたね。この闘技場に入ってから、彼の瞳はズッと僕達を見ていのに……よし、檻の鍵と首輪を解錠いたしました〉

 ガシャンとヌヌの魔導具の首輪が落ちる。

〈うむ、ヌヌが動ける様になった、もうここに用はない。アール、エルバ、ヌヌに飛び乗れ!〉

 ギィ――ッと檻の扉が開く。

 突然、檻の鍵が開き檻から出てきた、ヌヌに怯える教師と学生達を横目にヌヌに飛び乗る。身軽く飛び乗ったサタ様とアール君とは違い……私のジャンプは高さが足りず、かろうじてヌヌの尻尾を掴んだ。

「ギヤッ⁉︎」

 突如、私に尻尾を強く掴まれたヌヌ。
 

「うぎゃあぁああ――! おれっち、尾っぽを触られるのは苦手だよ~」

 ヌヌはブンブン尻尾を振る。

(あ、これは尻尾を掴んでしまった私が悪いのかも)
 
 動物にとって、大切な神経が集まる尻尾。
 ヌヌは嫌がり、尻尾を更にブンブンと振った。

 その威力は強く……手に付けていた、脱着のよい耐熱グローブは手からスルリと抜けて、私の体は空に勢いよく投げだされた。
 

「「エルバァ――⁉︎」」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

処理中です...