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第一章

60話

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 目が覚めるとサタ様、アール君が添い寝していて、二人用のベッドは? と見るとカラス達が陣取って寝ていた。

 ――ふわぁ、さてと。

 気持ちよさそうに眠るみんなを横目に、私は朝食の準備のためにテントの外に出ると。空は茜から雲を含んだ青に移り変わり、日が明けてきていた。

「んん、今日もいい天気」

 早朝の冷たい空気の中、朝食の準備を始める。
 今朝のメニューはブブベリーのパンをスキレットで軽く焼いて、コロ鳥の目玉焼き、レタススとトマトマのサラダ、ホットレンモン。

 マジックバッグからテーブルをだして、そのうえに耐熱シートを弾きポケットストーブを2個置き、パンと目玉焼きを焼くスキレット2つ、お湯を沸かすケトルを準備はしたものの。

(あ、しまった……アール君がいないと火の魔石に火が付けれない。まだ気持ちよさそうに寝ていたから……起こしたくないなぁ)
 
 そんな私の気持ちに気付いたのか、テントの入り口がガサガサ動き。大欠伸と2本のシッポ揺らして、アール君がこちらにやってくる。

「おはよう、アール君」
「ふわぁ、エルバ様……おはようございます」

「フフ、いいところに来た。さっそくで悪いのだけど、火の魔石に火を付けてくれる?」
 
「火の魔石? ……はい、かしこまりました」

 まだ眠そうな目をしながら、テーブルに設置した魔石に火をつけてくれた。一つのスキレットでブブベリーのパンを軽く焼いて、もう一つのスキレットにコロ鳥の卵を落として目玉焼きを焼く。

 スキレットの中で、卵がジュージューいい音を出して焼かれていく。マジックバッグ兼用アイテムボックスに入れておけば、野菜、卵、お肉など傷まないから便利よね。
 
「エルバ様、何か手伝うことはありますか?」
「パンが焼けたから、ここにケトルでお湯を沸かして、ホットレンモンを入れてくれる」

「はい、かしこまりました」

 アール君はケトルを魔法で持ち上げ、空いたポケットストーブでお湯を沸かしはじめた。私はレンモンを輪切りにして、人数分のシエラカップに入れる。
 後は沸いたお湯を入れて、ハチミツを垂らせばホットレモンの完成。

 次にエルバの畑からレタススとトマトマ、レンモンを収穫して魔法水で水洗い。レタススは手でちぎって、トマトマはくし形切り。ホットレモンで残ったレンモンを、新しいシエラカップに果汁だけを絞り塩コショウ、ハチミツを混ぜた簡単ドレッシングをサラダにかけた。

「これで、朝食の完成!」

 昨夜遅く、この原っぱに着いたから遠くの景色はみえなかったけど。立ち上がって周りを見渡せば、アルクス王都は直ぐそこに見えた。
 しばらくして『おはよう』とサタ様、カラス君達がテントから起きてきて、みんなそろっての朝食がはじまる。

「この、サラダの酸っぱいドレッシング、ハチミツがはいっていてうまい」
 
「僕もこのドレッシング好きです。あと、ホットレモンもホッコリします」
 
「うん、また作るね」

 先にカラス君達に魔力を含んだ魔法水をあげて、サタ様の隣に座った。ママが魔女会で作ったパンは、ブブベリーがたっぷり練り込まれていて、焼くと甘味が増して食べ応え十分。サラダはみんなが言う通り、ドレッシングが上手くできた。
 
《疲労回復する、バランスの良い食事です》

 ありがとう、博士。

 お腹も膨れて魔力も十分に回復した。今日中に王都についてヌヌ君を助けれるかもと。簡単にものごとを考えていた私は、ある重要なことを忘れていた。
 


 ❀

 

 使った食器類を洗い物箱にしまい。朝食の後片付けを終え、姿消しのローブを羽織って王都に向かう準備はできた。カラス君達はこの原っぱで、サタ様の連絡がするまで待機してもらい、3人でホウキに乗り王都に向かう。

「サタ様、アール君いい? 行くよっ!」

「いいぞ!」
「行きましょう!」

 2人に補助を受けてホウキで飛び上がった。

 高い位置から見下ろすアルクスの王都。魔法都市と同じ円状に城壁がぐるりと王都を守る様に建つ。王都への入り口は北南西東で南門が大きいみたい。中央にはこの国の象徴する王城が見え、その周りには多くの赤い屋根の邸宅が見えた。

(これがアルクスの王都かぁ。高い城壁、お城、レンガ作りの赤い屋根の家々だ。カラフルな屋根と一階建が多い魔法都市とは違うファンタジーの王都)

 その王城の近くに、二階建てのコの字の学園ぽい建物を見つけた。

「王都の学園って、あの大きな建物かな?」

「うむ。行ってみないとわからないが、そうかもしれないな」

「かなり、大きな建物ですね」


 近くの茂みに降りて、サタ様アール君と1番大きな南門から入ろうとしたが……門の垂れ幕に【入都料・アーク銀貨10枚かアーク金貨1枚】の文字がみえた。

(え、王都に入るのに入都料がいるの? 簡単な審査も? …………し、しまった魔法都市だと物々交換だったから、お金の存在をすっかり忘れていたよ)

「サタ様、アール君、アーク硬貨……もっていない?」

「アーク硬貨? ロマネクス硬貨ではないのか?」

 ――ロマネクス硬貨?
 
「僕もロマネクス硬貨なら少々持っています。……この城壁、魔物が入らないよう退魔の魔法が、かかっていますね。しかし、それほど強い魔法ではないので、サタ様なら無理矢理こじ開けて王都に入ることはできますが、どうしますか?」

「たやすく壊せるがどうする?」

「どうするって……そんな事をしたらバレちゃうよ。怖い人、騎士だっけ? 追っかけられない?」

「ええ、追われますね」
「追われるな」

 と2人は頷く。

 あちゃー、1番忘れちゃいけないものを忘れてた……前世、どこに行ってもお金は必要だったのに。
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