71 / 171
第一章
68話
しおりを挟む
「なんともすざましい、雄叫び」
「まだこの付近に、あのような魔物がいるとは恐ろしいですわ」
「「ガハハハハハァ――!! こんな小物、恐るるにたらず!」」
大きな体格、赤い瞳、ヌヌの見た目で生徒が怯えるなか。鍛え上げられた肉体、茶髪の男は鍛えられた腕を鳴らし、檻の中にいるヌヌに向けて真っ赤な拳を構えた。
それを真正面から『グルルル』と唸り、受けて立つ様に見えるヌヌ。
――実際は。
「……ヒィイイィ! 怖いよ~、この人間はおれっちになにするの? 戦うの? それは、ダメだよぉ~。人と戦うと魔王様に怒られちゃう。たくさんの人に追われても、物を投げられても、おれっち怒らなかったよぉ~」
どうにか止めてもらおうと必死に男に話しかけるけど、彼にヌヌの言葉は通じていない。男の闘士に反応し威嚇して、吠えているように見える。
だけど、全くどうじない2人は。
〈うむ、ワタシの言い付けを守るヌヌ、賢いな〉
〈ええ、手が付けられない暴れん坊だったヌヌ、賢くなりましたね〉
(ええ――サタ様、アール君、賢くなったとか、そんな悠長な事を言っていたら、魔犬ヌヌ、やられちゃうよ? あの男が勇者パーティーにいた、剣士の末裔だってサタ様は気付いてる?)
私はハラハラしながら見守っていた。
「「フッ、オオオオオォォ! きさまに一発、おみまいするぅううう――!!」」
拳をまえに繰り出した茶髪の男の炎は、檻の中のヌヌに向けて飛ばされた。
〈……まずい!〉
サタ様は一言はっしてヌヌの前に飛び出し、防御膜を張った。それと同時に吠えたヌヌ、男の炎を止めたのは姿が見えないサタ様ではなく、ヌヌのひと鳴きで消し飛んだかのように辺りには見えた。
男と学生達の緊張と、驚きで『ヒュー』と息を吸う音が聞こえる。そんな事を気付かないヌヌは『ガシャン、ガシャン』と檻を鳴らし。
「「あ、ああー!! ……もしかしてサタナス様? うわぁ、リラックスモードの魔王様だぁ!! おれっち、会いたかった……ヌヌだよ、魔犬のヌヌ、おぼえてる?」」
嬉しそうに檻の中でジャンプしたので、魔犬がご立腹で暴れている様にしか見えない……
「…………クッ、俺の炎の拳が効かないのか」
男の悔し紛れの声と。
ヌヌの嬉し声。
「サタナス様~だぁ! ヒャッホウ!」
「クク、ワタシがヌヌのことを忘れるはずがない。だがヌヌ、興奮すると周りの人間が怯える、少し大人しくしろ」
「「「はーい!」」」
その可愛いヌヌの返事は衝撃波となり、瞬時に防御ができなかった、複数の学生を壁まで吹き飛ばした。
くずれ落ちる闘技場の壁と、闘技場あがる生徒達の悲鳴。
「「きゃぁ――――!」」
「「う、わぁ――――!」」
これは非常にまずいのでは?
あたりは騒然、飛ばされ怪我をした学生、気絶した学生が出てしまった。アマリアは怪我をした生徒を『聖女の力』で治療しはじめふ。
教師達は怪我が軽く動ける学生達を集め、魔法で防御壁を張った。そして、ヌヌの前に立ったのは勇者パーティーの末裔、茶髪と悪役令嬢の2人。黒魔導士と肝心の勇者末裔は、怪我はないものの、こちらに来ようとしない。
「きさまぁ――――!!! 許さんぞぉ――――!!!」
「まったく、冒険者はこんな危険なものを寄越すなんて……」
と、ヌヌに向けて拳と杖を構えた。
ヌヌの可愛い返事で一大事である。
瞬時に防御壁を張り、ヌヌの衝撃波から守ってくれたアール君は、2本の尻尾をユラユラ揺らし。
〈フフ、よかった……ヌヌはあの魔導具の首輪をしているからか、元の力の半分以下に抑えられましたね〉
〈え、あれで半分?〉
〈はい、本来のヌヌでしたら……そうですね、小さな山一つくらいは吹き飛ばします〉
――ヒェ、さすが元四天王魔犬ヌヌだ。
ヌヌを守る、サタ様が私達を呼んだ。
〈エルバ、アール、どちらでも良い檻の鍵をあけてくれ。ワタシ達は戦うわけにはいかない……ヌヌを助け逃げるぞ〉
サタ様は茶髪と悪役令嬢の攻撃を交わし、ヌヌを防御壁で守っている。
〈わ、私に鍵の開錠は無理だよ〉
〈わかりました、僕が開けます〉
アール君が檻の鍵を開けに向かった、私にも何かできない……あ、と閃く。
(そうだ、あの炎『アレ』で止められないかな?)
私は肩から下げているマジックバッグを漁り、それを取り出しヌヌの檻の前に立った。
「まだこの付近に、あのような魔物がいるとは恐ろしいですわ」
「「ガハハハハハァ――!! こんな小物、恐るるにたらず!」」
大きな体格、赤い瞳、ヌヌの見た目で生徒が怯えるなか。鍛え上げられた肉体、茶髪の男は鍛えられた腕を鳴らし、檻の中にいるヌヌに向けて真っ赤な拳を構えた。
それを真正面から『グルルル』と唸り、受けて立つ様に見えるヌヌ。
――実際は。
「……ヒィイイィ! 怖いよ~、この人間はおれっちになにするの? 戦うの? それは、ダメだよぉ~。人と戦うと魔王様に怒られちゃう。たくさんの人に追われても、物を投げられても、おれっち怒らなかったよぉ~」
どうにか止めてもらおうと必死に男に話しかけるけど、彼にヌヌの言葉は通じていない。男の闘士に反応し威嚇して、吠えているように見える。
だけど、全くどうじない2人は。
〈うむ、ワタシの言い付けを守るヌヌ、賢いな〉
〈ええ、手が付けられない暴れん坊だったヌヌ、賢くなりましたね〉
(ええ――サタ様、アール君、賢くなったとか、そんな悠長な事を言っていたら、魔犬ヌヌ、やられちゃうよ? あの男が勇者パーティーにいた、剣士の末裔だってサタ様は気付いてる?)
私はハラハラしながら見守っていた。
「「フッ、オオオオオォォ! きさまに一発、おみまいするぅううう――!!」」
拳をまえに繰り出した茶髪の男の炎は、檻の中のヌヌに向けて飛ばされた。
〈……まずい!〉
サタ様は一言はっしてヌヌの前に飛び出し、防御膜を張った。それと同時に吠えたヌヌ、男の炎を止めたのは姿が見えないサタ様ではなく、ヌヌのひと鳴きで消し飛んだかのように辺りには見えた。
男と学生達の緊張と、驚きで『ヒュー』と息を吸う音が聞こえる。そんな事を気付かないヌヌは『ガシャン、ガシャン』と檻を鳴らし。
「「あ、ああー!! ……もしかしてサタナス様? うわぁ、リラックスモードの魔王様だぁ!! おれっち、会いたかった……ヌヌだよ、魔犬のヌヌ、おぼえてる?」」
嬉しそうに檻の中でジャンプしたので、魔犬がご立腹で暴れている様にしか見えない……
「…………クッ、俺の炎の拳が効かないのか」
男の悔し紛れの声と。
ヌヌの嬉し声。
「サタナス様~だぁ! ヒャッホウ!」
「クク、ワタシがヌヌのことを忘れるはずがない。だがヌヌ、興奮すると周りの人間が怯える、少し大人しくしろ」
「「「はーい!」」」
その可愛いヌヌの返事は衝撃波となり、瞬時に防御ができなかった、複数の学生を壁まで吹き飛ばした。
くずれ落ちる闘技場の壁と、闘技場あがる生徒達の悲鳴。
「「きゃぁ――――!」」
「「う、わぁ――――!」」
これは非常にまずいのでは?
あたりは騒然、飛ばされ怪我をした学生、気絶した学生が出てしまった。アマリアは怪我をした生徒を『聖女の力』で治療しはじめふ。
教師達は怪我が軽く動ける学生達を集め、魔法で防御壁を張った。そして、ヌヌの前に立ったのは勇者パーティーの末裔、茶髪と悪役令嬢の2人。黒魔導士と肝心の勇者末裔は、怪我はないものの、こちらに来ようとしない。
「きさまぁ――――!!! 許さんぞぉ――――!!!」
「まったく、冒険者はこんな危険なものを寄越すなんて……」
と、ヌヌに向けて拳と杖を構えた。
ヌヌの可愛い返事で一大事である。
瞬時に防御壁を張り、ヌヌの衝撃波から守ってくれたアール君は、2本の尻尾をユラユラ揺らし。
〈フフ、よかった……ヌヌはあの魔導具の首輪をしているからか、元の力の半分以下に抑えられましたね〉
〈え、あれで半分?〉
〈はい、本来のヌヌでしたら……そうですね、小さな山一つくらいは吹き飛ばします〉
――ヒェ、さすが元四天王魔犬ヌヌだ。
ヌヌを守る、サタ様が私達を呼んだ。
〈エルバ、アール、どちらでも良い檻の鍵をあけてくれ。ワタシ達は戦うわけにはいかない……ヌヌを助け逃げるぞ〉
サタ様は茶髪と悪役令嬢の攻撃を交わし、ヌヌを防御壁で守っている。
〈わ、私に鍵の開錠は無理だよ〉
〈わかりました、僕が開けます〉
アール君が檻の鍵を開けに向かった、私にも何かできない……あ、と閃く。
(そうだ、あの炎『アレ』で止められないかな?)
私は肩から下げているマジックバッグを漁り、それを取り出しヌヌの檻の前に立った。
85
お気に入りに追加
1,107
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。
武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。
人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】
前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。
そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。
そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。
様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。
村を出て冒険者となったその先は…。
※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。
よろしくお願いいたします。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる